1. 不動産情報サイト RENOSY
  2. RENOSY マガジン
  3. お金と制度
  4. 相続放棄申述書を提出すると取り消せない? 注意点と記入のポイント
お金と制度
2022.07.19

相続放棄申述書を提出すると取り消せない? 注意点と記入のポイント

相続放棄申述書を提出すると取り消せない? 注意点と記入のポイント

家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出して受理された場合、財産の相続が放棄できます。受理後は原則的に取り消しができないため、相続放棄をするかどうかは、慎重に検討する必要があるでしょう。相続放棄申述書作成の注意点と書き方を解説します。

相続放棄申述書とは

相続放棄申述書とは

相続を放棄する際は、裁判所に対して「相続放棄申述書」を提出します。申述には期限があり、期限内に提出できなかった場合は、被相続人の財産を無条件に引き継ぐ「単純承認」を受け入れたものとみなされます。

相続放棄にあたり家庭裁判所に提出する書類

相続放棄申述書とは、相続を放棄する旨を家庭裁判所に申述する書類です。

相続人になると、被相続人のプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継がなければなりません。そのため、相続人には「単純承認」「限定承認」「相続放棄」のいずれかを選択する権利が与えられます

  • 単純承認:すべての財産を無条件に引き継ぐ
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を清算し、余ったプラスの財産があれば引き継ぐ
  • 相続放棄:すべての財産を放棄する

相続放棄を選択した際は、家庭裁判所に対して相続放棄申述書と必要書類を提出します。

申述の期限

相続放棄の申述ができるのは、「自分への相続の開始があったことを知った時点から3カ月以内」です。被相続人が死亡した日ではなく、自分が相続人になったことを知った日が起点となる点に注意しましょう。

近親者であれば、被相続人の死亡から一両日中に相続についても把握できるかもしれませんが、長年離れて暮らしている人や離婚後に音信不通になったといったケースでは、死亡から数カ月以上経って初めて相続の事実を知るケースもあります。

3カ月間は「熟慮期間」とよばれ、相続放棄または限定承認の選択が可能です。期限を過ぎても申述書が提出されない場合には、単純承認をしたものとみなされます。

提出方法

相続放棄申述書は家庭裁判所の窓口で入手するか、裁判所のウェブサイトからダウンロードします。必要書類をそろえたあと、申述期限内に「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」へ提出しましょう。

提出方法は、「窓口に持参する」「郵送で提出する」の2パターンがあります。郵送で提出する際は、期限内に確実に届くことが前提です。書留やレターパックプラスなど、郵便物の配達状況が追跡できる方法を選ぶのが賢明といえます。

提出して約1~2週間後に、家庭裁判所から「相続放棄の照会書(回答書)」が届くため、回答を記入して返送しましょう(届かないケースもあり)。申述書が受理されると「相続放棄申述受理通知書」が届き、相続放棄が成立するという流れです。

相続放棄申述書作成のポイント

相続放棄申述書作成のポイント

相続放棄申述書には決められた書式があり、記入ミスや不備があると裁判所から訂正を求められる場合があります。相続放棄申述書のポイントを見ていきましょう。

押印は認印でも可

相続放棄申述書には、申述人の記名・押印の欄があります。

印鑑には、実印・認印・ゴム印の3種類がありますが、相続放棄申述書で使えるのは、実印と認印のみです。インクが本体に内蔵されたタイプのゴム印は使えません。

相続放棄の一連の手続きでは、すべて同じ印鑑を使うため、どの印鑑を使ったのか、きちんと覚えておきましょう。

パソコン入力や代筆はできる?

相続放棄申述書は、パソコン入力や代筆が可能です。

記入欄は、黒い太枠の箇所のみなので、手書きでも時間はかからないでしょう。鉛筆やシャープペンシルは使用せず、ボールペンや万年筆を使用します。訂正時は誤字に二重線を引いてその上に訂正印を押し、その脇に書き直すのがルールです。

なお、相続放棄の回答書は原則、本人が記入・押印します。やむを得ない場合は代筆が可能ですが、「被相続人の財産を相続する人」と「その配偶者」を除いた人に依頼しなければなりません。回答書の所定の欄には、以下を記入しましょう。

  • 代筆の理由
  • 代筆者との関係
  • 代筆者の住所
  • 代筆者の署名・押印

相続放棄申述書の書き方

相続放棄申述書の書き方

相続放棄申述書には、「提出先の家庭裁判所」「申述人」「被相続人」に関する情報を記入します。特に申述人と被相続人に関しては、戸籍謄本や住民票の除票と照らし合わせながら、正しい情報を記入しましょう。

提出先の家庭裁判所名と記名・押印

相続放棄申述書の最初の方には、提出先の家庭裁判所名を記入する欄があります。相続人の居住エリアにある家庭裁判所ではなく、「被相続人が最後に住んでいた住所を管轄する家庭裁判所名」を記入しましょう。裁判所のウェブサイトの「裁判所の管轄区域」で検索できます。

被相続人の最後の住所地がわからない場合は、役所の窓口で「被相続人の住民票の除票」を取得したうえで確認します。「住民票の除票」とは、転出や死亡により住民登録が消除された住民票のことです。

被相続人の住民票の除票は、相続放棄手続きの必要書類でもあるため、早めに取得しておくとよいでしょう。

「申述人の記名・押印の欄」には、申述人が記名(署名)して押印します。日付の欄には、家庭裁判所に提出する年月日を記入しましょう。

申述人

「申述人」の欄には、「相続放棄をする人(自分自身)」に関する情報を記入します。

  • 本籍(国籍)
  • 住所・電話
  • 氏名
  • 生年月日
  • 職業
  • 被相続人との関係(子・孫・配偶者・直系尊属・兄弟姉妹・おいめい・その他)

「申述人の氏名」は、戸籍謄本と同じ表記で記入します。斎藤や渡邊など、漢字表記が複数あるものは、記入ミスに注意が必要です。「職業」の項目には、「会社員」「自営業」「公務員」「パート」「学生」などと記すだけで構いません。

「被相続人との関係」とは、被相続人から見た関係のことです。当てはまる関係を選択しましょう。

被相続人

「被相続人」の欄には、「財産を残して亡くなった人」の情報を記入します。被相続人の戸籍謄本や住民票の除票を見ながら、一つずつ正確に記入しましょう。

  • 本籍(国籍)
  • 最後の住所
  • 死亡当時の職業
  • 氏名
  • 死亡年月日

「最後の住所」とは、被相続人が亡くなったときに住民登録していた住所で、住民票の除票に記載があります。死亡当時に仕事をしていなかった場合は「無職」と記入して構いません。

「申述の理由」欄を記入する

「申述の理由」欄を記入する

「申述の理由」の欄には「相続の開始を知った日」「相続放棄をする理由」「相続財産の概略」の3つを記入します。記入時のポイントと注意点を確認しましょう。

相続の開始を知った日

「相続の開始を知った日」は、自分が相続人になったことを知った日付を記入します。相続放棄の期限はこの日から3カ月間が原則なので、相続人がいつ事実を知ったのかは非常に重要です。

被相続人と同居している人であれば、「被相続人の死亡日=相続の開始を知った日」になるケースがほとんどですが、被相続人と疎遠である場合は、「連絡を受けた日」が相続の開始を知った日になるでしょう。

また「先順位者の相続放棄」によって、自分が相続人になった事実を知る人も少なくありません。この項目は選択式となっており、以下の4つから当てはまるものを選びます。

  • 被相続人死亡の当日
  • 死亡の通知を受けた日
  • 先順位者の相続放棄を知った日
  • その他

放棄の理由

「放棄の理由」は選択式ですが、「その他」を選択して具体的な理由を記述することも可能です。

  • 相続人から生前に贈与を受けている
  • 生活が安定している
  • 遺産が少ない
  • 遺産を分散させたくない
  • 債務超過のため
  • その他

相続に関わりたくない、親戚ともめたくないという場合は、「その他」の欄に素直な理由を記載して構いません。

放棄の理由で重要なのは、自分の意思で相続放棄を選択しているかどうかという点です。相続放棄するかどうかは本人の自由なので、「関わりたくない」と書いたからといって、却下されることはありません。

逆に、誰かからの強迫によって相続放棄をする場合は、申述が認められない可能性が高いでしょう。

相続財産の概略

「相続財産の概略」の欄には、自分が引き継ぐ分だけでなく、被相続人が残した以下のようなすべての財産を記入します。プラスの財産はもちろん、借金などのマイナスの財産も含めましょう。

  • 農地
  • 山林
  • 宅地
  • 建物
  • 現金・預貯金
  • 有価証券
  • 負債

あくまでも概略なので、正確な数字がわからなくても問題はありません。どんな財産がいくらあるのかまったくわからない場合は不明と記載するか、空欄で提出しましょう。

相続放棄申述書を提出前に確認しよう

提出前に確認しよう

相続放棄申述書を提出する前に「選択に後悔はないか」「手続きに必要な書類の不備はないか」を確認しましょう。

書類の不備や誤りがあると、家庭裁判所から追加提出や訂正の連絡が入る場合があります。期限内に滞りなく手続きを完了させるためにも、最終チェックは念入りに行いましょう。

本当に相続放棄の選択でよいか

相続放棄申述書が受理されると、最初から相続人ではなかったことになります撤回はできず、「詐欺や脅迫により相続を放棄した」などの特別な理由がない限り、取り消しもできません

負の財産を引き継ぎたくないという理由から相続放棄を選択する人が多いようですが、相続放棄をすべきかどうか迷っているのであれば、弁護士や司法書士への相談を検討しましょう。

相続財産の調査に着手できておらず、財産がどれだけあるかわからないケースでは、「相続放棄の期間の延長」が認められる場合があります。

「借金もあるが、それ以上にプラスの財産が多かった」という事例もあるため、調査をしっかり行ってから判断するのが望ましいでしょう。

添付書類、郵便切手はそろっているか

相続放棄の手続きでは、さまざまな書類を提出しなければなりません。添付書類は、被相続人との関係性によって異なります。例えば、被相続人の子にあたる人は、以下のような書類が必要です。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

提出時は、家庭裁判所との連絡用として使う「予納郵券(郵便切手)」を同封します。必要な金額・枚数は各家庭裁判所に確認しましょう。

収入印紙は貼られているか

相続放棄申述書を全て記入し、誤りや記入漏れがないか確認したら、最後に800円分の収入印紙を「収入印紙の貼付欄」に貼り付けましょう。

収入印紙とは、政府が各種手数料や税金を国民から徴収するために発行している証票です。切手のような形状で、表面には額面が印刷されています。

コンビニ・郵便局・法務局などで購入できますが、ほとんどのコンビニでは200円の印紙のみの取り扱いになるようです。200円の印紙を4枚購入しましょう。

郵便局では取り扱いのあるすべての額面が購入できます。ただし、800円の額面は存在しないため、400円の印紙を2枚購入します。

相続放棄申述書が受理されない可能性はある?

受理されない可能性はある?

ごくまれではあるものの、相続放棄申述書が受理されないケースもあります。申述期間に提出が間に合わないのはもちろん、先に形見分けで財産に手を付けてしまったり、一部を処分してしまったりすると、単純承認が成立してしまう点に注意しましょう。

却下されるケースとは

最高裁判所が公表する統計によると、2020年における相続放棄の却下率は以下のようにわずか0.18%という結果でした。

  • 既済事件の総数:23万3,325件
  • 却下件数:426件

ほとんどのケースで問題なく受理されますが、却下の可能性があるのは以下のようなケースです。

  • 相続放棄の申述が期限内に行われていない場合
  • 単純承認とみなされる行為に該当する場合
  • 相続人の意思で申述をしていない場合

「単純承認とみなされる行為」とは、相続財産の隠蔽や処分、大きな金額の形見分けなどが挙げられます。一度却下されると再申請はできないため、手続き上で不安な点があれば、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

参照:家事令和2年度 3 家事審判事件の受理・既済・未済手続別事件別件数 全家庭裁判所(PDF)|裁判所 – Courts in Japan

書類に不備があった場合

申述書や添付書類に不備や誤りがあった場合、家庭裁判所から申述人に連絡が入ります。追加提出や内容の訂正を求められる可能性があるため、速やかに対処しましょう。

家庭裁判所の開庁は平日の日中のみなので、会社勤めをしている人は時間の都合がつきにくいかもしれません。訂正で何度も足を運ばなくても済むように、提出前に念入りなチェックを心掛けましょう。

「忙しくて手続きに割ける時間がない」という人は、相続放棄の申述を弁護士に委託することも可能です。費用はかかりますが、申述期間内に確実に手続きを完了できるため、安心感があるでしょう。

相続放棄申述書は提出前に慎重に検討を

相続放棄申述書は提出前に慎重に検討を

相続放棄申述書が家庭裁判所に受理されると、被相続人の一切の財産の相続を放棄できます。

マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合や、相続争いに巻き込まれたくない場合には有効ですが、「相続放棄をしなければよかった」とあとに悔やむ人も珍しくないようです。

原則的に、相続放棄の撤回はできません。申述期限内に家庭裁判所に申し立てをすれば、期限の延長も可能なので、相続放棄をするか否かは慎重に検討した方がよいでしょう。

「どうすればよいか迷っている」「相続放棄に不安な点がある」「手続きがスムーズにできるかわからない」という人は、できるだけ早い段階で専門家に相談するのが望ましいといえます。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

Facebook Twitter Instagram LINE