住民税は年収の影響を受ける? 住民税の負担を軽減するコツも紹介
源泉徴収で納めている住民税について調べると、前年より納税額が増えている場合があります。そのため、年収の変化が住民税に及ぼす影響について気になっている人もいるでしょう。住民税の基礎知識とともに、年収別の税額についても解説します。
住民税の基礎知識
給与所得を得るようになってから、所得税や住民税が源泉徴収されるようになったものの、それらがどのような税金なのか詳しく知らないという人も多いと思います。まずは住民税の概要と役割、所得税との違いについて、詳しく見ていきましょう。
住民税とは
住民税とは教育や福祉、救急などの身近な行政サービスをまかなうため、その地域に住む人が負担する税金です。
住民税には「法人住民税」と「個人住民税」があります。法人住民税とは法人に対して課される住民税を指します。個人住民税とは市区町村に住所がある個人が負担する住民税であり、この記事では主に個人住民税について解説します。
所得税との違い
所得税とは、国の行政サービスを充実させる目的で徴収され、所得に応じて課される額が変わる税金です。一方、住民税は、都道府県や市区町村による行政サービスを充実させる目的で徴収されている税金です。
この2つの大きな違いは、所得税は国税で、住民税は地方税という点にあります。国税は、国に納める税金であり、税務署が管轄しています。所得税のほかに法人税や相続税、消費税が該当します。
地方税は住民税以外に事業税や地方消費税などがあり、都道府県が課している道府県税と市町村が課している市町村税があります。
住民税の2種類の課税方法
住民税には「均等割」と「所得割」という2種類の課税方法があり、合算して納税します。住民税の種類についてそれぞれ確認しましょう。
均等割
均等割とは、一定以上の所得があれば、すべての人に定額で均等に課される住民税です。基本的に、道府県民税1,500円と市町村民税3,500円を合算した5,000円の全国一律です(東京都の場合は都民税と特別区民税となります)。
ただし、東日本大震災を踏まえて2014年から2023年までの10年間は、市町村民税・道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています。
所得割
所得割とは、前年の所得に基づいて算出される住民税です。課税標準額は「前年の所得金額-所得控除金額」であり、控除の種類についても所得税と同様となっています。
基本的に、道府県民税4%(都民税)と市町村民税(特別区民税)6%を合算した10%という、全国一律の税率が設定されています。
住民税は所得割と均等割の合計
住民税は均等割と所得割の合計金額となります。
ただし、住民税に関しては地方自治体が条例で税率を変えることができるため、住んでいる都道府県によって金額が変わるケースもあります。
例えば、神奈川県では平成19年度から個人県民税に対する超過課税「水源環境保全税」を実施しており、従来の所得割に加えて0.025%、均等割にプラス300円が上乗せされています。
住民税の計算方法
具体的に自分の年収に対して、どのくらいの住民税が課されるのか知りたいという人も多いでしょう。住民税は主に所得割によって金額が変わるため、年収が大きく影響します。
年収からの住民税の計算方法について解説します。
課税所得を計算する
まずは所得を計算します。所得は年収から必要経費を引いた金額です。
次に、計算した所得から所得控除を明らかにします。所得税の控除とは違い、住民税の場合は雑損控除や医療費控除などの項目があります。所得控除が算出できたら、所得から所得控除を引いて「課税所得」を求めます。
所得割を算出する
課税所得を算出したら、住民税の税率を掛けて所得割を算出します。
上述した通り、市町村民税は6%、道府県税は4%の税率を掛けて計算します。ただし地方自治体によって金額が一律ではないことがあるので、自分の住所の所得割を確認しましょう。
税額控除後の所得割額を計算する
所得割から税額控除額をマイナスします。
税額控除の項目には、配当控除や外国税額控除、調整控除などがあります。調整控除は、課税所得金額が200万円以上と以下で計算方法が異なる点に注意しましょう。
均等割を足す
最後に均等割をプラスして完了です。均等割についても、自治体によって金額が異なる場合があるので注意しましょう。
同じ年収でも住民税が異なる要因
年収が同額であっても住民税が異なるケースもあります。その理由について、代表的なものを紹介します。
家族構成が異なる
独身の場合と、夫婦やお子さんがいる場合とでは、同じ年収であっても住民税額が異なります。それは、家族がいる場合には扶養控除が引かれるためです。
配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除などがあり、配偶者の収入や扶養家族の年齢、一人親かどうかなどで金額が異なります。
そのため、住民税を安くするには家族の年収を調整するという方法もあります。
支払っている保険料に差がある
保険料にも控除があり、主に生命保険控除と地震保険控除があります。生命保険控除の場合、最大28,000円、地震保険控除は最大25,000円が控除されます。
生命保険について対象となる控除は以下の通りです。
- 一般生命保険料控除
- 個人年金保険料控除
- 介護医療保険料控除
控除額については、平成23(2011)年12月31日以前と以後とで金額が異なるため、いつ保険契約を締結したのかにも注意が必要です。
節税対策を行っている
節税対策を行っている場合でも税額に差が出ます。主な節税対策としては控除の活用以外にふるさと納税による地方自治体への寄付や、確定拠出年金制度への加入が挙げられます。
ふるさと納税の場合、住民税を前払いしていることになるため金額面でお得になるわけではありませんが、寄付金額に応じて地方自治体から名産品などをもらえるので、おトクです。
確定拠出年金は老後の資産形成のための制度で、個人型のiDeCoと企業型のDCがあります。
住民税の負担が大きく感じる理由
年収が増えたわけではないにもかかわらず、住民税の負担が大きく感じる理由として、「転職や退職による所得減少」「受けられる控除の減少」「引っ越した先が独自の税率を制定している」という3点が挙げられます。それぞれ見ていきましょう。
転職や退職による所得減少
住民税は前年の所得に基づいて決定されます。そのため、転職や退職により前年より当年の所得が少ないケースでは、住民税の負担が大きく感じられる可能性があります。
前年の所得が増えた場合だけではない点を理解しておきましょう。
受けられる控除の減少
住民税を算出する際には、所得金額から所得控除を引いて課税標準額を算出します。所得控除として、配偶者控除や扶養控除、地震保険料控除などが挙げられます。
自分を取り巻く状況が変わり、これらの控除の適用を受けられなくなった場合、住民税の負担が大きく感じられる可能性があるでしょう。
引っ越し先が独自の税率を制定している
転職などで引っ越した場合、引っ越した先の自治体によっては、条例で独自の税率を設定している可能性があります。
独自の税率を設定していても、標準税率との乖離はそこまで大きくありませんが、税額を細かくチェックしている人は税額の変化に気付くでしょう。
住民税の負担を軽減するコツ
住民税の負担が大きいと感じていて、負担を軽減するコツを知りたいという人もいるでしょう。続いて住民税の負担を軽減するポイントを説明します。
ふるさと納税
ふるさと納税を利用した場合は、自己負担額2,000円を引いた全額が翌年の住民税から控除されます。そのため、住民税の負担を軽減できます。
あくまでも税額が控除されるだけで、現金が還付されるわけではありません。しかし、2,000円の負担だけで、それを上回る価値のある返礼品を受け取れるという理由からも注目されています。
受けられる控除を確認する
各種控除を受けることで住民税の負担を軽減することが可能ですが、これらの控除は自動的に適用されるわけではありません。
控除を受けるには申告が必要です。少しでも住民税の負担を軽減したいのであれば、生命保険料控除、地震保険料控除、医療費控除といった、受けられる控除がないか確認して申請しましょう。
個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用する
個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用した場合、掛金が全額所得控除の対象なので、所得税と住民税の負担を軽減できます。
また、利息・配当・売却益などの運用益も全額非課税です。年金や一時金として受け取る際にも、各種控除を適用できます。
原則として60歳まで引き出すことはできないことに注意が必要ですが、老後に備えて資産形成をしたい人や住民税の負担を軽減したい人におすすめです。
住民税の滞納に注意!
会社勤めの場合、住民税は給与からの天引き(源泉徴収)なので、滞納する可能性は基本的にありません。しかし、フリーランスや個人事業主の場合は、自分で住民税を納めなくてはならないので注意が必要です。
住民税を滞納した場合のペナルティーについて解説します。
延滞税が課される
住民税を納期限までに支払わなかった場合、延滞税というペナルティーが課されます。延滞税は、滞納した住民税の一部を納付しただけでは解除されません。
納期限の翌日から滞納した全額を完納するまで延滞金利が上乗せされるので、注意が必要です。滞納期間が長いほど延滞金利の影響が大きくなるため、住民税の納付を忘れていた場合は早めに納付しましょう。
住民税と年収の関係を理解しよう
住民税は均等割と所得割の2つに分かれます。所得割は前年の所得に基づいて算出されるので、前年の所得が多いほど税負担が大きくなる仕組みです。
また、前年の所得が多くない場合でも、翌年の所得が減少したり、控除が利用できなくなったりすることで負担が大きく感じられる可能性もあります。
住民税の負担が大きいと感じる人は、ふるさと納税を利用する、利用可能な控除を確認するなど、うまく工夫して住民税の負担を軽減しましょう。
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