復興特別所得税とは? 税率、計算方法などをわかりやすく解説
給与明細書などを見ると、所得税や住民税とは別に「復興特別所得税」という税金が課されているものの、どんな税金なのかわからない人も多いのではないでしょうか。復興特別所得税とは何かに加え、税率や計算方法などをわかりやすく解説します。
復興特別所得税とは
会社から支払われる給与からは所得税や住民税などが源泉徴収されますが、ほかに復興特別所得税も徴収されています。復興特別所得税の徴収目的と源泉徴収義務者が誰なのかを説明します。
復興特別所得税の目的
復興特別所得税は、2011年12月2日公布の「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」に基づく税金です。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の復興に必要な財源を作るために、復興特別所得税と復興特別法人税の2種類が創設されました。復興特別所得税は2013年1月1日に導入され、2037年12月31日まで課税される予定です。復興特別法人税は2012年4月1日~2014年3月31日の間、課税されました。
復興特別所得税と復興特別法人税
復興特別所得税は、所得税の源泉徴収義務者に対し一律に課税される税金です。一方、復興特別法人税は基本的にすべての法人の所得に対し課税されました。
所得税額が0円の個人は源泉徴収額が存在しないため、復興特別所得税は課税されません。
復興特別法人税は廃止
復興には多額の費用を要します。そのため、復興特別法人税は基本的にすべての法人の所得に対して課されることから、多くの財源確保が期待されました。
しかし、当初は2012年からの3年間を予定した課税期間は2年間に短縮され、2014年度に復興特別法人税は廃止となりました。財源確保のめどが立ったこと、消費増税による消費減退への懸念があったことが廃止理由として挙げられます。
復興特別所得税の源泉徴収義務者
復興特別所得税を納める必要があるのは、所得税を納める義務のある人です。つまり、所得税の源泉徴収義務者が復興特別所得税の源泉徴収義務者となります。
復興特別所得税の課税対象は、2013年~2037年の各年分の基準所得税額です。給与所得者は、2013年1月1日以降に支払いを受ける給与などから源泉徴収されます。
復興特別所得税はどんな所得に適用?
復興特別所得税が課されるのは給与所得だけではありません。ほかにも復興特別所得税の課税対象となる所得があるので、どのような所得が課税対象なのか把握することが大切です。復興特別所得税の課税対象となる所得を詳しく解説します。
復興特別所得税の課税対象となる所得
復興特別所得税の課税対象は、所得税法や租税特別措置法で所得税を源泉徴収することとされている所得です。
例えば、銀行預金や株式投資、投資信託などの運用によって得られた利子所得や配当所得、給与所得、公的年金などは復興特別所得税の課税対象です。
課税対象となるそのほかの所得について、詳しくは以下の国税庁のサイトを確認しましょう。
国税庁:No.2507 復興特別所得税の源泉徴収|国税庁
国税庁:復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A(Q3)(PDF)|国税庁
復興特別所得税の計算
復興特別所得税がどのくらいの税率で、どうやって計算するのかわからないという人も多いと思います。ここでは復興特別所得税の計算方法と計算例を詳しく見ていきましょう。
復興特別所得税の計算方法
復興特別所得税は、以下の計算式により算出します。
基準所得税額は、所得税額から所得税額から差し引かれる金額を差し引いたあとの金額です。「基準所得税額=所得税額-税額控除」という計算式で求めることができます。
税額控除には以下のようなものが該当します。
- 配当控除
- 外国税額控除
- 住宅特定改修特別税額控除
- 住宅借入金等特別控除
この基準所得税額を求める計算について、国税庁では以下の早見表を使った計算を推奨しています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,0000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、年収600万円の場合は、基準所得税額は
=772,500円(基準所得税額)
となります。この値に2.1%を掛けた16,222円が復興特別所得税です。
復興特別所得税は確定申告が必要?
復興特別所得税を納めるにあたり、確定申告が必要か気になる人も多いと思います。最後に復興特別所得税は確定申告が必要なのか確認しましょう。
確定申告が必要ない人
以下のいずれかに該当する場合、基本的に確定申告は不要です。
- 会社から年末調整を受けている給与所得者
- 副業の収入が20万円以下の給与所得者
- 公的年金等の収入金額の合計額が年間で400万円以下の年金受給者
- 合計所得金額が48万円以下
ただし、給与所得者であっても年収が2,000万円を超える場合や、公的年金が主な収入源であっても副収入が20万円を超える場合は、確定申告が必要になります。
確定申告が必要な人
以下のいずれかに該当する場合、基本的に確定申告が必要です。
- 副業の収入が20万円を超えるまたは年収が2,000万円を超える給与所得者
- 源泉徴収されていない給与所得者
- 公的年金等の収入金額の合計額が年間で400万円を超える年金受給者
- 年間の合計所得が48万円を超える個人事業主やフリーランス
なお確定申告が必須ではありませんが、事業で赤字を出している事業者や副業で源泉徴収をされている場合、ふるさと納税をした場合などは、還付金を受け取れる可能性がありますので、確定申告を行った方がよいとされています。
納付期限は通常の所得税と同様
会社員は、源泉徴収した所得税と復興特別所得税を原則翌月10日までに、個人事業主は原則確定申告の期限である3月15日までに国に納めます。
納付期限は通常の所得税と同様であると覚えておきましょう。
復興特別所得税は確定申告時に注意しよう
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興に必要な財源を確保する目的で作られた税金です。2013年1月1日以降、課税対象となる所得に、通常の所得税に付加する形で課されています。
主な所得が会社から受け取る給与所得のみの場合には、特に復興特別所得税を意識しなくても問題ありません。
しかし副業による所得がある人や個人事業主の場合、確定申告の際に所得税だけでなく復興特別所得税についても意識しなくてはならないので注意しましょう。
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