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お金と制度
2022.05.19

遺言書の書き方を確認しよう。不備があると無効になるので注意

監修:
鈴木修平 (弁護士/CFE)
遺言書の書き方を確認しよう。不備があると無効になるので注意

万が一に備えて、遺言書を作成しておきたいと考えている人も多いかもしれません。遺言書はきちんとルールに基づいて作成しなければ、無効になる可能性もあるので注意が必要です。遺言書の種類や書き方などをわかりやすく解説します。

遺言書とは

遺言書を作成する際は、まず遺言書がどのような書類なのか把握しておくことが大切です。遺言書の概要について見ていきましょう。

遺産の分け方を示した書類

遺言書とは、被相続人(死去した人)が亡くなったあとに財産(遺産)をどのように分けるのかという、遺産の分け方を示した書類です。

相続が発生した場合、被相続人の財産を相続人が相続します。相続は民法で定められている通り、法定相続人(法律で定められている相続人)が法定相続分(法律で定められている取得割合)に基づいて遺産を取得しますが、具体的に誰がどの財産を取得するかは遺産分割協議により決めることとなります。

一方で、遺言書を作成して遺産の分け方を決めれば、特定の財産を法定相続人以外の特定の人物に渡すことや、特定の法定相続人に遺産を多めに相続させることが可能です。

遺言書を作成するメリット

遺言書を作成するメリット

遺言書を作成すべきか悩んでいるならば、作成しておくことをおすすめします。その理由は、遺言書を作成しておくことによるメリットが多いからです。遺言書を作成することによるメリットについて確認しましょう。

法定相続人以外にも財産を相続させることができる

相続が発生した場合、遺産分割協議に参加することができるのは原則として法定相続人だけです。

したがって、例えば、被相続人に配偶者と子どもがいる場合、孫は法定相続人として扱われません。そのため、どれだけ被相続人が生前に孫に財産を相続させたいと思っていても、孫は遺産分割協議には参加できないことから、従来の相続では目的を達成することはできないのです。

しかし、被相続人が、生前に、孫に対して特定の財産を相続させるという内容の遺言書を作成することにより、孫も遺産を相続することができます。

また、一般的に法定相続分に基づいて遺産分割協議を進められますが、遺言書により法定相続分の取得割合を変更することも可能です(ただし、後述する遺留分には注意が必要です)。

相続争いを避けることができる

被相続人が遺言書を作成していない場合、相続人は原則として法定相続分に基づいて相続しますが、具体的にどの財産を誰が取得するかは、相続人全員で遺産分割協議において話し合われます。

しかし遺産分割はお金が絡むことから、相続人全員が遺産分割について話し合うと、意見が対立し話し合いがまとまらず、遺産分割協議書が作成できないケースが多いものです(最終的には、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるしかありません)。

これに対して、遺言書が作成されていれば、遺言書の内容に従って相続手続きが進められることになりますので、無用な相続争いを避けられるでしょう。

相続手続きを速やかに進めやすい

仮に、被相続人が負債(借金や支払債務等)を負ったまま相続が発生すると、相続人は当該負債についても相続することとなります。

これに対して、「相続放棄」や「限定承認」という手続きを選択する方法がありますが、原則として、被相続人の死去を知った時から3カ月以内に家庭裁判所に申述を行わなければ、それらの恩恵を受けることはできません。

また、相続が発生すると、準確定申告(被相続人の生前の所得税についての確定申告)は相続が発生してから4カ月以内、相続人の相続税の申告・納付は10カ月以内といったように、期限が決められています。

上記の各手続きを進めるためには、まずは被相続人の遺産と負債を調査・特定する必要がありますが、これらの特定には時間と手間がかかります。

また、遺産分割協議書を作成した場合であっても、仮に遺産の漏れがあった場合の対応も決めておかないと、あとから発見された遺産について法定相続人全員による遺産分割協議が再度必要になるほか、相続税の計算にも支障が生じるので注意が必要です。

一方で、遺言書を作成して、どのような財産があるのかを遺言書に明記していれば、遺産の特定が速やかに進むことから、相続人が遺産を調査する手間を省くことができるでしょう。

遺言書の種類

遺言書の種類

通常作成される遺言書には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。遺言書の種類によって作成方法やメリット・デメリットが異なるため、各遺言書の違いを正確に把握しておくことが大切です。各遺言書の特徴を詳しく解説します。

自筆証書遺言

「自筆証書遺言」は、遺言書の全文を「手書き」で作成する遺言書です。紙とペンがあればいつでも遺言書を作成でき、ほかの遺言書と異なり公証役場に行かずに済むことから、手間と費用をかけずに速やかに遺言書を作成できるというメリットが挙げられます。

一方、自筆証書遺言書を作成する際には、法律に規定されている一定要件を守らなければ、遺言書が無効になるリスクを伴います。

また、作成した自筆証書遺言を自宅で保管する場合は、紛失や盗難、偽造のリスクを伴う点もデメリットです。このほか、家庭裁判所に遺言の検認を申し立てる必要もあり手間がかかります。

なお、2020年に創設された法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用した場合には、偽造や盗難のリスクを抑えられるほか、遺言の検認手続きも不要となります。ただし保管には1通につき3,900円の手数料がかかるので注意しましょう。

公正証書遺言

「公正証書遺言」とは、公正証書の形式で作成する遺言書です。証人2人が立ち会い、公証人が、遺言の作成を希望する人(遺言者)から遺言の内容を聞き取り、公正証書の形式で遺言書を作成します。

公証人が遺言書を作成するため、形式の不備により無効とされる可能性を防ぐことができます。また遺言書の原本が公証役場に保管されるので、偽造や紛失の心配がない点も大きなメリットです。

このほか、遺言検索システムを使えば、1989年以降に作成された公正証書遺言であれば作成の有無を調べることも可能です。

一方、遺言書を作成するにあたっては、公証人との打ち合わせ、公証役場に出向く、財産の金額に応じて作成料が発生するといった費用や手間のほか、一定の時間がかかる点はデメリットといえるでしょう。

秘密証書遺言

「秘密証書遺言」は、内容を秘密にできる遺言書です。遺言者自らが作成した遺言書を公証役場に持参し、公証人が日付を記入し、遺言者と証人2名が署名・押印する等します。

自分で作成することから、自筆証書遺言と同様に遺言書の内容を秘密にできるほか、パソコンや代筆による作成も可能なので手間を省けます。

公証役場に持ち込むことによって第三者が遺言書の存在を把握しているので、存在を忘れ去られるリスクを軽減できる点もメリットです。

公正証書遺言と異なって費用は一定ですが11,000円を要しますし、公証役場に持参することから手間がかかります。また、遺言書の形式の不備により無効とされる可能性や、紛失や盗難のリスクがあるほか、家庭裁判所での遺言の検認手続きが必要となる点等がデメリットといえるでしょう。

通常は、自筆証書遺言か、公正証書遺言が用いられることから、秘密証書遺言が用いられるケースは稀です。

自分で遺言書を書く場合のポイント

自分で遺言書を書く場合のポイント

自筆証書遺言を作成する際、法律の定める形式に従って作成しないと遺言書が無効になる可能性があります。遺言書の書き方のポイントを押さえておくことが大切です。

財産目録を作成する

「財産目録」とは、自分の遺産として何があるのかを明確にした資料です。遺言書に記載されている財産と実際の財産に乖離があった場合には、相続争いに発展する可能性があります。

自分の遺産として何がどれくらいあるのかをまずは正確に把握し、財産の種類と金額を一覧にした財産目録を作成しましょう。

なお、近時の改正により、自筆証書遺言であっても、一体として作成する財産目録に関しては、各ページに書面および押印をすることにより、パソコン等で作成することが可能となりました。

財産目録の相続財産の詳細を記載する

相続財産を遺言書に記載する際は、詳細を記載することが重要です。例えば不動産の場合は所在・地番地目地積等、預金の場合は銀行名・支店名・種類・口座番号等です。

これにより、不動産や銀行口座が複数ある場合のトラブルを回避できるでしょう。

日付・署名・押印を忘れない

遺言書を作成する際に忘れがちなのが、日付・署名・押印の3点です。日付の書き方は特に指定されていませんが、誰が見ても誤解が生じないように、「20〇〇年〇月〇日」や「令和〇〇年〇月〇日」と記載しましょう。

遺言書の押印についても特に指定はありませんが、ゴム印ではなく実印を使用することをおすすめします。

法務省のサイトで作成例を確認しよう

自筆証書遺言を作成する場合、財産目録以外はすべて自書、「◯年✕月吉日」といった記載は不可などのルールを守らなければ、遺言書を作成しても無効になってしまいます。

正しく遺言書を作成するには、作成例を確認しておくと役立つでしょう。法務省のサイトには、遺言書の様式例や自書によらない財産目録の例などが記載されています。作成前に一度目を通すことをおすすめします。

参考:03 遺言書の様式等についての注意事項|自筆証書遺言書保管制度|法務省

遺言書を作成する際の注意点

遺言書を作成する際の注意点

遺言書は好きなように作成すればいいというものではありません。注意点を押さえて作成しないと相続争いに発展する恐れがあるので、注意が必要です。遺言書を作成する際の注意点を見ていきましょう。

遺留分に注意

「遺留分」とは、相続人に対して最低限保障されている遺産取得分です。

作成された遺言書の内容が、当該相続人の遺留分を下回っている場合には、遺留分を侵害された相続人が「遺留分侵害額請求」を行って、相続争いに発展することとなるので注意が必要です。

一方で、遺留分侵害額請求は、相続の開始および遺留分が侵害されている事実を知ってから1年間が経過すると、権利を行使することができなくなります。

したがって、遺留分を考慮した遺言書を作成したりする等して、あらかじめ準備をしておくことが重要です。

内容や段取りにも注意

遺留分を侵害していなくても、特定の人物に多くの財産を譲り渡すような内容だった場合には、ほかの相続人が不満を抱き、何らかのトラブルに発展する可能性は否定できません。

そのため、事前に相続人との間で相続内容を話し合っておくことに加え、紛失を防ぐために遺言書をどこに保管しているのか等を伝えておくことはあるでしょう。

一方で、遺言書の存在を相続人予定者全員に明らかにしたことにより、相続人予定者の間で遺言者の生前から紛争となることもあることから、上記3種類のうちどの遺言書を用いるか、誰に遺言書の存在を伝えるかについては慎重に検討するべきでしょう。

遺言書は書き方を理解してから作成しよう

遺言書は書き方を理解してから作成しよう

万が一に備えて遺言書を作成しておけば、相続争いを回避でき、相続手続きをスムーズに進められるので安心です。しかし、せっかく遺言書を作成しても、ルールに従っていない場合には、遺言書が無効になる可能性があります。

遺言書を作成する際は、書き方のルールをきちんと理解してから行いましょう。

なお、今回の記事も上記法務省のサイトもあくまで一般的な紹介にとどまります。遺言書として有効でも、実際にすべての相続が滞りなく最後まで(例えば、不動産であれば登記の完了まで、相続税であれば誰がいくらの税金をどのように支払うのかまで)終わらせることができるか等については、事前に専門家に相談した方がよいでしょう。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

監修:
鈴木修平 (弁護士/CFE)

この記事を書いた人

矢野翔一 宅地建物取引士・2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP)

有限会社アローフィールド代表取締役として不動産投資や株式投資を行う一方で、学習塾の経営も行っています。自身の経験と保有資格を生かしながら、ライターとして活動しています。 【保有資格】宅地建物取引士・管理業務主任者・2級ファイナンシャル・プランニング技能士(AFP) 有限会社アローフィールド

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