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作成日: 2022.04.04

ポイント目的は危険? 資産を別の証券会社に「移管」するメリット・デメリット・注意点

ポイント目的は危険? 資産を別の証券会社に「移管」するメリット・デメリット・注意点

どの証券会社も顧客獲得を目指してサービスを競っています。証券会社の手数料や取扱商品も当然会社ごとに異なります。そのため、資産運用をしているうちに「ほかの証券会社の方が有利なサービスを展開している」「ほかの証券会社の方が自分に合っている」と思うことも出てくるでしょう。そんなとき検討したいのが、別の証券会社に資産を移す「移管」です。

今回は、移管の仕組みはもちろん、メリット・デメリット・注意点を合わせて解説します。

株式・投資信託・国内債券……資産の移動には「移管」手続きが必要

証券会社で購入した国内外の株式・投資信託・国内債券といった資産は、証券保管振替機構(ほふり)による振替制度を利用して、別の証券会社に移して運用を続けることができます。これを「移管」といいます。

銀行口座のお金ならば、自分で引き出してほかの口座に預けることも簡単にできますが、株式や投資信託などの資産の場合はそうはいきません。証券会社に連絡し、移管の手続きをとる必要がある、というわけです。なお、保有している資産を取り出すことを出庫、ほかの証券会社に預けることを入庫といいます。

移管の3つのメリット

移管には、3つのメリットがあります。

移管のメリット1:投資の手数料削減に役立つ

証券会社での取引にかかる手数料の額は、各社まちまちです。例えば株式投資の場合、近年は一定額までの取引であれば手数料を無料にしている証券会社もあります。売買時に手数料がかかる証券会社から手数料無料の証券会社に移管すれば、手数料をなくすことができます。

また投資信託の場合、同じ商品であっても購入時手数料がかかる証券会社・かからない証券会社があります。ただし、現在多くのネット証券が投資信託の販売手数料を無料にしています。2019年12月に松井証券が販売手数料の無料化を開始。これに続く形で、SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券、楽天証券なども販売手数料が無料となっています。

移管のメリット2:複数の口座の商品を1つにまとめられる

ある証券会社では株式、別の証券会社では投資信託という具合に、複数の証券会社で商品を持っていると、入出金や売買の手続きなどを別々に行う必要が出てきます。また、スマホやパソコンなどで見られる各証券会社の資産の状況は、当然各社の口座内にある資産の分しか集計されませんので、今資産がどのくらいあるのか、口座が多いほど運用成果がどうなっているのかをまとめて把握するのが大変になってしまいます。

移管して複数の口座の商品を1つにまとめておけば、入出金も1回で済み、手続きの手間が省けます。そのうえ、運用成果も見えやすくなります。

移管のメリット3:ポイントが受け取れる

証券会社の中には、取引をしたり一定額の資産を保有したりすることでポイントを受け取れるところがあります。これは株式の配当金や投資信託の分配金などとは別の、証券会社が用意しているサービスです。ポイントのない証券会社からポイントのある証券会社に移管することで、ポイント分がお得になるというわけです。

例えば、信託報酬(投資信託の保有中にかかる手数料)が年1%の投資信託を保有することで、残高に応じて年0.2%のポイントが受け取れるとしたら、実質的な信託報酬は年0.8%になるといえます。しかも、長く運用を続けて残高が増えれば増えるほど、受け取れるポイントも増えてお得度が増します。

移管の2つのデメリット

一方で、移管にはデメリットも2つあります。

移管のデメリット1:手数料がかかる

移管の際、出庫には株式の場合1銘柄あたり(1単元あたり)550円〜1,100円程度、投資信託の場合1銘柄3,300円程度(いずれも税込)の手数料がかかる場合があります(無料にしている証券会社もあります)。

入庫は無料にしている証券会社が多いようですが、出庫と入庫はセットですから、いずれにせよ多くの場合手数料がかかるでしょう。1銘柄ならばともかく、10銘柄も20銘柄も移管するとなれば、手数料が高くついてしまう可能性があります。

移管のデメリット2:移管できない商品もある

移管を行うには、移管元の証券会社と移管先の証券会社で同じ商品を扱っている必要があります。例えば米国株式の場合、たとえ両証券会社で米国株式の取引ができたとしても、現在保有している銘柄を移管先の証券会社が扱っていない場合は移管できません。また投資信託も、現在保有している商品を移管先の証券会社が扱っていない場合は移管できません。

移管が向いているのはどんな人?

以上のメリット・デメリットを踏まえたうえで、移管すべき人は

  • 取引にかかる手数料がより抑えられる人
  • 資産の状況をより手軽に把握したい人
  • 移管先の証券会社の方が使い勝手がいい人

です。

株式の銘柄や投資信託の商品などは、どこで購入しても同じものです。ですから、証券会社に支払う株式の売買手数料や投資信託の販売時手数料は、少なければ少ないほどいいことになります。たとえ移管に伴い手数料を支払ったとしても、よりコストのかからない証券会社で長く運用を続ければ、やがてお得になっていきます。

また、さまざまな資産が分散していると、資産の状況を把握するだけでも大変になってしまいます。移管することで、資産の確認や取引がしやすくなれば、資産運用の手間を少なくできます。

一方で、ポイント目的の移管はおすすめできません。

例えば楽天証券では、投資信託の保有額に応じて毎月付与されてきた楽天ポイントが、2022年4月以降は「保有額が一定額に達したときに1度だけ」付与される仕組みに変わりました。さらに2022年9月以降は、投資信託を楽天カード決済で積立購入する際に付与されてきた楽天ポイントの付与率が一部を除き「1%」から「0.2%」に縮小します。こうした変更を受けて、「ほかの証券会社に移管するべきなのか」と話題になりました。

しかし、仮にこれで移管しても、今度は乗り換えた先のポイント制度が変わるかもしれません。現に楽天証券も、各種報道での同社楠雄治社長の発言などによると、ポイント付与が負担だったことから今回の制度変更に至ったとされています。

他社でも同様にポイント付与が厳しくなる可能性がある、というわけです。ポイント制度が変わるたびに移管していては、移管手数料も手間もたくさんかかってしまいます。

したがって、移管をするにあたっては、ポイントだけでなく、前述の通り証券会社の手数料や資産の把握のしやすさ、使い勝手のよさなどもチェックしたうえで決めることをおすすめします。

移管の前にチェックしておきたい4つの注意点

移管の手続きは、どの証券会社でもそれほど大きくは変わりません。あらかじめ移管先の金融機関の口座を開設したうえで、元の金融機関から所定の依頼書を取り寄せます。届いた依頼書に必要事項を記載し、移管元の金融機関に提出すると、2週間程度で移管が完了する、という流れです(詳細はお使いの証券会社にご確認ください)。

しかし、移管には次のような注意点もあります。

移管の注意点1:口座区分が違うと移管できない

証券会社の課税口座には、利益にかかる税金の計算を証券会社が行う「特定口座」と、税金の計算を自分で行う「一般口座」があります。資産を移管できるのは、移管元・移管先ともに特定口座の場合、もしくは一般口座の場合に限られます。「特定口座→一般口座」、「一般口座→特定口座」の移管はできません。

移管の注意点2:一般口座では取得価額が引き継がれない

移管元の一般口座から移管先の一般口座に移管した場合、資産の取得日や取得価額などが引き継がれません(特定口座の移管の場合は引き継がれます)。これらの情報は将来、この資産を売却して納税の手続きを行う際に使うため、自分で管理しておく必要があります。

移管の注意点3:移管中は売買できない

移管の手続きには、2週間程度の時間がかかります。この間は売買ができなくなってしまいます。仮に移管している間に大きな出来事があり、市場が急落(急騰)しても売買することはできません。

移管の注意点4:NISA口座の商品は移管できない

NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)は投資の利益にかかる税金をゼロにできるお得な制度です。しかし、一般NISAやつみたてNISAを活用して購入したNISA口座の商品は、そもそも移管できません。

なお、NISAを利用する証券会社は1年ごとに変更可能。別の証券会社で新たにNISA口座を開設することで、非課税での投資をすることができます。このとき、元の証券会社で保有しているNISA口座の商品は、引き続き期限まで非課税で保有を続けることができます。

自分が使いやすい証券会社を検討してみよう

別の証券会社に資産を移す「移管」を行うことで、資産運用のコストを下げたり、運用の手間を減らしたり、ポイント還元を受けたりすることができるメリットがあります。しかし、同時にデメリットや注意点があることも事実です。安易に「ポイントがもらえるから移管しよう」ではなく、よりコストが安く使いやすい証券会社を検討したうえで、移管をしていただければと思います。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

頼藤太希 マネーコンサルタント

(株)Money&You代表取締役。中央大学客員講師。慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系生保にて資産運用リスク管理業務に従事。2015年に現会社を創業し現職へ。ニュースメディア「Mocha(モカ)」、YouTube「Money&YouTV」、Podcast「マネラジ。」、Voicy「1日5分でお金持ちラジオ」、書籍、講演などを通じて鮮度の高いお金の情報を日々発信している。『マンガと図解 はじめての資産運用 新NISA対応改訂版』(宝島社)、『はじめての新NISA&iDeCo』(成美堂出版)、『定年後ずっと困らないお金の話』(大和書房)など著書累計140万部超。日本証券アナリスト協会検定会員。宅地建物取引士。ファイナンシャルプランナー(AFP)。 Money&You TV

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