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公開日: 2022.03.28

贈与税の税率と計算方法は? 暦年課税(暦年贈与)と相続時精算課税制度の違いも

監修:
白石真敬 (税理士)
贈与税の税率と計算方法は? 暦年課税(暦年贈与)と相続時精算課税制度の違いも

個人から財産を譲り受けると「贈与税」がかかります。計算方法は、暦年課税(暦年贈与)と相続時精算課税の2パターンがあり、それぞれにメリットがあります。贈与税の仕組みや非課税枠を理解したうえで、より有利な方法を選択しましょう。

贈与税の計算方法

贈与税の計算方法

日本では個人から財産を譲り受けると、取得した財産に対して「贈与税」が課されます贈与税の支払いをするのは財産を与えた贈与者ではなく、財産をもらった受贈者です。

贈与税は超過累進税率

贈与税の納税計算には「超過累進税率」が採用されています。所得税や相続税などと同様、どの金額にも一律の税率が適用されるわけではありません。

そもそも「累進税率」とは、課税標準(金額)が増えるほどに高い税率が課される仕組みです。

「超過累進税率」は、課税標準が一定の基準を超えた場合に「超過部分」にのみ高い税率が課せられます。課税価格に応じた段階的な区分があり、区分ごとに税率が変わるのが特徴です。

基礎控除額、速算表を使用

贈与税の計算方法には、「暦年課税(暦年贈与)」と「相続時精算課税」がありますが、ここでは通常の課税方式となる暦年課税について解説します。

暦年課税(暦年贈与)は、1年間(1月1日~12月31日)に贈与された額から「基礎控除」を差し引き、区分ごとの税率を乗じて計算する方法です。基礎控除額は110万円で、1年間の贈与財産の合計が110万円以下の場合は、課税対象にはなりません。

  • 贈与税額=1年間に贈与された額-基礎控除×税率

国税庁のホームページにある「贈与税の速算表」を活用すると、計算がスピーディーです。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

贈与税の税率

贈与税の税率

2015年の税制改革において、贈与税の税率が一般税率と特例税率に区分されました。20歳以上の人が直系尊属から受ける贈与財産には「特例税率」、それ以外の贈与財産には「一般税率」が適用されます。

親や祖父母から贈与を受ける場合

財産をもらった年の1月1日時点で20歳以上の人が父母や祖父母などの直系尊属から贈与を受ける場合は、「特例税率」で贈与税を算出します。

  • 贈与税=(贈与財産の合計-基礎控除額)×特例税率-速算表の控除額
基礎控除後の課税価格 特例税率 控除額
200万円以下 10%
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

40代の子供が父から500万円を贈与された場合の贈与税を「特例贈与の速算表」に基づいて算出してみましょう。

  1.  500万円-110万円=390万円
  2.  390万円×15%-10万円=48万5,000円

500万円から基礎控除である110万円を引くと、残りは390万円です。特例税率(400万円以下)を乗じて控除額を引くと、税額は48万5,000円になります。

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

特例税率は一般税率より税負担が小さい

特例税率の要件に当てはまらない贈与は、すべて「一般贈与財産」となり、一般税率が適用となります。

  • 直系尊属以外の親族(配偶者・配偶者の父母や兄弟姉妹など)からの贈与
  • 他人からの贈与
  • 受贈者の年齢が20歳未満の場合

特例税率は、一般税率よりも税率が優遇されています。父母が未成年の子供に500万円を贈与した場合、贈与税額は53万円(390万円×20%-25万円)です。特例税率との税額差は4万5,000円になり、子供が成人してから贈与する方が負担は少ないといえます。

基礎控除後の課税価格 一般税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,500万円以下 45% 175万円
3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

贈与で不動産を取得する場合

贈与で不動産を取得する場合

贈与で不動産を取得した際にも、贈与税の支払い義務が生じます。土地や家屋の評価額を求めたうえで、前述の贈与税の速算表に当てはめて計算をする流れです。贈与税以外にも「不動産取得税」や「登録免許税」がかかる点に注意しましょう。

まずは評価額を計算

土地や家屋を贈与された場合は「評価額」を算出したうえで、贈与税を計算します。土地の評価額は「路線価が定められているかどうか」で計算式が異なる点に注意しましょう。

  • 路線価方式:正面路線価×奥行価格補正率×面積
  • 倍率方式:土地の固定資産税評価額×一定の倍率
  • 家屋評価額:固定資産税評価額×1.0

路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1m2あたりの価額を1,000円単位で表示したものです。路線価を「奥行価格補正率」などの補正率を使って補正したあと、土地の面積を乗じます。路線価及び奥行価格補正率は、国税庁のホームページで確認しましょう。

「倍率方式」は路線価がない土地の評価方法です。「土地固定資産税評価額」は都税事務所や市区役所、町村役場で、「評価倍率」は国税庁のホームページで確認ができます。

参考までに、マンションの評価額は「敷地権(土地)の価額+区分所有する建物の価額」で計算します。

参考:No.4602 土地家屋の評価|国税庁
参考:令和2年分 財産評価基準書 東京都 (路線価図)|国税庁

贈与税以外にかかる税金

贈与で不動産を取得すると、「不動産取得税」や「登録免許税」がかかります。

不動産取得税とは不動産の取得時に課せられる税金で、不動産価格(課税標準額)に「所定の税率」を乗じて算出します。税率は取得時期によって異なり、2008年4月1日~2024年3月31日までは、土地、住居用の家屋は各3%です(東京都主税局の場合)。

登録免許税」は、法務局で不動産の名義変更時(所有権移転登記)にかかる税金です。贈与の場合、土地・家屋ともに「不動産の価額×2%(20/1000)」で算出します。

不動産の相続と贈与を比べた場合、名義変更に関する税金は相続の方が優遇されています。相続時の登録免許税は「不動産の価額×0.4%(4/1000)」で、不動産取得税も課税されません。

参考:不動産取得税 | 税金の種類 | 東京都主税局
参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度とは

贈与税の課税方法は「暦年課税」が基本ですが、一定の条件を満たした場合は「相続時精算課税」の選択が可能です。制度を活用するメリットや利用シーンについて解説します。

条件を満たす場合に贈与税が軽減される制度

相続時精算課税制度の対象となる贈与は「60歳以上の父母または祖父母から、20歳以上の子・孫に生前贈与をする場合」です。

  • 相続時精算課税制度=(贈与額-2,500万円)×20%

制度を活用すると、贈与時は2,500万円までの非課税枠が使えます。ただし相続時には「制度を利用した贈与財産+相続財産」を基に計算されるため、相続税額が大きくなります。贈与時に支払う税金を相続時まで先延ばしする制度と考えるとわかりやすいでしょう。

相続時精算課税の税率は一律20%です。110万円の基礎控除はありません。

どんな状況で活用される?

住宅の購入費や子供の養育費などが必要になる若い世代にとって、親や祖父母からの生前贈与は大きな助けになります。10年後、20年後になるかもしれない相続を待たずして、まとまったお金を受け取れるのは大きな利点です。

相続時、相続時精算課税制度で贈与された財産は「贈与時の評価額」で課税されます。「将来的に大きな価値の上昇が見込める財産」を贈与する際に有利でしょう。

また、相続財産には基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があります。「財産が基礎控除の範囲内に収まる場合」も、制度を活用するメリットがあるでしょう。

例えば、3,000万円の財産のうち、2,000万円を生前贈与、残りの1,000万円を相続にするとします。生前贈与では2,500万円の非課税枠が使えるうえ、相続時も課税対象の財産は基礎控除金額の範囲内です。

財産を取得しても税金がかからないケース

財産を取得しても税金がかからないケース

財産を贈与されても、税がまったくかからない例外があります。非課税枠や例外の要件やルールは変更になる可能性があるため、国税庁のホームページなどを定期的に確認するようにしましょう。

暦年課税(暦年贈与)は年間110万円までの贈与

暦年課税(暦年贈与)は年間110万円の基礎控除があります。1年間の贈与が110万円以下であれば、贈与税はかかりません。子供に1,000万円の贈与をする際、毎年100万円ずつ口座に振り込めば、税金を支払わずに1,000万円が贈与できることになります。

贈与は贈る側ともらう側の双方の合意によって成り立つものです。この際、贈与契約書を毎年作成し、口座に振り込み履歴を残しておかないと「一括贈与」とみなされる可能性があります。

財務省では、税制の見直しを検討しているようです。今後は相続と贈与が一体化し、生前贈与による非課税枠が縮小されたり、撤廃されたりする可能性もゼロではないでしょう。

扶養義務者からの教育費など

国税庁では、贈与税がかからない財産として「扶養義務者から取得した生活費や教育費」を挙げています。

生活費とは、治療費や養育費を含む「通常の生活に必要な費用」のことです。教育費は、学資・義務教育費・教材費・文具費などの「教育で必要な費用」を指します。

また直系尊属から、自己の住宅用の家屋(新築・増改築など)の対価に充てる金銭を取得した際、要件を満たせば非課税枠が適用となります。

以下は、「住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合」の非課税枠です。

住宅用家屋の新築等に係る契約の締結 省エネ等住宅 左記以外の住宅
2019年4月1日~2020年3月31日 3,000万円 2,500万円
2020年4月1日~2021年12月31日 1,500万円 1,000万円

非課税枠の適用を受けるには、住宅と受贈者が要件を満たす必要があります。国税庁のホームページで確認しましょう。

参考:No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁
参考:No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

贈与税の仕組みを把握し有利な方法の選択を

贈与税の仕組みを把握し有利な方法の選択を

贈与税には暦年課税(暦年贈与)と相続時精算課税の2パターンがあり、両方に非課税枠が設けられています。どちらの方法で課税するかは納税者が選択できるため、贈与者と話し合って有利な方法を選びましょう。

贈与税相続税の計算方法や申告の必要性に迷ったら、1人で悩まずに専門家に相談することをおすすめします。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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