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お金と制度
2022.03.29

相続税の税率は相続人ごとに異なる? 相続税が1.2倍になるケースも

監修:
白石真敬 (税理士)
相続税の税率は相続人ごとに異なる? 相続税が1.2倍になるケースも

相続税を算出するには、いくつもの手順を踏む必要があります。被相続人との関係性によって税率が変わるケースもあり、計算につまずく人も少なくないようです。超過累進課税の意味や、限界税率と実効税率の違いについても解説します。

相続税の額を調べるには

相続税の額を調べるには

「相続」とは、亡くなった人(被相続人)の財産や権利義務の一切を継承することです。相続人は相続税の申告を行い、取得した財産の価値に応じた「相続税」を支払う必要があります。では、税額はどのように決まるのでしょうか。

相続税の課税遺産総額を知る

相続税の税額は、相続人全員が納める「相続税の総額」を出したあと、「実際に取得した遺産割合」に応じて各相続人の納付額を計算します。おのおのが相続した遺産に税率を乗じるだけの単純な計算ではありません。

相続税を計算するにあたり、「課税対象となる財産の総額(課税遺産総額)」を知るのが最初のステップです。

財産には金融資産や不動産などのプラスの財産のほかに、借入金や未払いの医療費といったマイナスの財産があります。すべての財産を洗い出し、全財産の「評価額」を算出したうえで課税遺産総額を計算するのが基本です。

  • 課税遺産総額=正味の相続財産-基礎控除額

財産の評価方法は、国税庁の「財産評価基本通達」に基づきます。評価には専門的な知識が必要なため、税務に詳しい専門家のサポートを検討しましょう。

以下は、2015年1月1日以降の基礎控除額です。総額のうち、基礎控除額を超えた財産にのみ相続税が課せられます。

  • 基礎控除=3,000万円+600万円×法定相続人の数

「法定相続人」とは、「民法」によって定められている相続人のことです。遺言書がない場合は、法定相続人全員で遺産分割を協議します。

参考:財産を相続したとき|国税庁

遺産分割の方法を決める

相続人が複数いる場合、誰が・何を・どれだけ引き継ぐのでしょうか? 通常は「法定相続分」を目安に話し合いを進めます。

法定相続分とは民法で定められた「法定相続人の遺産の取り分」のことで、相続人の順位によって割合が異なるのが特徴です。ここでは、相続人が法定相続分を受け取ると仮定して相続税額を算出しましょう。

配偶者と子供(2人)が相続人の場合は、配偶者が財産の1/2、子供が1/2(人数で分ける)を引き継ぎます。正味財産が1億円とすると、取得金額は以下の通りです。

  • 課税遺産総額=1億円-基礎控除額(3,000万円+600万円×3)=5,200万円
  • 配偶者:5,200万円×1/2=2,600万円
  • 長男:5,200万円×1/4=1,300万円
  • 次男:5,200万円×1/4=1,300万円

参考:No.4132 相続人の範囲と法定相続分|国税庁

相続税の計算

相続税の計算

課税遺産総額を法定相続分で按分したあとは、「速算表」を使って各人の相続税を計算しましょう。相続税に採用されている「超過累進課税」の仕組みについても解説します。

相続税は「超過累進課税」

相続税の計算方法は「超過累進課税」です。そもそも累進課税とは、課税対象額が高くなればなるほど多くの税金を課す仕組みを指します。

超過累進課税は、課税標準を段階的に区分し、前の区分の超過分に対して高い税率を課すのが特徴です。日本では、相続税贈与税・所得税に超過累進課税が採用されています。

累進課税制度を用いる目的は「資産の再分配」と「格差の是正」です。制度によって納税された税金は、社会保障や公共事業を通じて低所得層や障害ある人のために役立てられます。

相続税の速算表を使った計算

次に、「相続税の速算表」を使って各相続人の税額を算出しましょう。この過程は「全員で納める税の総額」を知ることが目的なので、算出された各相続人の税額は「仮の税額」といえます。

  • 各相続人の相続税=法定相続分に応ずる取得金額×税率-控除額

取得税額が2,600万円の場合、税率は15%、控除額は50万円なので、税額は340万円(2,600万円×15%-50万円)です。1,300万円の場合は、145万円(1,300万円×15%-50万円)です。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

速算表で相続人ごとの税額を算出し、合計したものが相続税の総額(例:340万円+145万円+145万円=630万円)です。この後、総額を「実際の取得分」に基づいて分け、各人が負担することになります。

参考:No.4155 相続税の税率|国税庁

相続税の計算で知っておきたいポイント

相続税の計算で知っておきたいポイント

相続税の計算をする際は「相続税がかからない財産」と「各種税額控除」をチェックしておきましょう。相続税の負担が大きく軽減される可能性があります。

非課税の財産

財産の中には「相続税がかからない財産」があります。国税庁が認める非課税財産の一例を紹介しましょう。

  • 日常礼拝をしているもの
  • 非課税枠内で相続人が受け取る生命保険金
  • 非課税枠内で相続人が受け取る退職手当金
  • 地方公共団体や特定の公益法人に寄附したもの

「日常礼拝をしているもの」とは、墓地・仏壇・神棚などを指します。商品や骨董として所有しているものは、非課税財産にはあたりません。

生命保険金と退職手当金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があり、枠を超過した分は課税対象です。

「特定の公益法人への寄附」に関して、対象となる法人は「独立行政法人」や「社会福祉法人」などの一部に限られる点に注意が必要です。

参考:No.4108 相続税がかからない財産|国税庁
参考:No.4141 相続財産を公益法人などに寄附したとき|国税庁

各種控除

相続税にはさまざまな税額控除があります。相続税を算出したあとに税額から控除額を差し引き、最終的な納付額が決まる流れです。複数の控除が適用される場合は、以下の順番に従います。

  1.  暦年課税分の贈与税額控除
  2.  配偶者控除
  3.  未成年者の税額控除
  4.  障害者の税額控除
  5.  相次相続控除
  6.  外国税額控除
  7.  相続時精算課税制度における贈与税額の控除

例えば、未成年者控除は20歳未満の法定相続人で、日本国内に住所がある人が対象です。満20歳(2022年4月以降は18歳)になるまでの間、1年につき10万円が相続税額から控除されます(1年未満の期間は切り上げ)。

各種控除には要件があります。国税庁のホームページで詳細をチェックし、自分が当てはまるかどうか確認しましょう。

参考:No.4164 未成年者の税額控除|国税庁

税率の種類

税率の種類

相続税に限らず、税率には「限界税率」と「実効税率」の2パターンがあります。税金の納付額が計算できるのは限界税率、実際の税負担の割合(%)がわかるのは実効税率です。それぞれの違いについて見ていきましょう。

限界税率

「限界税率」とは、「相続税の速算表」にある8段階の税率のことです。各区分の中で適用される一番高い税率と考えましょう。

「遺産の増減で税率がどう変わるか」を示したもので、1,000万円以下は10%、3,000万円以下は15%というように、区分ごとに同じ税率が設定されています。

限界税率は、相続税を計算するために必要な数値ではありますが、算出された税額は実際の納税額と必ずしもイコールになるとは限りません。

実効税率

「実効税率」とは、「実際にかかった税金が、取得した財産の何%を占めているか」を示したものです。「実際に支払った相続税額÷実際に相続する遺産額」で計算します。

例えば、相続税の総額が630万円、長男が遺産の40%の4,000万円を相続した場合、実際に支払う税金は630万円×40%=252万円です。実効税率は252万円÷4,000万円=6.3%となります。

実効税率は「生前贈与と相続ではどちらの税負担が軽いか」を見るのに役立つものです。生前贈与をすれば相続税は少なくなりますが、代わりに「贈与税」が課せられるのはご存じの通りです。

仮に贈与税の実効税率が相続税の限界税率よりも小さければ、相続よりも有利といえるため、まとまった生前贈与が検討できます。

対象者は相続税額の2割加算がある

対象者は相続税額の2割加算がある

相続税額の2割加算」とは、文字通り相続税額が2割増えることです。被相続人と相続人との関係性によっては、税金の負担が通常よりも大きくなる可能性があります。制度の目的や対象者について確認しましょう。

世代飛ばしの相続や遺贈は1.2倍の税負担

相続税額の2割加算とは、「被相続人の一親等の血族・配偶者以外の人」が遺産を引き継いだ際に、相続税額にその相続税額の2割が上乗せされる制度です。つまり、対象者は1.2倍の税を納めなければなりません。以下に、加算対象となる人を列挙します。

  • 被相続人の兄弟姉妹
  • おい・めい
  • 代襲相続人ではない孫
  • 内縁の夫や妻
  • 友人・知人

本制度は「相続税の負担を公平にすること」が目的であるといわれます。「世代飛ばし」で代襲相続人ではない孫に相続させた場合、本来は2回になるはずの相続税が、1回で済むことになるでしょう。

また、家の稼ぎ頭がいなくなった場合、残された配偶者や子供は経済的な困難に陥る恐れがあります。被相続人と血縁関係が薄い、またはまったくない人の相続よりも、近しい血縁者の相続が優先されるべきという考えもあるようです。

参考:No.4157 相続税額の2割加算|国税庁

計算例

相続税額の2割加算は以下の計算方法に当てはめて算出しましょう。

  • 2割加算=各人の税額控除前の相続税額×20%

例えば、被相続者の「配偶者(40%)」「子供(30%)」「孫(30%)」の3人で、遺産を分けると仮定します。相続税の総額が500万円の場合、各人の税額は以下の通りです。

  • 配偶者:500万円×40%=200万円(配偶者控除で0円)
  • 子供:500万円×30%=150万円
  • 孫:500万円×30%+30万円=180万円

孫は2割加算の対象となるため、相続税額の2割である30万円(150万円×20%)が上乗せされる形になります。

相続にあたり税額をシミュレーションしよう

相続にあたり税額をシミュレーションしよう

相続税は、各相続人が取得した遺産を基に、個別に計算するわけではありません。全員で納める相続税の総額を出したあと、実際の相続割合に応じて負担をします。

「控除税額」や「相続税額の2割加算」などの細かなルールがあるため、税額をシミュレーションする際は、国税庁のホームページをよく確認することが重要です。不動産や株などの財産評価で不明点があれば、税理士に相談しましょう。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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白石真敬 (税理士)

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RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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