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お金と制度
2021.04.14

働くと減るって本当? 老齢年金が減額されるケースとは

働くと減るって本当? 老齢年金が減額されるケースとは

将来、年金だけで生活できなければ、足りない分は働いて収入を得ようと考えている人も多いと思います。年金をもらいながら働く場合、収入によっては一部または全額について年金が支給停止されることがあります。この記事では「年金が減額されるケース」について詳しく解説します。

将来年金額はどうなるの?

老後の不安は、お金と健康に関する不安が大部分を占めています。お金に関しては公的年金が生活の基盤となりますが、それだけでは足りなくなると感じている人は多いようです。

老後生活に対する不安の内容

生命保険文化センターが実施した「生活保障に関する調査(令和元年)」によりますと、「老後の生活に不安を持っている人」は84.4%、実に8割以上の人が老後生活に対する不安を抱えているという結果となりました。

具体的な不安の内容を見ると「公的年金だけでは不十分」が82.8%と最も高く、「日常生活に支障が出る」が57.4%、「退職金や企業年金だけでは不十分」が38.8%、「自助努力による準備が不足する」が38.5%となっています。「年金だけでは足りない」と感じている人が8割を超える結果です。

老後生活に対する不安の内容引用:令和元年度 生活保障に関する調査 《速報版》│生命保険文化センター P36・37(PDF)
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老後資金は本当に2,000万も必要?今からどうやって増やせばいい?

受取額は目減りする?

国は少なくとも5年ごとに、国民年金・厚生年金の財政の現況および見通しの作成、いわゆる「財政検証」を実施しています。令和元年の「公的年金の財政検証」では、今の若い世代が将来年金を受け取るときの水準は、現役男子の賃金の50%を維持できるとしています。この検証の前提条件は、「一定程度の経済成長」と「労働参加が進むこと」です。

日本経済はゆるやかながらも「経済成長する」こと、そして、高齢者が「65歳以上も働き続け、働く女性が増える」こと等により、「厚生年金の加入者が増える」ことが想定されています。

合計特殊出生率、平均寿命の伸びについても現状を踏まえて推定していますが、もし想定以上に少子高齢化が進んだり、予測よりも経済が成長しなかった場合には、年金受取額が減ってしまう可能性があるといえるでしょう。そのため、高齢期も働くなど、年金以外で何らかの収入を得ることを考えた方が安心です。

参照:将来の公的年金の財政見通し(財政検証)|厚生労働省

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公的年金はいくらもらえる? 年金の支給額と不足分を準備する方法

在職老齢年金の仕組みとは

年金だけでは不安なので高齢期に働こうとすると、「受け取れると思っていた年金額が減る」可能性があります。そのため、減額の金額感をあらかじめ把握しておくことは大切です。それでは、高齢期に働く場合の老齢年金の仕組みについて説明します。

70歳未満の人が会社に勤め、厚生年金保険に加入している場合や、70歳以上の方が厚生年金保険の適用事業所に勤めている場合には、「厚生年金(老齢厚生年金の額)」と「給与と賞与」の額に応じて、受け取りを予定していたはずの年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。

ただ一点注意すべきなのは、停止の対象となるのは「老齢厚生年金」のみです。「老齢基礎年金」は支給停止の対象とはなりません。

厚生年金に加入しながら同時に厚生年金を受け取る年金のことを、在職老齢年金といいます。減額等の条件は、年齢によって変わります。

60歳から65歳未満の在職老齢年金

老齢厚生年金は昭和60年の法律改正により受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられ、65歳未満では老齢厚生年金を受け取れなくなりました。しかし法改正とともに急に制度が変わっては混乱を招くため、受給開始年齢を段階的に引き上げることになりました。これが「特別支給の老齢厚生年金」です。

65歳未満の人で老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金の被保険者となっている(会社勤めをして厚生年金に加入している)場合、年金は「在職老齢年金」として扱われ、収入に応じて年金が支給停止となる場合があります。

「特別支給の老齢年金」として、65歳より前に年金を受け取る人が「在職老齢年金」に該当するのは、年金をもらいながら厚生年金に加入し働いて収入を得るときです。年金の支給額については、後述する「60歳台前半(60歳から65歳未満)の計算式」を参照してくだい。

法律改正後の段階的措置のため、「65歳未満で年金が受け取れる対象者」は年齢により異なります。男性の場合は現在60歳以上の方、女性は55歳以上の方が該当します。詳しい受給開始スケジュールは、下記を参考にしてください。

【特別支給の老齢年金受給要件】

  • 男性の場合、昭和36年4月1日以前に生まれたこと
  • 女性の場合、昭和41年4月1日以前に生まれたこと
  • 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)があること
  • 厚生年金保険等に1年以上加入していたこと
  • 60歳以上であること

参照:特別支給の老齢厚生年金|日本年金機構

65歳以上の在職老齢年金

65歳以上70歳未満で会社勤めをして厚生年金保険の被保険者である人が、老齢厚生年金を受給する場合、「在職老齢年金」に該当します。被保険者として支払う年金の額と、給料とボーナスの合計額に応じて年金が支給停止となる場合があります。計算式は後述します。

70歳以上の在職老齢年金

平成19年4月以降に70歳に達した人が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務する場合は、厚生年金保険の被保険者にはならず、厚生年金保険料負担はなくなります。

しかし「在職老齢年金」の仕組みは適用となり、65歳以上70歳未満の人と同様に計算され、収入によっては老齢厚生年金が支給停止となることがあります。

計算方法について詳しく見てみよう

在職老齢年金の支給停止の計算方法について解説します。年齢によって基準額および計算式に違いがあります。計算にあたって、まずは計算のもととなる用語について説明してから計算式を年齢別に解説します。

基本月額

1年間に受け取る「老齢厚生(退職共済)年金」の基礎年金部分を除いたものを12で割った金額を「基本月額」といいます(加給年金は除く)。

例えば、1年間に合計216万円の年金を受け取っている人の基本月額は、216万円を12で割った18万円です。

総報酬月額相当額

会社から受け取る「毎月の賃金」と「1年間に支給される賞与を12で割った額」を合計した金額が、「総報酬月額相当額」となります。

例えば、毎月の賃金が20万円で、1年間の賞与合計が60万円の人の総報酬月額相当額は、賃金20万円と賞与60万円を12で割った5万円を足して、25万円となります。

想定される年金と収入

働くことで、もし働かなかったら受け取れた年金額がどのくらいマイナスになるのかをイメージするために、下記の数値をモデルケースとして使います。

厚生労働省のページによると、「厚生年金に40年間加入して、その期間の平均収入(月額換算した賞与含む)が月43.9万円の場合、受給額は月額約9.0万円の老齢厚生年金(令和2年度)」とあり、例では受け取れる厚生年金の金額を月額9万円とします。

参照:厚生年金の年金額|日本の公的年金は「2階建て」 | いっしょに検証! 公的年金 | 厚生労働省

また国税庁「令和元年分 民間給与実態統計調査結果」によると、60〜64歳の男性の平均給与は年額522万円、月額に換算すると約43万円です。65〜69歳の男性の平均給与は年額406万円、月額では約34万円です。

モデルケースでの試算

【65歳未満の場合(2022年3月末まで)】

60歳台前半の特別支給の老齢厚生年金が月額9万円、働いて得た収入「総報酬月額相当額」が43万円と仮定すると、計算式は以下となります(計算式詳細は後述します)。

総報酬月額相当額が47万円以下で、基本月額が28万円以下の場合、

基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2=年金支給月額

に該当し、

9万円-(43万円+9万円-28万円)÷2=▲3

結果、年金支給月額はゼロ、つまり年金月額9万円全額が支給停止となります。そのため就労収入の月額43万円のみとなります。

【65歳以上の場合】

65歳以降の老齢厚生年金が月額9万円、働いて得た収入「総報酬月額相当額」が34万円と仮定すると、「基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下」の場合に該当し、年金は月額9万円全額支給となり、就労収入月額34万円と合わせて月額43万円の収入となります。

老齢厚生年金が月額9万円の人の場合、働いて得た収入「総報酬月額相当額」が38万円以上から年金が一部停止となり、56万円以上で全額が停止となります。

ねんきんネットで試算できます

ご自身に当てはめるときには、「ねんきんネット」の「将来の年金額を試算」コーナーで、今後の詳細な条件を設定することで、「支給停止見込額(月額)」が発生するかどうかを実際に確認することができます。

60歳台前半(60歳以上65歳未満)の計算式

老齢厚生年金の基本月額と、総報酬月額相当額の合計が28万円に達するまでは、年金は全額支給されます。この28万円の基準額のことを「支給停止調整開始額」といいます。

もう一つ「支給停止調整変更額」という基準もあります。こちらの基準は現在47万円となっています。

これらの基準額に応じて、5つの計算式があります。

【在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式】

1)基本月額と総報酬月額相当額の合計額が28万円以下の場合

全額支給


2)総報酬月額相当額が47万円以下で、基本月額が28万円以下の場合 

基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2


3)総報酬月額相当額が47万円以下で基本月額が28万円超の場合

基本月額-総報酬月額相当額÷2


4)総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円以下の場合 

基本月額-{(47万円+基本月額-28万円)÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}


5)総報酬月額相当額が47万円超で基本月額が28万円超の場合 

基本月額-{47万円÷2+(総報酬月額相当額-47万円)}

2022年4月から65歳未満も47万円以下全額支給へ

年金の改正があり、令和4年4月から65歳未満の「在職老齢年金」は、年金支給が停止される基準が緩和されます。

現行の法律で全額支給される基準額が28万円から47万円に緩和され、基本月額と総報酬月額相当額の合計額が47万円以下の場合、年金が全額支給されます。

65歳以上の計算式

65歳以上で厚生年金に加入している人および平成19年4月以降に70歳に達した方が、70歳以降も厚生年金適用事業所に勤務されている場合は、在職老齢年金の計算をします。

基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超えた人は超えた額の半分が支給停止となります。なお、老齢厚生年金が対象であり、老齢基礎年金は全額支給されます。

【在職老齢年金による調整後の年金支給月額の計算式】

1)基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合

全額支給


2)基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合

基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

参照:在職老齢年金の支給停止の仕組み│日本年金機構(PDF)

改正で65歳以上は年金受給額が毎年再計算される

これまで、在職中の老齢厚生年金受給者に対して、厚生年金被保険者の資格を喪失(退職等)するまでは、老齢厚生年金の額の改正はありませんでした。しかし年金制度の改正により、令和4年4月から新たに「在職定時改定」制度が導入され、年金額は毎年10月に改定されることになりました。

これにより、65歳以降に納めた保険料をもとに1年に1回再計算し、年金額に反映することになります。退職を待たずに保険料支払いによる年金増額効果を得ることができ、年金を受給しながら働く人の経済基盤の充実が図られることとなります。

年金減額の影響を受けない収入を確保しよう

老齢厚生年金を受け取りながら厚生年金に加入して働くと、賃金やボーナスによっては支給される年金が減額されます。

年金に影響しない働き方としては、個人事業主として働く、または厚生年金の加入条件に満たない短時間のアルバイトのような働き方をするなどが挙げられます。ただ、厚生年金に加入しない働き方を選択すると、受け取る年金額は減りませんが、安定した金額を稼ぐことは難しいかもしれません。

老後の安定した収入として、労働による収入のほかに、投資により形成した資産からの収入も組み合わせることでより充実した老後対策となります。さまざまな対策を検討してみましょう。

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※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

山内真由美 ファイナンシャルプランナー(CFP®)

北海道出身。ファイナンシャルプランナー(CFP®)大学卒業後、食品メーカー勤務。40歳で双子を出産。育児のかたわら、都市銀行にて資産運用相談部門を経験し、独立。 FP事務所「FPオフィス ライフ&キャリアデザイン」を東京都内で開業。 FPオフィス「ライフ&キャリアデザイン」

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