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2021.02.25

不動産投資でなぜ火災保険は必要なのか? その補償内容と選び方を解説

不動産投資でなぜ火災保険は必要なのか? その補償内容と選び方を解説

不動産投資を始めるときには、購入する物件や利用する金融機関、ローン金利など、決めなければならないことが多くあります。「火災保険」もその一つであり、不動産投資におけるリスクを軽減し、安定した賃貸経営を行うためには欠かせません。しかしながら、火災保険選びは、物件選びや金融機関・ローン選びに比べると軽視されやすく、よくわからないまま、金融機関から提示されたプランなどに加入しているケースも少なくありません。

今回は、不動産投資に火災保険がなぜ必要なのか、どのようなリスクに備えられるのか、どうやって選べばいいのかを解説します。

不動産投資における火災保険の必要性

なぜ火災保険に加入しなければならないのか。それには次のような理由があります。

火災保険に加入しないと融資を受けられない

金融機関から融資を受けて投資用不動産を購入するには、購入する物件を対象とする火災保険への加入が条件となり、火災保険に加入しないとそもそも融資を受けられません。

これは火災や自然災害などで担保となる融資対象の建物が滅失してしまっても、保険金が支払われるようにしておき、金融機関が融資を回収不能となるリスクを回避する目的があります。

滅失にまで至らなかったとしても、建物が被害を受ければ復旧に費用と時間がかかり、その間の賃料収入が途絶えれば返済が滞るリスクが高まります。このようなリスクを軽減することも火災保険の重要な役割です。

火災保険に加入することで損失が限定され利益が安定する

不動産投資には次のようなリスクがあり、安定した利益を得るには、これらのリスクに適切に対処し、コントロールしていくことが鍵となります。

不動産投資の主なリスク

  • 空室リスク
  • 家賃滞納・変動リスク
  • 不動産価格変動リスク
  • 金利変動リスク
  • 流動性リスク
  • 老朽化・修繕リスク(建物)
  • 自然災害・事故リスク

火災保険は、このうち自然災害・事故リスクに対する備えとなり、火災や台風、河川の氾濫、地震などの自然災害、第三者による破損・汚損事故により建物が被害を受けたときには、その復旧にかかる費用が補償されます。

自然災害などによる建物への被害は、強度を高めておくといった軽減対策は取れますが、自身で発生をコントロールできず、完全には防ぐことの難しいリスクであり、復旧に多額の費用がかかるケースも少なくありません。この費用がすべて自己負担となれば、それまでの利益が吹き飛び、損失が出る恐れもあります。

火災保険は、保険料を支払うことで、自然災害などによる出費を保険会社に肩代わりしてもらう仕組みであり、所有者(保険加入者)の損失(コスト)を保険料の範囲に限定することで、収支が安定します(補償内容や免責金額の設定によっては、保険料以外に自己負担が発生する場合があります)。

不動産投資における火災保険の補償内容 

投資用不動産(建物)を対象として火災保険に加入する場合の補償内容には、主に次のようなものがあります。

  •  火災・落雷・破裂・爆発
  •  風災・雹災・雪災
  •  水災
  •  水濡れ
  •  外部からの物体の衝突・破壊行為
  •  盗難
  •  不測かつ突発的な事故による破損・汚損
  •  臨時費用補償特約
  •  建物管理賠償責任補償特約
  •  電気的・機械的事故補償特約
  •  弁護士費用特約
  •  家賃収入補償特約
  •  家主費用補償特約

「(1)火災・落雷・破裂・爆発」と「(2)風災・雹災・雪災」は加入必須の基本補償(主契約)、そのほかの補償は、加入するかを任意で選択できるオプション(特約)となっている商品が一般的です。それぞれの補償がどのような内容になっているのか、詳しく見ていきましょう。

(1)火災・落雷・破裂・爆発

火災保険の最も基本となる補償であり、建物の一部または全部が、「火災」「落雷」「破裂・爆発(気体または蒸気の急激な膨張を伴う破壊、その現象)」により、焼失または破壊されてしまったときに保険金が支払われます。

消火のための放水で生じた「水濡れ」による損害もこの補償に含まれます。

対象となる建物が火元の火災だけでなく、隣家で発生した火災によって被害を受けた場合にも保険金が支払われます。

最近は「ゲリラ豪雨」に伴う落雷の増加により、インターネット回線やオートロック基盤などの建物附属設備などへの被害が増えています。

(2)風災・雹災・雪災

「風災」補償では、台風や突風、竜巻、暴風などにより、屋根が飛んだり、風圧で窓ガラスが割れたりしたときに保険金が支払われます。ただし、開けっ放しになっていた窓から雨が吹き込んだり、雨漏りによって生じた損害は補償されません。

雹災とは雹(ひょう)によって屋根や窓ガラスが破損するといった事故、雪災とは雪の荷重や落下、雪崩による事故のことをいいます。雪解け水(融雪水)の漏入や凍結、洪水、除雪作業による事故は、「雪災」の補償には含まれません。

(3)水災

「水災」補償では、台風や豪雨、雪解け水などによる洪水、高潮、土砂崩れ・落石によって、床上浸水もしくは地盤面より45cmを超える浸水被害を受けた場合、建物評価額(再調達価額)の30%以上の損害が生じた場合に保険金が支払われます。

(4)水濡れ

「水濡れ」補償では、給排水設備の破損や詰まりによって生じた漏水・放水、他の戸室で生じた漏水・放水などにより、部屋が水浸しになってしまった場合などに保険金が支払われます。

給排水設備は老朽化していくため、「水濡れ」のリスクは高くなります。給排水設備自体の破損などについては、後述の「不測かつ突発的な事故による破損・汚損」の補償対象に含まれます。

(5)外部からの物体の落下・飛来・衝突、騒擾(そうじょう)

「外部からの物体の落下・飛来・衝突」の補償では、自動車が衝突して建物が損傷したり、外からボールが飛んできて窓ガラスが割れたりした場合などに保険金が支払われます。

自動車の衝突による被害は、通常、衝突した自動車の自動車保険の対物補償から保険金を受け取れますが、無保険であったり、飲酒運転の事故で保険が適用されなかったりするケースではすぐに補償を受けられないこともあります。そのような場合には自身の火災保険から保険金が支払われます。

「騒擾」とは、集団による暴動やデモ、労働争議などをいい、それらに伴う破壊行為によって建物が被害を受けた場合に、保険金が支払われます。

現在の日本では、破壊行為を伴うデモなどが起きる可能性は低いといえますが、アメリカの人種差別抗議デモや香港の民主化デモのようなことが起こるリスクはゼロではなく、補償として用意されています。

(6)盗難

「盗難」補償では、強盗や窃盗などに伴い、ドアの鍵が壊されたり窓ガラスが割られたりした場合や、建物設備自体が盗まれた場合などに保険金が支払われます。

建物内の家財や現金などの盗難被害は、家財を対象とする火災保険により補償されます。賃貸物件の場合、オーナー(所有者)は建物を対象とした火災保険に加入し、家財を対象とする火災保険は入居者自身に加入してもらうのが一般的です。

(7)不測かつ突発的な事故による破損・汚損

(1)〜(6)までに該当しない、不測かつ突発的に発生した事故は、「破損・汚損」の補償対象に該当すれば保険金が支払われます。

「破損・汚損」の補償範囲は広く、「うっかり壁に家具をぶつけて穴を開けてしまった」「水道管が凍結して破損した」などのケースが該当します。

(8)臨時費用補償特約

損害保険金の支払われる事故が発生した場合、損害保険金の一定割合(10%など)が上乗せして支払われる特約です。

この特約から支払われる保険金の使い道は自由であり、残存物などの片付け費用、復旧までの入居者の仮住まい費用・引っ越し費用、近隣への見舞金、再発防止対策費用など、補償対象外で自己負担となる費用をカバーするために役立ちます。

(9)建物(管理)賠償責任補償特約

所有・管理する建物の不備を原因とする偶然の事故により、他人を死傷させてしまったり、他人の財物に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に保険金が支払われます。

これには「階段の手すりが壊れ転落事故が発生してしまった」「給排水設備の故障により入居者の家財を水浸しにしてしまった」などのケースが該当します。

水濡れ事故は発生しやすい事故であるほか、他人の生命・身体に被害を与える事故が発生すれば多額の賠償を求められるおそれもあります。

法律上の損害賠償責任の補償には、ほかに「個人賠償責任補償特約」がありますが、こちらは契約者やその家族(人)の不注意などが原因で発生した賠償事故補償するもので、賃貸住宅の「入居者」として加入するのであれば付帯しておきたい特約です。

しかし、賃貸経営は事業とみなされるため、「個人賠償」には該当せず、物件(建物)を対象とする火災保険では、「建物(管理)賠償責任補償特約」でなければなりません。

(10)電気的・機械的事故補償特約

建物の機械設備に、電気的、機械的事故が生じ、故障した場合の修理費用が補償される特約です。

投資対象が一棟物件であり、エレベーターや給水ポンプ、機械式駐車場、太陽光パネルなどの機械設備を自己所有する場合、事故が発生すると修理費が高額になるケースが多く、必須の補償といえます。

ただし、使用に伴う消耗、劣化など機械寿命による故障、ねずみや害虫により発生した損害などは補償されません。

(11)弁護士費用特約

賠償事故が発生し、弁護士に相談・依頼する場合にかかる費用が補償される特約です。

弁護士に依頼すれば相手方との交渉をスムーズに進められるメリットがありますが、費用が高額になることも多く、その費用に備え付帯しておきたい特約です。

(12)家賃収入補償特約

損害保険金が支払われる事故によって賃貸物件が損害を受け、家賃収入が得られなくなったときに、契約で定める復旧期間を限度に、減少した家賃収入を補償する特約です。

家賃収入でローン返済を行っている場合、家賃収入が途絶えてもローン返済は続くため、この特約を付帯しておくと安心です。

空室による家賃収入の減少や、復旧期間中の入居者の仮住まい費用・引っ越し費用などを補償するものではありません。

(13)家主費用補償特約

賃貸物件内で、自殺や他殺、建物への損害を伴う孤独死が発生した場合に、空室となったり、家賃の値引きが必要となり減少した家賃収入、原状回復にかかる費用(清掃・修復)、遺品整理費用などが補償されます。

高齢単身者の入居が想定されるケースなどには、特に必要性の高い特約といえます。

地震による損害は別途「地震保険」への加入が必要

火災保険では、地震や津波が原因で生じた損害は補償対象ではなく、補償を確保するためには別途「地震保険」に加入する必要があります。

入居者の不注意で発生した損害は、入居者が加入する火災保険から補償を受ける

火の不始末で火事になった場合や、洗濯機の排水ホースが外れ室内、下階に水濡れを起こした場合など、入居者の不注意やミスによって生じた建物への損害や賠償責任については、原則入居者自身が責任を負います。

事故が発生したときに補償が受けられるよう、「借家人賠償責任補償」(「個人賠償責任補償」)が含まれる火災保険(家財保険)への加入を入居条件とすることが一般的です(保険料は入居者負担)。

入居者に「借家人賠償責任補償」を含む火災保険(家財保険)への加入を求めない場合や、未加入で賠償が受けられないリスクを回避したい場合には、オーナー自身が加入する火災保険に「マンション居住者包括賠償特約」を付帯する方法もあります(保険料はオーナー負担)。

不動産投資における火災保険選びのポイント

不動産投資における火災保険は、次のようなポイントを押さえて選びましょう。

補償範囲はなるべく広く

保険の基本的な考え方は、「めったに発生しないが、発生すると被害の大きい」リスクを、保険料を払って保険会社に移転(転嫁)し、リスク(損失)を保険料の範囲に限定するというものです。

しかし、不動産投資の火災保険では、「被害は小さいが、頻繁に発生する」リスクに備えておくことも重要です。

賃貸物件は基本的にオーナーに修繕義務があり、事故が起きるたびに持ち出しで修繕を行う方法では出費を予測できず、収支が安定しなくなります。

補償範囲が広いほど保険料は割高になりますが、不動産投資・賃貸経営を安定して行うには、なるべく保険で網羅的にリスクをカバーできるようにしておくのが望ましいといえます。

前述の(1)〜(11)の補償と地震保険を基本に、予算や必要性に応じて「(12)家賃収入補償特約」「(13)家主費用補償特約」を付帯するとよいでしょう。

水災補償の必要性

マンション等区分所有建物の2階以上にある戸室所有する場合など、浸水する可能性の極めて低いケースでは、「(3)水災」の補償を外してもよいでしょう。

一棟物件では、河川が近くにない物件、高台にある物件などは相対的に水災のリスクが低いといえます。

ただし、ゲリラ豪雨などでマンホールから水があふれて浸水するケースや、大雨で土砂崩れが発生するケースなどもあり、必ずしも安全とはいいきれません。安易に外さず、判断に迷うのであれば水災補償を含め加入しておくほうが安心です。

保険金額・保険期間を適正に設定しておく

保険金額は部屋内を修復できる金額に設定する

火災保険の保険金額は、区分所有建物を対象に保険をかける場合は部屋内を修復できる金額に、アパートやマンション1棟を対象に保険をかける場合は建物を再築できる金額に設定するのが基本です。

  • 新築物件の保険金額……建築費をもとに計算する。
  • 中古物件の保険金額……新築時の建築費がわかる場合、その建築費に新築年に応じた指数(建築費倍率)をかけて計算する。新築時の建築費がわからない場合、各保険会社が定める「新築費単価」に建物面積をかけて計算する(概観法)。

保険期間は保有期間、または10年で設定するのが一般的

現在火災保険は最長10年間の契約が可能で、補償内容が同じであれば、保険期間を10年に設定し、保険料を一括で支払うと1年あたりの保険料が最も安くなります。

基本的には、その建物を保有する期間に応じて保険期間を設定し、10年を超える長期保有を予定している場合は10年(または5年)で設定し、更新していくのが一般的です。

予算オーバーとなってしまう場合でも補償は極力削らない

物件購入時には火災保険以外にもさまざまな諸費用がかかり、10年分の保険料を一括払いすると、予算をオーバーしてしまうこともありえます。

このようなケースでは、補償を削って保険料を下げるのではなく、まずは「年払い(分割払い)」としたり、10年ではなく5年の一括払いとしたりすることで、購入時の支払額を抑える方法を考えましょう。分割払いとする場合の保険期間は最長5年です。

また「免責金額」を設定し、損害が生じたときに一定額は自己負担とすることで、保険料を抑える方法もあります。

保険料は安いに越したことはありませんが、いざというときに補償が受けられないのでは意味がありません。不動産投資における火災保険は、保険料ではなく、補償内容を最優先に選びましょう

保険料は加入する保険会社、加入経路によって変わるので、比較して決める

補償内容がほぼ同じでも、保険会社によって保険料は違います。また同じ保険会社・商品でも、借入先金融機関や不動産会社などを介して加入すると団体割引が適用され、個人で加入するよりも保険料が安くなるケースもあります。

金融機関や不動産会社から火災保険の提案や指定を受けた場合には、まず必要な補償が確保できる内容かを確認したうえで、複数の保険会社で見積もりを行い、比較検討することをおすすめします。

経年劣化による修繕・メンテナンス費用は、自己資金で積み立てる

火災保険は、火災や自然災害、第三者による破損・汚損など、「不測かつ突発的な事故」が原因で生じた損害を補償するものであり、時間が経てば当然に想定される劣化(経年劣化)や故障による損害までは補償されません。

建物や設備は、定期的な点検やメンテナンスにより外観や機能を維持しながら、ある程度の期間が経てば修繕・交換が必要となります。これらの費用は火災保険とは別に、自己資金を積み立てておくことが大切です。

火災保険で必要な補償が確保できているか、いま一度確認を

不動産投資における火災保険は、金融機関から融資を受ける条件であるほか、安定した収益をあげていくために欠かせないものです。

しかし、火災保険は購入時のさまざまな手続きの中で後回しにされやすく、提案された火災保険にそのまま加入していたり、保険料だけをみて最低限の補償しかないプランに加入していたりするケースも少なくありません。

必要な補償が確保できていないと、事故が起きたときに保険が使えず、思わぬ出費となってしまうおそれがあります。これから火災保険に加入する人は、よく検討したうえで加入していただき、すでに加入している人は、この機会に補償内容を確認し、不足があれば事故が起きる前に見直しておきましょう。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

竹国弘城 1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎

RAPPORT Consulting Office 代表。証券会社、保険代理店での勤務を経て、ファイナンシャルプランナーとして独立。より多くの人が、自身のお金について自ら考え、行動できるよう、コンサルティング業務や執筆業務などを行う。趣味はサウナ。1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP®︎、サウナ・スパ健康アドバイザー。 RAPPORT Consulting Office

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