元利均等返済と元金均等返済の違い
借入金の返済方式には元利均等と元金均等の2種類があります。一見すると両者に大きな相違はないように見えますが、毎月(回)の支払額、利息総額、課税所得の計算を視野に入れると決定的な違いが浮かび上がります。
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元利均等方式はキャッシュアウトの平準化手段
元利均等方式では毎回の元本返済額と利息支払額の合計額を均等にします。元本1億円、利息5%(固定)、償還期間20年の借入を行った場合、1年間の支払額は791万9,469円になります。利息負担額は合計で5,838万9,377円です。
1年目の支払額の内訳は元本返済298万7,311円、利息支払493万2,158円となります。その後、徐々に元本返済の割合が高まり7年目には元本返済402万9,936円、利息支払388万9,533円と逆転します。最終の20年目は元本返済770万9,090円、利息支払21万379円で支払額の97%強を元本返済が占めます。
利息支払額は税務上の損金に該当しますが、元本返済額は負債の減少を意味し損金には当たりません。つまり元利均等方式を選択すると支払額は一定でも損金算入できる費用の割合が年々低下することになります。
1億円の借入金を建物購入代金に充てた場合、その減価償却期間を簡易的に20年間とし定額法を選択すれば1年間の減価償却額は500万円です。上記の例では12年目に元本返済額が517万1,853円となり、元本返済額が減価償却額を上回るデッドクロスが生じます(定率法で減価償却を行えば、さらに早い時点でデッドクロスになります)。
そのため、デッドクロスの時期に備える方法として、元利均等返済で初期に蓄えたキャッシュフローを繰上返済することや、追加で償却資産を購入しタックスマネジメントする方法があります。
元利均等方式は毎月の返済金額が元金均等返済より少なく、初期段階のキャッシュアウトを抑制できるほか減価償却の定率法と同様に費用の先食い効果があり、選択適否を検討することが大切です。(※2016年度4月1日以後に取得した不動産の建物設備の償却方法は、定額法に一本化されます。)
元金均等方式はデッドクロスの防止に有効
元金均等方式では毎回の返済元本を均等にします。支払回数を重ねるごとに元本が減るため利息も逓減していきます。
元本1億円、利息5%(固定)、償還期間20年の借入を行った場合、1年目の支払額は988万5,417円で元利均等方式と比べ196万5,948円多くなります。その後8年目(813万5,417円)までは元金均等方式の支払額の方が多いですが、9年目から逆転します。利息総額は5,020万8,333円で元利均等方式よりも818万1,044円少なくなります。
元金均等方式では借入額が償却対象資産の簿価以下、返済期間と減価償却期間が一致、定額法による減価償却という条件がそろえば、デッドクロスが起きる心配はありません。
本来、借入金の返済期間や償還方法は資金使途と整合的であるべきです。建物・附属設備への投資を減価償却期間に合わせて回収するのであれば、返済期間もそろえることが合理的です。また建物や設備の劣化度合いは投資の初期段階に大きくなるものではなく、毎年均等に進むと考える方が自然です。
もっとも不確定要素の多い不動産投資の初期段階のキャッシュアウトを抑制したいとか給与所得など他の所得も含め多額の利益を得られるとかの個別事情を勘案して、元金均等方式と定率法を選択し費用の先食いを進めることも考えられます。
現状のような超低金利状態が続けば元利均等方式と元金均等方式の差異が極端に大きくなることはありません。しかしながら、利払金の累積額に大きな差が出る可能性があることや元金減少スピードに伴う内部留保の確保、財務・税務上の計上費用(損金)とキャッシュフローに違いがある点を的確に理解することは、不動産投資を成功させるうえで極めて重要なカギとなります。
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