公開日: 2026.02.02

「自筆証書遺言書保管制度」とは? メリットや注意点、費用、手順を解説|RENOSY 相続わかるラボ

監修:
木村成愛 (日知司法書士事務所代表 司法書士)
「自筆証書遺言書保管制度」とは? メリットや注意点、費用、手順を解説|RENOSY 相続わかるラボ

相続手続きにおいて、遺言書はきわめて重要な役割を果たします。とくに自筆で作成する「自筆証書遺言」は手軽である反面、紛失・改ざん・形式不備といった多くのリスクを抱えていました。こうした課題を背景に、2020年(令和2年)から導入されたのが「自筆証書遺言書保管制度」です。本記事では、制度の概要、対象となる遺言書の種類、具体的な保管内容、メリットや注意点、実際の利用の流れまでを詳しく解説します。

遺言相続における遺言書の重要性

相続手続きには、民法で定められたルールに従って財産を相続する「法定相続」と、遺言書に従って相続手続きを行う「遺言相続」があります。遺言は、自分の財産をどのように残したいか、自分の考えや思いを伝えるための大切な手段です。

【関連リンク】
遺言相続とは? 法定相続との違いや遺言書の活用法を解説|RENOSY 相続わかるラボ

遺言書にはどんな種類がある?

遺言書には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。自筆証書遺言と秘密証書遺言は自己保管が原則です。一方、公正証書遺言は公証役場が保管を行い、安全性が高い反面、費用や手間がかかります。

自筆証書遺言のリスク・手間

自筆証書遺言は、いつでも自身で作成できる利便性がある一方、以下のようなリスクを伴います。

  1. 書き方などの要件を満たしておらず無効になりやすい
  2. 紛失したり、発見されない可能性がある
  3. 勝手に改ざんされたり、捨てられたり、隠されたりする可能性がある
  4. 相続人が勝手に開封することは認められず、家庭裁判所での検認手続きが必要になる

さらに、上記の4つ目の相続人による勝手な開封を防ぐため、発見された自筆証書遺言書は家庭裁判所での検認手続きが必要でした。こうした実務上の問題を解消し、相続手続きを円滑に進めるため、2020年7月に法務局による「自筆証書遺言書保管制度」が創設され、安全かつ確実に遺言書を保管できる体制が整えられました。

3種類の遺言書 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言

自筆証書遺言書保管制度とは?

自筆証書遺言書保管制度は、自筆で作成した遺言書を法務局で保管してもらえるサービスです。

「自筆証書遺言」が保管対象となり、内容を秘密にしたまま遺言の存在を公証人と証人2人以上で証明してもらう「秘密証書遺言」は、制度の利用対象外です。

自筆証書遺言書保管制度の具体的なサービス内容

この制度では、遺言者が法務局に出向き、作成した自筆証書遺言書を保管してもらうことができます。主なサービス内容は以下のとおりです。

  • 遺言書原本の保管:遺言者の死後50年間 
  • 遺言書画像データの保管:遺言者の死後150年間
  • 民法の定める形式に適合しているかの外形的確認:提出時に実施 

自分自身で作成した自筆証書遺言書を特定の法務局(遺言書保管所)で保管してもらえるだけでなく、保管の際に遺言書の形式的な要件が満たされているかの確認を受けることができます。これにより、書き方の不備によって遺言書が無効になるリスクを減らすことが期待できます。ただし、この確認は遺言書の内容の有効性を保証するものではない点に注意が必要です。「保管された」=「遺言書は有効」ではないことを理解しておきましょう。

自筆証書遺言書保管制度利用のメリットと注意点

自筆証書遺言書保管制度は多くのメリットがあります。一方で、注意すべき点も存在します。

自筆証書遺言書保管制度のメリット

  • 改ざんや紛失のリスクを抑えて安全に保管できる
  • 通知制度により、遺言書の隠匿の可能性を減らせる
    遺言者の死後、指定された相続人や、遺言書を閲覧・証明書交付を受けた相続人がいる場合、ほかの相続人へ遺言書が保管されていることが通知されます。
  • 相続人が遺言書を閲覧したり証明書の交付を受けたりすることができる
    相続開始後、相続人は全国の法務局で保管された遺言書の画像データを閲覧でき、遺言書情報証明書の取得ができるほか、原本保管局では原本の閲覧も可能です。
  • 家庭裁判所での検認が不要になるため、相続手続きをスムーズに進められる

法務局における自筆証明書遺言に係る遺言書の保管制度の創設

自筆証書遺言書保管制度の注意点

  • 遺言書の内容が簡単に変更できない
    記載された住所や氏名に変更があった場合、または遺言内容を変更する際は、法務局へ出向いて変更手続きが必要です。
  • 遺言書の有効性は保証されない
    形式的な要件のみが確認され、内容の有効性までは確認されません。内容について専門家に相談する、もしくは公正証書遺言書にするかが考えられます。
  • 本人が法務局へ行く必要がある
    代理人による申請はできません。
  • 費用がかかる
    遺言書1通につき3,900円の手数料が必要です。※2026年1月現在

自筆証書遺言書保管制度の利用の流れ

制度を利用するための流れは以下のとおりです。

  1. 遺言書の作成:遺言者自身が手書きで遺言書を作成します。
  2. 法務局(遺言書保管所)を決める:保管所は遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地を管轄する法務局の中から選びます。
  3. 申請書の準備:法務局の窓口や法務省のホームページから申請書を取得し、(本籍と戸籍の筆頭者の記載のある)住民票を準備します。
  4. 遺言書保管所の予約:手続きに行く日程を予約します。
  5. 申請手続き:遺言者本人が遺言書保管所に出向いて手続きを行います。その際、マイナンバーカードなどの顔写真付き身分証と印鑑を忘れずに持参しましょう。

安全な遺言書保管の選択肢

自筆証書遺言書保管制度は、遺言書を安全に保管したいと考える方にとって有効な選択肢の一つです。費用を抑えつつ、できるだけ安全に遺言書を残したいという方は、この制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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この記事を書いた人

平城智隆 上級相続診断士・不動産証券化マスター・不動産コンサルティングマスター・賃貸不動産経営管理士・貸金業務取扱主任者

中央大学卒業後、SEとしてキャリアをスタート。その後、カルチュア・コンビニエンス・クラブでの企画職やITベンチャーの起業を経て、不動産業界へ転身。不動産小口化商品、リースバック事業、ファンド組成運用など幅広い実務経験を活かし、現在はGA technologiesにて「専門知識を親しみやすく」をモットーに、実務経験に裏打ちされた視点で信頼できる情報を発信している。

この記事を監修した人

木村成愛 木村成愛 日知司法書士事務所代表 司法書士

日知司法書士事務所は不動産に関する売買、贈与、相続、遺言作成等に加え、事業承継、信託、シンジケートローン等に関連する渉外も含め、幅広い分野で相談から具体的な解決に向けたアクションまでを行うことを得意としている。 また、依頼者の気持ちに寄り添い、単なる手続きにとどまらない関連事項をも丁寧に説明したサービス提供が相談者の信頼を集めている。 日知司法書士事務所

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