手続きしなければもらえない、親族が亡くなった後にもらえる5つのお金
親族が亡くなると、葬儀費用、お墓や仏壇などにかかる費用、相続の費用など、さまざまなお金がかかります。ただ一方で、親族が亡くなった後にもらえるお金もあることをご存知でしょうか。いずれも、手続きしないでいるともらえなかったり、戻ってこなかったりするお金です。悲しみや忙しさがあることはわかりますが、忘れずに手続きしましょう。
今回は、親族が亡くなった後に手続きをすることでもらえる5つのお金を紹介します。
親族が亡くなった後にもらえるお金1:遺族年金(遺族基礎年金・遺族厚生年金)
年金というと、老後にもらうもの(老齢基礎年金・老齢厚生年金)を連想されるでしょう。しかし年金には、国民年金や厚生年金に加入していた人が亡くなったときに、残された家族がもらえる遺族年金もあります。
遺族年金には、国民年金から受け取れる「遺族基礎年金」と厚生年金から受け取れる「遺族厚生年金」の2種類があり、どちらがもらえるか(あるいは両方もらえるか)は亡くなった人の年金の加入状況などによって異なります。
<遺族基礎年金と遺族厚生年金>
遺族基礎年金は「子のいない配偶者」はもらえません。また、支給されるのも原則として子が18歳の年度末を迎えるまでになっています。それに対して遺族厚生年金には優先順位が定められており、より高位の人が受け取れる仕組みになっています。したがって、子のある配偶者や子の場合は、条件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金の両方がもらえますが、その他の人は遺族厚生年金だけとなります。
遺族基礎年金の金額は一律で、年度により多少前後があります。また、子の人数によっても金額が変わります。一方、遺族厚生年金の金額は、亡くなられた人の老齢厚生年金の報酬比例部分の3/4。65歳以上の場合は、亡くなった人と自身の老齢厚生年金を1/2ずつ足した合計と比較して、高い方の金額となります。
制度を比較すると、遺族厚生年金は妻のほうが優遇されていることがわかります。配偶者を亡くした妻は何歳でももらえる(30歳以上なら終身でもらえる)のに対し、配偶者を亡くした夫は55歳にならないと受給権すらなく、もらえるのも60歳からだからです。また、子のない妻が40歳〜64歳の間にもらえる「中高齢寡婦加算」も、子のない夫にはない年金です。
しかし報道によれば、こうした遺族厚生年金の男女差をなくすことが検討されているとのこと。具体的には、20代から50代の配偶者が受け取る遺族厚生年金を男女とも5年の有期給付にする案が出ています。また、5年間の年金額を現行制度よりも増やすことや、40歳〜64歳の子のない妻が夫を亡くした場合にもらえる「中高齢寡婦加算」を廃止にすることも検討されています。
遺族厚生年金の制度は「会社員の夫と専業主婦の妻」という世帯を想定して作られたものです。しかし、今は女性の社会進出が進み、共働き世帯のほうがずっと多くなっています。そこで遺族厚生年金の制度も、そうした変化に合わせて変えようとしているのです。
もっとも、女性の社会進出が進んだといっても、男女の就労環境には差があります。急に制度が変わってしまったら、不利益を被る人も出てくるかもしれません。そこで、妻の受給期間の短縮は段階的に行うことや、すでに遺族厚生年金をもらっている人は制度改正の対象外とすることも示されています。
これらの変更はまだ決定ではありませんが、今後の報道にも注目しましょう。
親族が亡くなった後にもらえるお金2:寡婦年金・死亡一時金
亡くなった方が自営業やフリーランスといった国民年金の第1号被保険者だった場合には、「寡婦年金」や「死亡一時金」がもらえないかを確認しましょう。
寡婦年金
国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)として、保険料納付済み期間が10年以上ある夫が65歳前に老齢基礎年金・障害基礎年金をもらわずに亡くなった場合にもらえる年金です。対象は、亡くなった夫に生計を維持され、10年以上婚姻関係のあった妻。60歳から65歳になるまでの間受け取ることができます。寡婦年金の額は、亡くなった夫がもらえるはずだった老齢基礎年金額の4分の3です。夫が亡くなってから5年以内に手続きが必要です。
死亡一時金
国民年金の第1号被保険者(任意加入被保険者を含む)としての期間が36月(3年)以上ある人が亡くなった場合に遺族がもらえる一時金です。死亡一時金の金額は12万円〜32万円で、保険料納付月数により変わります。
<死亡一時金の金額>
また、付加保険料を36月以上支払っている場合は、8,500円が加算されます。寡婦年金とは違い、死亡一時金は対象の人が亡くなってから2年以内に手続きが必要です。
なお、寡婦年金と死亡一時金は、どちらか片方しかもらえません。年金事務所などでどちらが多いかを確認したうえで手続きしましょう。
親族が亡くなった後にもらえるお金3:未支給年金
未支給年金とは、亡くなった方がもらえるはずだった、まだ受け取っていない年金のことです。未支給年金は、年金をすでに受け取っている方が亡くなったときにも、必ず発生します。なぜなら、公的年金は常に後払いだからです。
年金は偶数月の原則15日に支給されます。たとえば、4月15日に支給される年金は、2月と3月の2か月分です。そのため、年金を受け取っている人が亡くなったときは、必ず未支給年金が発生します。亡くなったタイミングによって1か月分の場合も、3か月分の場合もあります。
また、未支給年金は年金を繰り下げ待機して受け取っていない人が亡くなった場合も発生します。この場合、65歳以降にもらうはずだった未支給年金を遺族がもらえます。ただし、年金は繰り下げることで1か月あたり0.7%増やすことができますが、未支給年金は繰り下げ受給の対象外。そのうえ、年金には5年の時効があります。たとえば、75歳まで繰り下げ待機した人が亡くなった場合、遺族がもらえる未支給年金は「亡くなった人が65歳からもらう予定の年金額×5年分」となります。
親族が亡くなった後にもらえるお金4:葬祭費・埋葬料(埋葬費)
葬祭や埋葬を行った人に対しては、亡くなった人が加入していた公的医療保険から給付金が支給されます。
葬祭費
国民健康保険や後期高齢者医療制度の被保険者が亡くなった場合には、葬祭を行った人(喪主)に「葬祭費」が支給されます。金額は自治体によって異なりますが、3~7万円となっています。
埋葬料・埋葬費
健康保険に加入している会社員などが亡くなったとき、亡くなった人に生計を維持されて、埋葬をする人には埋葬料(5万円)が支給されます。埋葬料を受けられる人がいない場合は埋葬費として実際にかかった費用が上限5万円の範囲内で支給されます。また、被扶養者を亡くした被保険者には家族埋葬料(5万円)が支給されます。
親族が亡くなった後にもらえるお金5:高額療養費・高額介護サービス費・介護保険料
高額療養費制度を利用すれば、毎月の医療費のうち限度額を超えた分は払い戻しが受けられます。また、高額介護サービス費も同様に、毎月の介護費用の合計額が負担限度額を超えた場合に払い戻しが受けられる制度です。これらの費用のうち、亡くなった人に対する未支給分は相続人による請求が可能です。
また介護保険料は、亡くなった前月までの月割りで再計算し、納付する必要があります。再計算の結果、納めすぎがあった場合には還付を受けることができます。年金受給者の場合、年金からの特別徴収が停止するまで2か月程度かかるため、亡くなった後に振り込まれる年金から介護保険料が徴収されることがあります。この場合も、介護保険料が納めすぎになっていれば還付が受けられます。自治体から届く還付通知書で手続きを行いましょう。
大変な時期ではあるけれど、もれなく手続きしましょう
手続きしなければもらえない、親族が亡くなった後にもらえる5つのお金を紹介してきました。親族の訃報に接して、大変なときではありますが、何かとお金がかかるときだからこそ、必要な手続きは漏れなく行い、もらえるお金はもらって活用し、生活を立て直していきましょう。
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