法定相続情報一覧図とは? 取得するメリット・デメリットも紹介
相続が発生した際に、法定相続情報一覧図があると便利ということを聞いたものの、具体的に法定相続情報一覧図とは何かわからない人も多いでしょう。法定相続情報一覧図の詳細や、取得するメリット・デメリットなどについて解説します。
法定相続情報一覧図とは
法定相続情報一覧図とは、被相続人の相続関係を証明する証明書です。法務局の認証印が押されているため、相続関係を証明する正式な書類として使用可能です。
次に法定相続情報一覧図を発行する際にかかる費用、発行できる人、発行にかかる時間について詳しく説明します。
発行にかかる費用
法定相続情報一覧図は法務局により発行されますが、発行自体に費用はかかりません。しかし必要書類を手配するのには費用がかかります。
例えば以下のような書類の手配が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本または抄本
戸籍謄本や抄本は450円、住民票の除票は300円の手数料がかかります。
発行できる人
法定相続情報一覧図は、誰でも発行できるわけではありません。発行できるのは、被相続人の相続人に限られます。
では、相続人が忙しくて自ら発行できない場合はどうすればいいのでしょうか。自ら発行できないケースでは、代理人に依頼することも可能です。以下の条件を満たす人は委任が認められています。
- 法定代理人
- 民法上の親族
- 資格者代理人
法定代理人とは、法律で定められた代理人です。親権者や未成年後見人、成年後見人などが該当します。資格者代理人とは、弁護士や司法書士などです。誰でも代理人になれるわけではないので、注意しましょう。
発行にかかる時間
法定相続情報一覧図は、申請すれば法務局ですぐに発行してもらえるわけではありません。発行には1~2週間程度の日数がかかります。
法務局の混み具合によっては1週間以内に受け取れる場合もありますが、最長で2週間程度は時間を要するものだと考えて、逆算して手続きに取りかかりましょう。
法定相続情報一覧図を取得するメリット・デメリット
法定相続情報一覧図が相続関係を証明する証明書であることはわかったものの、取得することにどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか? 法定相続情報一覧図を取得するメリット・デメリットについて詳しく説明します。
メリット
法定相続情報一覧図は相続関係を証明する資料となるため、相続の際に提出が求められる書類を、法定相続情報一覧図で代用することが可能です。
相続時には、以下のような手続きの際に各種相続関係を証明する書類の提出が求められます。
- 不動産の所有権移転登記
- 被相続人名義の預金の払い戻し
- 株式や債券などの有価証券の名義変更
- 相続税の申告
すべての相続手続きにおいて法定相続情報一覧図で代用できるわけではありませんが、代用できるケースでは、書類を手配する手間や費用の負担を軽減できるでしょう。
デメリット
法定相続情報一覧図を取得することに、特に大きなデメリットはありません。デメリットをあえて取り上げるのであれば、法定相続情報一覧図を取得する際に必要な、戸籍謄本といった書類の手配に時間と費用がかかるという点です。
また、すべての相続手続きで法定相続情報一覧図を利用できるわけではないため、用意しても利用する場面がなかったということがないように、事前に確認してから取得しましょう。
法定相続情報証明制度の手続き
かつて各種の相続手続きでは、被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本といった各種書類を複数の窓口に、何度も提出しなくてはなりませんでした。そこで相続人の負担を少しでも軽減するために登場したのが、法定相続情報証明制度です。
法定相続情報証明制度とは、法務局(登記所)に戸籍謄本などの必要書類に加え、法定相続情報一覧図を提出すれば、登記官が法定相続情報一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれる制度です。一度申告すれば5年間は再発行できるため、相続手続きの負担を軽減できます。
法定相続情報証明制度の手続きの各ステップについて、詳しく見ていきましょう。
必要書類の準備
法定相続情報証明制度の手続きには、以下を準備しなくてはなりません。
- 被相続人の戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人の戸籍謄本または抄本
- 申出人の氏名・住所を確認できる公的書類
申出人の氏名・住所を確認できる公的書類は、運転免許証の裏表のコピー、マイナンバーカードの表面のコピーなどがあります。ほかにも、各相続人の住民票の写し、委任状などが状況に応じて必要になります。
法定相続情報一覧図の作成
法定相続情報一覧図は登記官が作成するのではなく、申出人である相続人が作成しなければなりません。準備した戸籍の記載から判明する相続人を一覧図にします。
どのような図を作成すればいいかわからない人は、以下のページを参考にしましょう。相続人の構成の違いによりさまざまなパターンに分けて、様式と記載例が掲載されています。
申請書の作成・申出
必要書類と作成した法定相続情報一覧図を、法務局(登記所)の窓口に提出または郵送により提出します。
完成した法定相続情報一覧図の写しの郵送を希望する場合には、申出書にその旨を記載するだけでなく、返信用封筒、郵便切手を同封しなくてはなりません。
申出後の法定相続情報一覧図の写しを窓口で受け取る場合は、運転免許証といった本人確認書類が必要です。
また、どこの法務局でもよいわけではなく、以下のいずれかに限られます。
- 被相続人の本籍地
- 被相続人の最後の住所地
- 申出人の住所地
- 被相続人名義の不動産の所在地
上記以外の法務局では手続きできないので注意しましょう。
法定相続情報一覧図が必要な人と不要な人の条件
法定相続情報一覧図は、相続が発生した場合に必ず必要というわけではありません。
不要な場合もあるため、無駄な手間と費用を省くためにも、本当に必要なのか把握してから手続きに進むことが大切です。
法定相続情報一覧図が必要な人
法定相続情報一覧図が必要なのは、上述したように相続発生時に以下のような手続きを行う人です。
- 不動産の所有権移転登記
- 被相続人名義の預金の払い戻し
- 株式や債券などの有価証券の名義変更
- 相続税の申告
法定相続情報一覧図を作成しておくことで、手続きのたびに書類を準備する手間や費用を省けるでしょう。
法定相続情報一覧図が不要な人
不動産の所有権移転登記や相続税の申告が必要ない人などは、法定相続情報一覧図を作成する必要がありません。具体的には以下のような人たちです。
- 相続放棄した人
- 相続欠格者
- 相続廃除された人
- 相続税の申告が不要な人
法定相続情報一覧図の提出が求められる手続きをしない人は、作成しても意味がないので本当に必要かどうかをよく考えてから作成しましょう。
相続は事前にしっかり準備しておくことが大切
相続が発生した場合、ほとんどの相続人は何らかの相続手続きを行うことになります。法定相続情報一覧図を作成すれば、手続きごとに書類を準備する手間と費用を省けるので、相続手続きをスムーズに行いやすく便利です。
ただし、すべての相続人にとって法定相続情報一覧図が必要というわけではありません。相続欠格者や相続放棄をした人には法定相続情報一覧図は基本的に必要ないので、本当に必要か確認してから作成しましょう。
法定相続情報一覧図の発行には約1~2週間の時間がかかるため、不備がないように事前準備や逆算をしてから手続きを行いましょう。
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