マンション売却の際にエアコンは残してもいい? 撤去すべき?
マンションを売却するとき、これまで使っていた電化製品などはどのように扱えばいいのでしょうか。特にエアコンは、撤去する場合は工事費用がかかることなどから、判断に迷ってしまいます。
物件を引き渡す前に撤去すべきなのか、それともマンションの設備として置いていくべきなのか、いったいどちらが正解なのでしょうか。今回は、マンション売却時におけるエアコンの対処について紹介します。
売却するマンションにエアコンは含まれない
マンションを売却するときに、売買対象となるのは、土地と建物の専有部分です。トイレやユニットバス、キッチンなどの主要な設備もマンションの一部分として扱われます。対して、マンションに含まれないのは「付帯設備」とよばれる照明器具や、テレビの衛星アンテナなどです。エアコンは室内に設置されているとはいえ、比較的容易に取り外しが可能であるため、付帯設備として扱われます。
つまり、売却するマンションにエアコンは含まれないので、売却時にはエアコンを撤去するのが基本です。中古不動産の取引は、「残置物をすべて撤去した状態での引き渡しが原則」のため、エアコンおよび室外機もきれいに撤去しておくケースが多いです。
マンション売却にあたって不動産会社が価格査定をする際にも、エアコンが査定の対象になることは基本的にありません。仮に、買ったばかりの新しい機種であっても査定に影響しないといわれています。例えば、マンションを購入した買主は自分で選んだエアコンを設置したいのに、前の住人のエアコンが残っていては困ってしまいます。その場合、エアコンが「残置物」として扱われ、売買契約後に買主から撤去を求められる可能性もあるのです。
エアコンを残すか撤去するかは「当事者間の合意」次第
マンションを売却するときに、エアコンを残すか、撤去するか、という明確な決まりはありません。
もしエアコンを転居先に持って行く場合は、撤去してからマンションを引き渡せば問題ありません。しかし、逆に「転居先の部屋の大きさが異なる」などの理由で買い替える場合、エアコンの処分には費用がかかるため、「できれば置いていきたい」と考えることもあるのではないでしょうか。
先述の通り、一般的な不動産売買では物件の引渡し日までに残置物を撤去するのが原則です。ただし、エアコンの残置物について買主が同意をしていればこの限りではありません。例えば、買主に「エアコンを置いていってもらえるなら、そのまま使いたい」という意向があり、売主買主間で合意をしたうえでエアコン残置についての「合意書」や「覚書」などを作成していれば、あとからトラブルになるリスクも回避できます。
そのため、エアコンを売却対象に含めるか否かは、売主と買主との間で「売買契約締結前」に決めておくのが最も望ましいといえます。
残す場合、撤去する場合、それぞれの注意点は
マンション売却時にエアコンを残す場合、または撤去する場合には、以下のような注意点があります。
エアコンを残す場合の注意点
付帯設備表に記載する
買主との話し合いの結果、エアコンをマンションに残す場合はそのことを付帯設備表に記載します。付帯設備表とは、エアコンを含む空調設備、キッチンや洗面所の設備、浴室設備、リビングや廊下、カーテンレールなどの室内設備などについて、故障・不具合の有無や動作状況について記載している書類のこと。この付帯設備表は、売主がわかる範囲で記入し、マンションの売買契約締結までに買主へ交付するのが一般的です。
もし、残す予定のエアコンに動作不良などがある場合は、後々のトラブル防止のため付帯設備表に明確に記載しておきましょう。ただし、動作不良(不具合や故障)について記載されていれば、買主がそのまま買い受ける可能性は低いです。契約後のトラブルを防ぐためにも、設備の不具合があれば正直に買主へ申告する必要があります。また、もし買主から、設備の修理または撤去を求められた場合は対応しなければならない場合がありますが、あらかじめ合意書や覚書による取り決めがあれば、その内容に従います。
「契約不適合責任」の規定
エアコンを残すということは、“中古の家電”を置いていくということです。引渡し時には問題なくても、あとで故障する可能性があります。
これまでは、中古マンションを売買する際、売買の対象物に隠れた瑕疵(キズや欠陥など)がある場合は原則として売主が買主に対してその責任を負わなければなりませんでした。これを「瑕疵担保責任」といいます。
ところが、2020年4月から改正民法が施行され、「瑕疵担保責任」は、「契約不適合責任」へと変更されました。これまでは、「隠れた瑕疵」に対してのみ買主が責任を追及できていましたが、これからは、引き渡された物件が「契約の内容に適合しているか」が問題となります。例えば、不動産売買により引き渡されたマンションの「浴室設備が故障している」、というような契約の内容に適合しない場合には、「売主が修繕費用を負担する」などの責任を負うことになります。
マンション売却時にエアコンを残すときは、あらかじめ買主と協議をした上で「合意書」または「覚書」を作成し、後々のトラブルを未然に防ぐ対策をとっておくことをおすすめします。また、個人同士の売買や、法人(宅地建物取引業者ではない)対個人の取引の場合は、「売主の契約不適合責任を免責する」とし、売買契約書にその旨を記載することもできます。
このとき、もし売主が「契約不適合」を知りながらこのことを告げずに売買契約を締結した場合は、免責されません。上の例でいくと、売主は浴室設備の故障を知っていたのに買主へ申告せず黙っていたときは、契約不適合責任を負う場合があります。そのため、売買契約時には「契約不適合」となることを隠すことは厳禁です。
エアコンを撤去する場合の注意点
エアコンを撤去する場合に注意したいのが、売買契約を締結するまでエアコンを外さないということ。内覧時にエアコンがないと、夏は暑く、冬は寒い中で内覧を行わなければならず、部屋をゆっくりと見学することができません。その結果、売買に影響が出る可能性もあります。購入予定者の印象も変わってくるので、マンションを売却している最中はエアコンをそのまま設置しておくことをおすすめします。
より良い条件でマンションを売却するためにも、エアコンを撤去するタイミングには注意が必要です。
基本は「撤去」。残す場合は売買時に十分な注意を
一般的な不動産売買では、売却するマンションにエアコンは含まれませんが、だからといって必ず撤去しなければならない、というものではありません。エアコンに関する決まりはないので、売主買主の当事者間で協議をしたうえで取り決めをするとよいでしょう。
ただし、中古不動産の「現況渡し(現況のまま引き渡す)」の場合、残置物は「原則撤去」です。もし、エアコンを残す場合は“中古の家電”を渡すということでもあります。マンション売却後のトラブルを防ぐため、付帯設備表にエアコンの動作状況を明記する、エアコンの残置について買主が同意した場合は合意書や覚書を作って残しておくなど、十分に注意しながら売買を進めましょう。
なお、契約不適合責任については、個人間の取引では自由にその内容を取り決めることができるため、どういう内容にするかは専門家である不動産仲介会社へ相談するとよいでしょう。基本的には、不動産協会や宅地建物取引業協会の雛型が存在しますが、売主買主間で調整することができます。
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