【要注意】マンション売却時に知っておくべき「3,000万円の特別控除」とは?
マンション売却の際、発生した利益に対して税金がかかります。この税金により手元に残る金額が大きく減ってしまうのでは、と心配な方も多いのではないでしょうか。実は不動産を売却するときは特別控除の適用が認められています。特別控除を受けることで、税金が0円になるケースもあるでしょう。
ただし特別控除を受けるためには条件があります。そこで今回は、マンション売却の際に適用される「3,000万円の特別控除」について詳しく解説します。
マンションを売却して利益が出ると譲渡所得税が発生する
譲渡所得税とは
所有しているマンションを譲渡して得た利益を「譲渡所得」といいます。この譲渡所得に対して課せられる税金を「譲渡所得税」とよぶことがあります。しかしこの名称は正式なものではなく、税法上はあくまで「所得税」「住民税」「復興特別所得税」の3種類です。
譲渡所得税の税率
「譲渡所得税」を算出するときは、まずは元となる譲渡所得を計算する必要があります。計算方法は以下の通りです。
取得費用とは、マンション取得時の物件価格や、取得時の仲介手数料などの諸費用、減価償却費を引いた費用です。譲渡費用とはマンション売却時に発生した費用になります。マンションを売却した金額(譲渡収入)から、取得費用と譲渡費用を差し引くことで、譲渡所得は計算されるというわけです。
その譲渡所得に対して課せられる「譲渡所得税」は、通常の所得税、住民税と税率が異なるので注意しましょう。以下より解説していきます。
所得税
譲渡所得が発生したときにかかる所得税は、マンションの所有期間により税率が異なります。マンションを5年超所有していた場合(長期所有)は15%、5年以下の場合(短期所有)は30%です。なお所有期間は、マンションを売却した年の1月1日時点の所有期間なので、その点には注意しましょう。
住民税
住民税も所得税と同様、マンションの所有期間により税率が異なります。マンションを5年超所有していた場合(長期所有)の税率は5%、5年以下の場合(短期所有)は9%の税率です。また令和19年(2037年)12月31日までは、東日本大震災の復興財源を確保するための「復興特別所得税」がかかります。税額は所得税額の2.1%です。
所得税、住民税、復興特別所得税の税率の一覧は以下の通りです。
項目 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得(所有期間5年以下) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得(所有期間5年超) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
参考までに、その他税金も紹介します。以下の税金は譲渡所得額に関係なく発生します。
登録免許税
マンション売却の際に住宅ローンが残っていれば完済する必要があります。そのときには抵当権抹消登記をする必要があり、登録免許税を納めなくてはなりません。登録免許税は「不動産の数×1,000円」です。また税金とは別に、司法書士への報酬(1万~5万円程度)も必要です。
印紙税
マンションを売却する際、買主との間で取り交わす不動産売買契約書に収入印紙を貼付する必要があります。収入印紙の金額(=印紙税)は、契約書に記載された不動産の売買金額によって異なります。
仲介手数料等にかかる消費税
仲介手数料には消費税がかかります。また登記手続きを依頼する司法書士への報酬にも消費税がかかります。
マンション売却の節税につながる3,000万円の特別控除とは
3,000万円の特別控除とは
自己居住用のマンションを売却して譲渡所得が発生した場合、最高3,000万円の控除を受けられる特例があります。つまり譲渡所得(≒マンションの売却益)が3,000万円以下であれば、譲渡所得が0円になり税金もかからないということです。
3,000万円の特別控除を利用できても、3,000万円を超える金額に対しては「譲渡所得税」がかかります。仮に譲渡所得が3,500万円であれば、500万円(3,500万円-3,000万円)に対して上述した税率が課せられます。
なお、この特例には以下のような条件が設けられています。
- 自己居住用として居住している住宅の売却である
- 「3,000万円特別控除」「買換えの特例」「繰越控除」などの適用を、売却した年を含め過去2年間で受けていないこと
- 売主と買主が親子や夫婦など特別な関係でないこと など
また以下のような場合には特例が適用されないので注意しましょう。
- 3,000万円の控除を受けることを目的とした一時的な入居
- 自宅を建て替えるときなどの一時的な仮住まい
- 趣味や娯楽のために所有する別荘 など
3,000万円の特別控除の計算方法
以下のケースを例に、3,000万円の特別控除を計算してみましょう。
- マンションの譲渡収入:5,000万円
- マンションの取得費用:3,500万円
- マンションの譲渡費用:300万円
課税対象となる譲渡所得を先ほどの計算式に当てはめてみます。
この場合は譲渡所得が1,200万円となり、3,000万円に達していません。したがって、控除される額は1,200万円となり、課税対象となる譲渡所得は0円となります。この場合、「譲渡所得税」は発生しません。
このとき、もし3,000万円の特別控除がなかったとすると、譲渡所得の1,200万円に対して「譲渡所得税」がかかり、税額は243万7,800円となります。
※1 税率は長期譲渡所得(所有期間5年超)のときの20.315%としています
3,000万円の特別控除があることで、「譲渡所得税」を抑えられていることがわかるでしょう。
※2 適用される特別控除は3,000万円のうち1,200万円となります
これを一覧にすると以下の通りです。
項目 | 特別控除なし | 特別控除あり |
---|---|---|
譲渡収入 | 5,000万円 | 5,000万円 |
取得費 | -3,500万円 | -3,500万円 |
譲渡費用 | -300万円 | -300万円 |
譲渡所得 | 1,200万円 | 1,200万円 |
特別控除※2 | 0円 | -1,200万円 |
譲渡所得税※1 | 243万7,800円 | 0円 |
そのほか利用できる特別控除・特例は
「3,000万円特別控除」以外にも、マンションの売却時に利用できる特別控除・特例があります。
10年超所有の軽減税率の特例
売却するマンションを10年超所有していた場合、軽減税率が適用されます。これは上述した長期譲渡所得のときより低い税率になる特例のことです。この特例は「3,000万円の特別控除」と併用可能なので、ぜひとも覚えておきましょう。
具体的には、譲渡所得が6,000万円以下の部分に対して課せられる所得税が10%、住民税が4%となります(6,000万円を超える部分はそれぞれ変わらず15%、5%です)。
表にすると以下の通り。
譲渡所得6,000万円以下の部分 | 譲渡所得6,000万円超の部分 | |
---|---|---|
所得税 | 10% | 15% |
住民税 | 4% | 5% |
復興特別所得税 | 0.21% | 0.315% |
合計 | 14.21% | 20.315% |
特定居住用財産の買換え特例
マンションを買い換える際、売却価格よりも高い金額の住宅に買い換えた場合は、譲渡所得への課税が繰り延べられます。
例えば、4,000万円で購入したマンションを5,000万円で売却し、7,000万円のマンションに買い換えたとします。
このときは、1,000万円(5,000万円-4,000万円※)の譲渡所得が課税対象となりますが、この特例を使うと、今回は課税されずに次回このマンションを売却したときに課税されます。
※説明のために取得費用などは省いています
ただ非課税となるわけでなく、あくまで「繰り延べ」であることに注意が必要です。この特例は「3,000万円の特別控除」との併用はできません。
マンション売却時に特別控除を受けるための手続きや確定申告について
「3,000万円の特別控除」を受けるためには、確定申告が必要です。譲渡所得が発生した翌年に確定申告を行います。
適用を受けるためには、確定申告書(「確定申告書B」の様式)のほかに、「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]」が必要となります。
そのほか、以下のような書類が必要です。
- 売却したマンションの売買契約書
- 売却したマンションを購入したときの売買契約書
- 仲介手数料や登記費用などマンション取得時の費用の領収書
- 仲介手数料や登記費用などマンション売却時の費用の領収書
- 住民票の写し
※売買契約書と領収書は「写し」でも可
なお、譲渡契約締結日の前日において、住民票記載の住所と売却した居住用財産の所在地とが異なる場合は、戸籍の附票の写しなどが必要です。
ただ国税庁の「確定申告等 作成コーナー」を利用すれば、わざわざ税務署で書類を取得する必要はありません。計算も自動なので、このサイトを利用した方が書類作成は楽でしょう。
マンション売却後に特別控除を受けるなら確定申告しよう
マンションを売却する際には「3,000万円の特別控除」をはじめとした特例を有効に活用することで、節税につなげられます。ただ特例を受けるための条件があったり、その他特例との併用ができなかったりするので、その点はよく確認しましょう。
またこれらの控除、特例を使うためには確定申告が必須です。節税のためにも、確定申告についての理解を深めることをおすすめします。
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