この記事を書いた人 RENOSYマガジン編集部
マンション購入後に毎月支払わなければならない費用に「修繕積立金」と「管理費」があります。これらはマンションを所有している間、ずっと払い続けなければならないものです。ではマンションを売却する場合、それまでに積み立てた修繕積立金や管理費は、賃貸マンションの敷金のように、一部でも戻ってくることはあるのでしょうか。
結論から言うと、マンションを売却しても修繕積立金や管理費は返金されません。また滞納している状態で売却すると、次の所有者(買主)に滞納分は引き継がれてしまいます。本記事では、マンション売却時の修繕積立金や管理費の扱いや注意点に関して詳しく解説していきます。
CONTENTS目次
まずは修繕積立金と管理費の概要を知っておきましょう。概要を知っておくことで、修繕積立金と管理費がマンション売却時に返金されない理由もわかります。
修繕積立金とは、その名の通り「マンションを修繕するために積み立てるお金」のことです。
マンションに限らず、建物は住み続けるうちに劣化するため、定期的な改修工事が必要となります。しかし一度の改修工事にかかる費用は、数百万円単位の大きな金額で、すぐに準備できるものではありません。
そのためマンションの管理組合は、長期修繕計画を作成します。それに従って、10年先、20年先の修繕に備えて毎月積み立てていくお金が修繕積立金です。
主な使い道は以下の通り。
管理費はマンションの敷地内や共用部分を維持管理するための費用で、管理人がいれば管理人に支払う人件費も含まれます。修繕積立金と同様に毎月支払う費用です。
マンションは快適な住環境を保つために定期的なメンテナンスが必要です。特に、共用部分を点検したり、敷地内を清潔に保ったりすることは、マンションの価値を維持するために重要なことです。
管理費の具体的な使い道は以下の通り。
マンションの修繕積立金・管理費は、マンションの所有者すべてに支払い義務があります。しかし所有者全員が同一額ではありません。
というのもマンションは土地や建物を共同で所有しているという扱いなので、それぞれ持分割合が決まっているからです。その持分割合に応じて修繕積立金と管理費の金額は決まっています。持分割合は所有している部屋の広さによって決まるので、部屋が広いほど修繕積立金と管理費も高くなる仕組みです。
ちなみに、マンション標準管理規約の第25条第1項では以下のように定められています。
区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるため、次の費用(以下「管理費等」という。)を管理組合に納入しなければならない。
一 管理費
二 修繕積立金
このようにマンション管理規約で決まっているため、マンションの所有者は修繕積立金・管理費を必ず払わなければなりません。
冒頭でお伝えしたように、修繕積立金と管理費はマンション売却時に返金されません。この章では返金されない理由と、清算するケースについて解説していきます。
修繕積立金と管理費が返金されない理由は、返金されたらほかの入居者にとって大きなデメリットになるからです。マンションの入居者が日々快適に過ごすために管理費は使われるので、返金されなくても納得できる人は多いでしょう。
しかし住んでいる間に必ずしも大規模修繕が行われるとも限らないため、月々支払っている修繕積立金が「使われない」状態でマンションを退去する可能性もあります。この点に不満を持つ人もいるかもしれません。
ただ修繕積立金は将来マンションを修繕するために積み立てているので、そのお金を返金するということは修繕計画が狂ってしまうのです。だから修繕積立金は返金されず、このことはマンションの管理組合が定めた管理規約にも明記されています。
修繕積立金・管理費ともに、マンションを安定して運営するために必要な管理組合の財産です。そのため所有者がマンションを売却するたびに返金していては、マンションの安定運営など望めず、結果的にマンションの価値が下がることにもつながります。
あまり多いケースではありませんが、修繕積立金や管理費は売主と買主で清算することがあります。というのも修繕積立金・管理費ともに前月に支払っているので、引き渡し月は売主が1カ月分の費用を支払っているからです。つまり売主が買主の負担分まで支払っているため、その費用を日割で清算することがあります。
ただ修繕積立金・管理費を清算するかどうかは、仲介を担当する不動産会社によって異なります。清算するのはあまり多いケースではないものの、不動産会社へ一度相談してみるとよいでしょう。
事情があって修繕積立金・管理費を滞納している場合があるかもしれません。滞納している場合でも、マンションを売却すること自体は可能ですが、その滞納分は買主が引き継ぐことになってしまいます。
というのも「建物の区分所有等に関する法律」(区分所有法)第8条において、「債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」と定められているからです。
ただし買主(新たな所有者)が滞納分をいったん支払い、売主(前所有者)に後日請求したという事例もあります。滞納した状態でマンションを売却するのはリスクが高いです。
滞納による債権(≒支払い義務)が新しい所有者に移るからといって、マンション売却時に修繕積立金・管理費を滞納している事実を隠すのはNG。宅地建物取引業法(宅建業法)で告知は義務付けられているからです。
また、修繕積立金や管理費の滞納はマンションの査定項目のひとつであり、滞納しているとマンションの査定額も下がります。
不動産会社によっては、修繕積立金や管理費を滞納しているマンションの仲介を行わない会社もあるほどです。滞納した結果、希望の条件での売却が難しくなるどころか、売却そのものができなくなる恐れもあります。
修繕積立金や管理費の滞納は売却時に決してプラスにならず、トラブルの原因にもなりますので、滞納することなくしっかりと支払いましょう。
修繕積立金、管理費ともに、マンションで快適に暮らすために必要なものです。マンションを売却したからといって、これらの費用が返金されるわけではない点をまずは認識しておきましょう。
また修繕積立金や管理費の支払い状況は、売却時の査定にも影響します。マンション標準管理規約にも必ず支払わなければならない旨が定められているので、滞納することなく毎月きちんと支払うのが賢明です。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
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