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民法改正で、住まい方はどう変わるのか? 家の賃貸から売買に関するルール見直し(パート1)

2020.04.03

民法改正で、住まい方はどう変わるのか? 家の賃貸から売買に関するルール見直し(パート1)

この記事を書いた人 RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。
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民法(債権関係の規定)が約120年ぶりに改正し、2020年4月1日から施行となりました。それに伴い、私たちを取り巻く不動産取引(家の売買及び賃貸借の契約)について、基本的なルールが変更されました。具体的にどの点が変わったのか、見ていきましょう。

民法改正の趣旨

上述のとおり、民法(債権関係の規定)は、明治29年(1896年)に制定された後、約120年間ほとんど改正がなされていませんでした。

この間、我が国の社会そして経済情勢は、取引内容の複雑化・高度化、情報伝達手段の発展など、さまざまな面で大きく変化してきました。

そのため、取引に関する最も基本的なルールを定める民法の規定を、社会と経済情勢の変化に即した内容に対応させる必要があると考えられてきました。

また、基本的なルールの中には、民法に明文化されていないルールも多数存在しています。これらは蓄積された裁判所の判例・裁判例(判例法理のことをいい、以下「裁判例等」といいます)を通じてルール化されてきました。

そのため、法律の専門家でない私たち国民にとって、基本的なルールが分かりにくい状態となっていました。

そこで、以下の目的の下、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である民法のなかでも、特に「契約」に関する規定に大幅な改正がなされました。

  • 社会と経済の変化への対応を図るため
  • 民法を国民に分かりやすいものとするために、実務で運用されている基本的なルールの明文化を行うため

改正の項目は、小さなものまで含めると合計200程度ありますが、主な改正項目のうち、不動産取引(売買契約・賃貸借契約)に関連する改正についてご紹介いたします。詳細については、以下をご一読ください。

参照:法務省:民法の一部を改正する法律(債権法改正)について

不動産取引における改正点

不動産取引(不動産賃貸、売買)の場面で、民法改正がどのように影響するのか具体的にみていきましょう。

まずは不動産取引全般に関連する改正内容を解説します。

契約自由の原則の明文化

民法を学習すると、まっさきに原則として登場するのが「契約自由の原則」です。

契約するかしないか、誰と、どのような内容の契約を締結するか、当事者の自由意志によって決定されるという原則です。

これまでの民法(現行民法)にはこの大原則が明文化されていませんでした。これが改正民法では明文化されています(第521条)。

契約自由といっても、従来通り、民法に規定されている公序良俗に反する(第90条)ことや、強行規定(公の秩序に関する規定)に反する合意は、無効とされます。

これまでも各種契約はこの「契約自由の原則」に則って締結されており、明文化されることによって実情に大きな影響はないものの、改めてこの大原則が民法に明文化されたことの意義はあるといえます。

契約解除の要件としては、債務者の帰責事由が不要に

現行民法では、債権者が契約を解除できる場面は、債務不履行(約束を守らない)でかつ債務者に帰責事由(責任があること)が必要とされていました。

一方、改正民法では、「解除」は「契約に拘束することが不当である場合に、契約の拘束力から当事者を離脱させること」のために、債務者の責めに帰すべき事由とは切り離すこととしました。

そのため、「債務者の帰責事由」が必ずしも「解除」するために必要ではなくなっています。

債務不履行が生じた場合は、債務者の帰責事由の有無に関わらず、「当事者の一方がその債務を履行しない場合」に契約を解除することができるようになります。

帰責事由があるのはもちろんのこと、当事者のいずれにも責任がない場合であっても契約の解除が可能となることが明文化されました。

なお、債務不履行が「契約の内容や取引上の社会通念に照らして軽微である」ときは契約解除できない旨も明文化されています。

催告期間が経過した時の債務不履行の部分が数量的に僅かである場合や付随的な債務不履行にすぎない場合、催告解除が認められないことが改正民法第541条但書に明文化されました。

賃貸借契約における変更点

次に、不動産賃貸に与える影響をみていきましょう。

敷金について

家を借りようとするとき、賃貸借では、一般的に契約時に敷金として一定額を賃貸人に預ける場合があります。

現行民法には敷金に関する明確な規定はありませんでした。そのためその解釈は判例等に委ねられていたのです。改めてこの事実を知ると驚かれるかもしれません。

これまで、「敷金」というものは、一体「何なのか」「いつ返還する(される)ものなのか」明確な規定がなかったため、これをめぐってトラブルになることもありました。

そこで改正民法では、敷金についてわかりやすいものにするという観点から、これまでの判例法理を明文化して次のように定義しました(622条の2 第1項)。

敷金=(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。)

敷金の返還時期は「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」「賃借人が適法に賃借権を譲渡したとき」としました。

また返還の範囲を「敷金の額から(略)債務の額を控除した残額を返還しなければならない」と規定しました。

改正民法で敷金については「いかなる名目によるかを問わず」と定義付けているので、敷金とは異なる返還義務を負わない権利金等がある場合には、当該金員の性質を契約書上で明らかにし、敷金との区別を明確にしておくことが望ましいと言えます。

敷金の返還時期は、「賃貸物の返還を受けたとき」に返還するとされるので、建物等を明け渡したあと、敷金が返還されます。

実務上は、建物等の状況を確認した上で、敷金の精算を行うことになります。

「引き渡し後○日以内に敷金から控除すべき金額を控除したあとの残金を返還する」といった契約別途当事者の合意で定める必要があります(任意規定)。

賃借人の修繕権の明文化

入居中の部屋に不具合(壁の亀裂、雨漏り等)が発生した場合、賃借人は、賃貸人に対して修繕をするように請求することはできますが、賃借人が自ら修繕をすることができるか否かについては現行民法上明らかではありませんでした。

改正民法では、これまでの判例等にそって、賃借人から賃貸人に対して通知をしても賃貸人が修繕をしない場合、および急迫の事情がある場合には、賃借人が修繕することができる旨を明文化しました。

賃借人は、賃貸人が修繕をしてくれないような場合には、通知をした上で自ら修繕を行い、その費用を賃貸人に請求できることが権利として認められることとなったのです。

賃借人の修繕権が民法上明確に認められたことにより、今後は賃借人の恣意的な修繕がされたり、意図せず多大な修繕費用の請求をされたりすることも可能性としては考えられます

そのため賃貸人の立場からは、契約書において賃借人の修繕権を調整しておくか、または特約で賃借人の修繕権が発生する条件およびその修繕の範囲等を明確にしておくことが望ましいと考えられます。

賃貸物件の修繕義務

賃借人の責めに帰すべき事情によって修繕の必要性が生じた場合について、賃貸人に修繕義務があるかどうかも、明文化がなされていませんでした。

そこで、改正民法で、次のように賃借人の責めに帰すべき事情による修繕について賃貸人に修繕義務がないことを明らかにしました(第606条第1項)。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りではない。

原状回復義務

現行民法では、賃貸借契約が終了した場合の賃借人の契約上の義務について、明文化されておらず、使用貸借の規定を準用する形で規定していました。

賃借人は、契約終了後に賃借物を「原状」に戻して返還する必要がありますが、「原状」がどのような状態を指すかは、現行民法上は明らかではありませんでした。

そのため、壁のクロスや畳・カーペット・クッションフロアなど「原状回復」をめぐって、争いになることがありました。

そこで、改正民法では、賃借人は経年変化や通常消耗については原状回復義務を負わないことが明文化されました。

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。(民法621条)

この条項は任意規定ですので、民法の定めとは異なる特約を結ぶことも可能です。

しかし法人・個人間の契約には、消費者契約法(第10条等)が適用され、著しく賃借人不利となる取り決め(一切免責等)は、訴訟等になった場合には、無効と判断され得る可能性があることに留意しなければなりません。

個人の連帯保証人について「極度額」の導入

保証人が想定外の保証義務を負わされないよう、保証人を保護する制度が導入されました。

「一定の範囲に属する不特定の債務(不特定債務)を主たる債務とする保証契約」について法人でない個人が保証することを「個人根保証」といいます。

賃貸借契約から発生する賃料を個人で保証する場合もこの「個人根保証」にあたります。

改正民法では、極度額(いくらまで保証しますという範囲)の定めがない個人根保証契約は無効となってしまいますので、賃貸人の立場で契約をする際には、極度額を決定し記載する必要があります。

売買契約における変更点

続いて、不動産売買への影響についてみていきましょう。

違約金について

一般的な不動産売買において、契約を履行しなかった場合、売買代金の20%の違約金を支払うといった契約があります。この、違約金(損害賠償)について変更が加えられました。変更ポイントは、違約金の額を裁判所が増減できることになるという点です。

不動産の売買契約において、債務不履行(履行不能、履行遅滞、不完全履行)による違約金は、原則として当事者が自由に決めることができます。

現行民法では、債務不履行について損害賠償の額を予定することが認められており、損害賠償の額が予定されたならば、裁判所はその額を増減することができません。

ただし、予定額が公序良俗に違反する場合や、消費者契約法9条(消費者に不当な金銭的負担を強いる違約金の定めについて、一定額を超過した分が無効となるというもの)に違反する場合には、合意の一部又は全部が無効となります。

一方、改正民法では、不当に巨額な賠償額を設定することによって債務者を不当に圧迫することを防止するため、消費者契約法9条に違反したり、公序良俗違反に至らなくても、裁判所が実態を踏まえて違約金の額を調整することが可能となりました。

なお、売買契約の売主が宅建業者であるときには、特別法である宅建業法により、債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えることとなる定めをしてはならない、と定められており(宅建業法第38条1項)、この規定に反する特約は、代金の額の10分の2を超える部分について、無効となります(同条2項)。

そのため、民法改正による実務上の影響は少ないと思われます。

買戻し制度について

買戻し制度という、不動産の売買契約をするときに、売主がその不動産を買い戻せるという特約があります。

この買い戻し制度が修正され、当事者の合意により買戻しの代金の額を定めることができる旨が付記されました。

買戻特約のない売買契約では、売主はお金を受け取り、所有権が買主に移転します。

それが買戻特約付売買をした場合、売主は受け取ったお金を特約のとおりに買主に返せば、その所有権が戻ってくるのです。

買戻しの目的物は不動産に限られており、買戻しの特約をするのは、売買契約と同時でなければならないという点に注意が必要です。
 
現行民法では、「買主が支払った代金」や「契約の費用」を返還することで、売買契約を解除できる場合があります。

買戻し代金の定めは、任意規定でなく強制規定とされており、例えば「売買代金と契約費用のほかに各種の費用を支払わなければ買い戻しできない」という特約を設けても、売主は買い戻しができると解されていました(大正15年2月28日大14(オ)875号(大審院))。

一方、改正民法では、「買主が支払った代金」ではなくて、別段の合意によって定めた金額を提供することも可能であることが規定されました。

危険負担について

危険負担とは、建物売買契約を締結して引き渡しまでの間に地震など売主の責に帰すことのできない事由によって建物が消滅した場合、売主・買主どちらが負担をするのかというものです。

現行民法では、不動産等の特定物の売買については債権者(買主)が危険(リスク)を負担するのが原則です(債権者主義といい、対象の不動産が滅失したときでも、買主が代金を支払う必要があるというもの)。

改正民法では、この債権者主義が改められ、不動産の引渡時にリスクが移転するのが原則となりました。180度の大きな転換ですが、そもそも実務上は特約で債権者主義に修正され契約されてきたことから、取引に大きな影響は生じないといわれています。

瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

民法改正に伴い、従来の「瑕疵担保責任」という規定がなくなり、新たに「契約不適合責任」という概念ができました。

変更ポイントは以下の7点です。

1. 責任の対象が拡大したこと

現行民法では、瑕疵担保責任の対象は「特定物」とされていましたが、契約不適合責任では、特定物及び不特定物を問わず適用となります。

2. 契約内容不適合の有無の判断時期が延びること

瑕疵担保責任を考える場合、売主にその責任が及ぶ「瑕疵」は契約時点までに存在したものが対象となります。

一方、契約不適合責任を考える場合、その不適合については物件の引き渡し時点までに存在したものまで含むことになります。

そのため、責任が発生する期間が延びるという点に注意が必要です。

3. 契約不適合責任の内容

瑕疵担保責任で問題となるのは売買物件に「隠れた瑕疵」が存在する場合でした。例えば、通常の生活では知ることが難しい基礎のシロアリ被害などです。

一方、契約不適合責任では「瑕疵」や「隠れた瑕疵」が直接の要件である必要がなくなります。

例えば雨漏りが契約の趣旨に適合するかどうかが問題となります。

雨漏りを知った上で購入した場合は、雨漏りがすることは契約の趣旨に適合しないとは言えない場合が多いですが、買主が雨漏りの事実を知らずに購入した場合には、契約の趣旨に適合していないと契約不適合責任が認められる可能性があります。

また、引き渡された目的物が種類、品質、または数量に関して、契約の内容に適合するかどうかがポイントとなります。

4. 買主の救済手段が増えたこと

瑕疵担保責任では、買主側の救済手段としては契約解除もしくは損害賠償請求の2種類でした。

契約不適合責任ではさらに大きく2種類「追完請求権(修補請求権を含む)」と「代金減額請求権」の救済手段が加わりました。

追完請求権

契約に適合しない物件を引き渡された買主は、売主に追完請求を行うことができます。

これは債務の本来の履行を求めるもので事後的に契約に適合する状態にするための措置です。

修補請求権

追完請求権に含まれますが、引き渡した目的物を契約の内容に適合させるために修補することを請求することも認められます。

例えば、修補が必要な個所があれば売主が費用を払って修補を行います。

代金減額請求権

代金の減額請求は当初契約で定めた売買代金の減額を求めるものです。

この請求権は、原則として前述した追完請求権(修補請求権)を行使するのが先になります。代金を減額されるより、修補することで全額を支払われたいだろう売主側の利益が考慮されています。

買主は、相当の期間を定めて追完することを売主に催告し、その間に追完がなされない場合に、不適合の程度に相応しい減額を請求することになります。

5. 損害賠償請求

買主は、契約の内容に合致しない目的物が引き渡されたことにより発生した損害について、債務不履行に基づき売主に損害賠償金を請求することができます。

6. 帰責事由の必要性

現行民法と改正民法の大きな相違点は、瑕疵担保責任の損害賠償責任が無過失責任であった一方で、契約不適合責任としての損害賠償責任に帰責事由(故意・過失)が必要となったことです。

もっとも、帰責事由の立証責任は売主側に有り、また売主に帰責事由がないことにより免責されているケースはほとんどなく、事実上不可抗力の場合に限られるといわれています。

7. 損害賠償の範囲の修正

現行民法の瑕疵担保責任の損害賠償の範囲は、信頼利益に関する損害(その契約が有効であると信じたために発生した実費等の損害)であるといわれています。

一方、契約不適合責任の場合、債務不履行の一般原則にしたがって、履行利益(債務が履行されていたとすれば買主が得られた利益)を賠償しなければならなくなりました。

例えば、現行民法の瑕疵担保責任では、建物設備の一部に不具合がであればそれを補修するのに必要な範囲程度(信頼利益)であったため、売主の賠償責任の範囲は限定的でした。

一方、契約不適合責任では、その損害の範囲が実際それが上手くいっていたら得られたであろう利益(履行利益)にまで広がります。そのため、賠償が必要になる損害の範囲がこれまでの瑕疵担保責任より広くなるのではといわれています。

まとめ

今回の民法改正により権利・義務に関するルールの変更・新設はもちろん、これまでの判例等を前提とした解釈論が明文化されたことは、不動産契約の実務に大きな影響を及ぼすと思われます。

これからの不動産契約は、公序良俗に反しない限り、契約書どおりに実現していくことになりますので、想定される事項は全て契約書に盛り込むことになってくると思われます。

そのため、私たちは日常生活を送るうえで契約当事者になりうることを念頭に置き、予期せぬ不利益を被らないように新民法のルールを学び、理解に努める必要があります。

民法改正に関するテーマでお届けするパート2では、より具体的にGA technologiesが提供するサービスと改正民法への対応についてご紹介させていただきます。

※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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