登記事項要約書とは~申請方法から書き方、見方までを徹底解説
登記事項要約書と登記事項証明書の違いについて正しく理解できていますか?正しく理解できていないと、間違って窓口で申請して、再度申請しなければいけない可能性があります。 今回は登記事項要約書の解説から、請求方法、書き方、そして見方までを徹底解説します。
登記事項要約書とは
登記事項要約書とは、不動産の登記記録を要約した内容を印刷した書面です。
ひとつの不動産の登記記録は物件によっては膨大な情報量になっていることもありますが、登記事項要約書はその情報の中から現在有効な権利だけが記載されたコンパクトな書面です。
過去の権利に関することは省略されているので、その不動産の過去の所有者に関することや、過去に担保に入っていたり差押えを受けたことがあったりしてもわからない状態になっています。
昔は法務局で紙の登記簿を閲覧してメモを取ることができたのですが、現在の法務局ではコンピュータ化により登記情報はデータとして保存されているため、閲覧することができなくなっています。
そこで、閲覧に代わるものとして、データ化された登記情報の要約を書面に印刷して希望者に交付されるようになったのが登記事項要約書です。
メモの代わりという取扱いなので、法務局名も省略されており、登記官の証明文や公印も付されていないため、登記事項要約書に証明力はありません。
登記事項要約書と登記事項証明書の違い
登記事項証明書もデータ化された登記情報を印刷した書面ですが、こちらは名称のとおり、登記事項を証明するための書面です。法務局名が記載されており、登記官の証明文と公印も付されています。
これに対して登記事項要約書は登記事項を証明するための書面ではないのです。この点が形式面での大きな違いです。
この2つには内容面でも大きな違いがあります。登記事項証明書のなかでも全部事項証明書には、ひとつの不動産に関する事項の全部が記載されています。登記事項要約書では省略されている過去の権利関係もすべてわかるようになっています。
したがって、全部事項証明書を見れば、その不動産の最初の所有者から現在の所有者まで、いつ、どのような原因で所有権が移転してきたのかという履歴がわかります。過去に担保に入っていたり、差押えされたりした事実があれば、それもわかります。
なお、登記事項証明書にはいくつかの種類があって、そのなかの「現在事項証明書」には現在有効な権利関係のみが記載されています。記載内容は登記事項要約書と同じですが、現在事項証明書はあくまでも登記事項証明書なので証明力があり、登記事項要約書には証明力がないという違いがあります。
登記事項要約書を申請しよう
登記事項要約書も登記事項証明書も、取得する方法は難しくありません。しかし、登記事項要約書を取得するには、登記事項証明書を取得する場合とは異なる注意点があります。以下、登記事項要約書の取得方法を解説していきます。
登記事項要約書の請求に必要なもの
登記事項要約書の交付請求をするために必要なものは、以下の3点です。印鑑や身分証明書等は必要ありません。
- 登記事項要約書交付申請書
- 手数料
- 取得したい不動産の情報
登記事項要約書交付申請書は法務局の窓口に備え置いてありますが、法務局のホームページからダウンロードしてプリントアウトしたものも使用できます。
登記事項要約書交付申請書の書き方は、後ほど項を分けて詳しく説明します。手数料と、取得したい不動産の情報についても、後ほど項を分けて詳しく説明します。
登記事項要約書の請求方法
登記事項要約書の交付請求は、取得したい不動産の所在地を管轄する法務局の窓口で行うことができます。
担当する係の名称は各地の法務局によって異なりますが、「登記部門」や「登記係」という名称であるところが多いです。その窓口に登記事項要約書交付申請書を提出すれば、その場で交付されます。
なお、登記事項要約書の交付請求は、現在は取得したい不動産の所在地を管轄する法務局の窓口でしか行うことができません。管轄違いの法務局へ行っても請求できないので。注意が必要です。
郵送での取り寄せもできませんし、オンライン取得もできません。また、登記情報提供サービスでも登記事項要約書に相当する情報はサービスの対象外とされています。
この取扱いは不便なようにも感じますが、登記事項要約書が登記簿を閲覧する際のメモ代わりであることを考えれば、やむを得ないのかもしれません。
ただ、登記情報提供サービスで登記事項証明書の情報をダウンロードすれば、登記事項要約書を取得するより安い手数料で、より詳細な情報が得られるのですから、登記情報提供サービスは重宝すると言えます。
登記事項要約書の申請に必要な手数料
登記事項要約書の申請に必要な手数料は1通につき450円です。取得したい通数分の収入印紙を登記事項要約書交付申請書に貼って窓口に提出します。
収入印紙は法務局で購入できるので事前に準備する必要はありませんが、郵便局などでも購入できます。
登記事項要約書交付申請書の書き方
登記事項要約書交付申請書の書き方を解説していきます。登記事項要約書はオンラインで取得・ダウンロードすることはできませんので、必ずこの申請書を使って申請する必要があります。
それでは、記載要領を見ながら具体的にご説明していきます。
住所(請求人の住所)
窓口で請求する人の住所を書く欄です。身分証明書の記載と照合されることはありませんが、正確に記入しましょう。
氏名(請求人の氏名)
窓口で請求する人の氏名を書く欄です。本人確認はされません。押印も不要です。
取得したい不動産情報
取得したい不動産の登記事項要約書を正しく取得するためには、その不動産に関する情報を正確に記入する必要があります。以下の項目でご説明する情報については、事前に正確な情報を調べておきましょう。
種別
土地か建物のどちらかにチェックを入れましょう。
土地と建物は別の不動産なので、登記事項要約書も別になります。家屋とその敷地の登記事項要約書を取得したいときは、土地と建物に分けてそれぞれ記入してください。書く順番はどちらが先でも全く問題ありません。
地番
地番を書く欄ですが、ここは要注意です。登記簿上の地番は住所と同じ場合もありますが、異なる場合も多いからです。
この欄には登記簿上の地番を正しく記入しないと、登記事項要約書を取得できなかったり、別の不動産の登記事項要約書を取得する結果となって手数料が無駄になってしまうこともあります。
なので、必ず事前に地番を確認しておきましょう。不動産の権利証や売買契約書、固定資産税の納税通知書などが手元にあれば確認できます。
手っ取り早いのは、法務局に電話をして聞くことです。「住所から地番を教えてほしい」と告げて住所を述べれば、すぐに地番を教えてもらえます。
家屋番号
家屋番号を書く欄ですが、ここでも地番と全く同じ問題があります。不動産の権利証や売買契約書、固定資産税の納税通知書を確認したり、法務局に電話して聞くなりして、必ず事前に正確な家屋番号を調べておきましょう。
請求したい書類の種類
登記事項要約書を取得したい場合は、その左の□にチェックを入れましょう。
その下に「登記簿の閲覧」という記載がありますが、登記事項要約書を取得するのか登記簿を閲覧するのかを自由に選べるわけではありません。
現在の法務局ではコンピュータ化により登記情報がデータ化しているといっても、全ての情報がデータ化しているわけではありません。一部、公図や地積測量図などの資料などデータ化されていないものもあります。「登記簿の閲覧」ができるのは、そういったデータ化されていない情報のみです。
収入印紙
申請書の右側の収入印紙欄に、必要な金額の収入印紙を貼りましょう。金額は1通につき450円です。家屋1通、その敷地1通で合計2通の登記事項要約書を請求する場合は900円分の収入印紙を貼ることになります。
枠内に収まるのであれば、収入印紙の金額の組み合わせは自由です。
登記事項要約書の見方
登記事項要約書を取得することができても、内容の見方がわからなければ意味がありません。そこで、サンプルを見ながら登記事項要約書の見方をご説明していきます。
表題部
表題部には、不動産の表示に関する事項が記載されます。不動産の所在や、土地であれば地番・種類・面積などです。建物であれば家屋番号・種類・構造・床面積などです。
注意が必要なのは、土地の種類や面積、建物の種類や構造・床面積は必ずしも現況に一致しているとは限らないことです。
登記事項要約書は、あくまでも現在登記されている情報を要約したものであって、実際の不動産の現況をリアルタイムに正確に表示するものではない点に注意してください。
権利部所有権
現在の所有者の住所・氏名、表示登記申請書の受付年月日・受付番号が記載されます。
登記事項要約書は、現在の所有者が誰なのかを調べるためには有効ですが、過去に所有権が移転した履歴を見ることはできません。過去の情報を調べるためには登記事項証明書を取得するか、登記情報提供サービスでダウンロードしなければなりません。
また、登記事項要約書には証明力がないので、自己所有の不動産の登記事項要約書を取得しても、それをもって自分の所有権を証明することはできません。
権利部乙区
所有権以外の権利に関する登記情報で、現に効力を有するものが記載されます。
多いのは、抵当権や根抵当権などの担保の設定です。サンプルでも、土地と建物の両方に抵当権が設定されていることがわかります。
登記太郎さんが3,000万円を借り入れて抵当権を設定していますが、この抵当権にかかる債務の残高が現在いくらになっているかは、わかりません。
登記事項要約書に記載されるのは現に効力を有するものだけなので、過去に設定されて既に抹消された抵当権などは登記事項証明書を見なければ調べることができません。
登記事項証明書を取得すれば、過去にその不動産に設定された抵当権が実行され、競売によって所有権が移転したことがわかる場合もあるのですが、登記事項要約書の記載からはそのような事実はわからないようになっています。
登記事項要約書についてよくある疑問
ここでは登記事項要約書について、今までご説明してきたことの他にもよくある疑問にお答えしていきます。
登記事項要約書はオンライン請求できるのか?
登記事項要約書は、オンライン請求で取得することはできません。郵送で取り寄せることもできませんし、登記情報提供サービスでダウンロードすることもできません。
登記事項要約書を取得するには、取得したい不動産の所在地を管轄する法務局へ行き、窓口で請求するしかありません。
これは、以前に行われていた「登記簿の閲覧」が「登記事項要約書の交付」に代わったことに思い至れば合点がいきます。
以前は、登記情報を閲覧したい不動産の所在地を管轄する法務局へ行って紙の登記簿を閲覧し、重要な情報は手書きでメモをすることが一般的でした。
現在では法務局のコンピュータ化によって登記情報がデータ化されたため、閲覧することができなくなっています。そこで、以前の「メモ」の代わりに交付されるようになったのが登記事項要約書なのです。
こういった位置付けのため、以前に行われていた閲覧の場合と同様、管轄の法務局へ行かなければ登記事項要約書を取得することはできないのです。
ただし、登記情報提供サービスで登記事項証明書をダウンロードすれば、登記事項要約書を取得するよりも安価で、より多くの情報をスピーディに取得することができます。
法務局での登記事項要約書の申請方法
法務局で登記事項要約書の交付申請をする方法は、登記事項要約書交付申請書を窓口に提出するだけです。
法務局の中に入ったら、担当の部署を調べて、そこに行きましょう。多くの法務局では「登記部門」や「登記係」というような名称になっています。
担当部署に行くと、多くの場合は銀行のロビーに置いてあるような番号札発券機ががあるので、そこで番号札を取って順番を待ちます。先に登記事項要約書交付申請書に必要事項を記入し、収入印紙も貼ってから番号札を取る方がよいでしょう。
収入印紙売り場は法務局内にありますが、多くの法務局では登記簿謄本や登記事項要約書の取得申請をする窓口のすぐ近くにあるので、すぐに収入印紙を購入することができます。
管轄の法務局の窓口に行けば、地番や家屋番号がわからなければ教えてもらえますし、交付申請書も備え置いてあり、収入印紙売り場もあるので、特に準備がなくても登記事項要約書の交付申請をすることができます。
なお、法務局の開庁時間は平日の午前8時30分から午後5時15分までです。この間であればいつでも登記事項要約書を取得できます。
登記事項要約書と登記事項証明書の違いを理解しよう
登記簿に馴染みのない方にとっては、最初は登記事項要約書と登記事項証明書の違いはなかなかわからないかもしれませんね。しかし、この2つは証明力の有無が違いますし、記載される情報の範囲も違います。
両者の違いを正しく理解し、くれぐれも取得違いによって手数料を無駄にすることがないようにご注意ください。
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