中古マンションの内見時に必ずしたい!建物の傾きを手軽に測る方法
『家の傾きが健康被害を与える』(松藤展和著・幻冬舎刊)というタイトルの本が出版されたり、TVで特集されたりするなど、住まいの傾きは健康と大きく関わる可能性があります。それだけに、マンション購入時には細心の注意を払う必要があります。ここでは、手軽に傾きを確認する方法について解説します。
はじめから傾きのないマンションを買うことが大切
マンションの代表的な欠陥には、外壁のひび割れなどとともに、「床の傾き」もあります。傾きの原因は、コンクリート量の改ざんや施工ミスといった人的要因もありますが、地盤の変化の影響も考えられます。いずれにしても大事なことは、はじめから「傾きのある物件を選ばないこと」です。購入後に傾きが発覚しても、傾きの調査・売り手の責任追及・補償交渉など膨大な手間と時間がかかります。
一方で、「傾きのまったくないマンションは事実上ない」ことも覚えておきましょう。そもそも建物が建っている地面自体に多少の傾きがあります。そこに、数多くの職人の技術を結集して、大きなマンションを建てるのですから、傾きをゼロにするのは困難です。仮に、新築時に限りなく傾きのないマンションができたとしても、時間の経過とともに地盤が変化しているため傾きはでてくるものと認識しておきましょう。
ビー玉が転がるマンション=欠陥ではない
「傾きのある物件を選ばないこと」を意識している人の中には、内見時にビー玉やパチンコ玉を転がして確認しようとする方もいますが、これは誤った考え方です。欠陥住宅を特集したTV番組などでよく使われる手法なので、「ビー玉やパチンコ玉が転がる=欠陥住宅」のイメージもありますが、欠陥住宅でなくてもビー玉が転がることはあります。逆に、傾きの大きい欠陥住宅にパチンコ玉を置いても転がらないこともあるのです。
見た目の感覚だけで建物や部屋の傾きを判定するのは、診断士などのプロでも容易ではありません。確実な方法は、「水平器」と呼ばれる専用アイテムを使うことです。これは住宅診断をするプロの人も使っている機材で、液体に気泡がはいっていて、その気泡の位置で傾いているかどうかを測定するものです。簡易なタイプの水平器を部屋の中に置けば誰でも簡単に測定できます。
どれくらいの傾きがあると問題になるのか?
実は、このくらい傾いていたら欠陥住宅といった絶対的な基準はありません。参考になるのは、国土交通省が定める「住宅の品質確保の促進等に関する法律」内の勾配によって「どれくらい重要な瑕疵があるか」という部分です。勾配は1,000分の3や1,000分の6といった数値で表示されます。1,000分の3は、「1,000ミリメートル=1メートル」の距離で「3ミリメートル高さが変わる」という意味です。この勾配をもとに以下の表のように判断基準が設けてあります。
1,000分の3未満 | 構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が低い |
1,000分の3~1,000分の6未満 | 構造耐力上主要な部分に瑕疵の可能性が一定程度ある |
1,000分の6以上 | 構造耐力上主要な部分に瑕疵がある可能性が高い |
*2000年建設省告示第1653号より抜粋
この基準では1,000分の6以上の勾配がある場合に構造上の瑕疵が存在する可能性が高い、つまり、1mで6mm以上の傾きがある場合に欠陥物件である可能性が高いとしています。しかし、必ず欠陥だということではないため、傾きが大きい場合は最終的にホームインスペクションを利用して、専門家の判断に任せましょう。
居室内のいろんな場所で傾きを測定する
最後に、内見時に傾きを測る際のポイントです。リビングだけで測定する人がいますが、各部屋、お風呂、洗面所、廊下など、いろいろな場所で測定することが重要になります。なぜなら、欠陥がある場合は、均等に傾いているわけではなく特定の部屋の一部分だけ傾いていることもあるからです。
先ほどもお伝えした通り、傾きは水平器を使うことで簡単に見破ることができます。ただし、傾きがあるからといってすべてを敬遠するのではなく、マンションには多少の傾きがあるのが当たり前ということを前提に内見することが重要です。
関連用語:インスペクション
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