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作成日: 2021.03.29

旧耐震基準と新耐震基準の違いとは? 背景や確認方法、改正点などを解説

旧耐震基準と新耐震基準の違いとは? 背景や確認方法、改正点などを解説

震度7クラスの地震が、数年に一度のペースで全国各地において発生している日本で、マンションや戸建てなど住宅を購入する場合や賃借する場合、耐震性能は気になる点です。

この記事では、旧耐震基準新耐震基準の概要や違い、基準の確認方法と、新耐震基準の改正点について解説します。

旧耐震基準と新耐震基準

まず、旧耐震基準新耐震基準ができた背景と経緯についてです。

耐震基準とは

耐震基準は、地震動の揺れに対し、建物が倒壊・崩壊せずに耐えることのできる性能を、建築基準法において規定するものです。

日本での建築に関する最初の法律は、「市街地建築物法」です。1919年に制定されましたが、このときは木造のみの基準でした。1923年(大正12年)9月1日の関東大震災を経て、1924年(大正13年)に「市街地建築物法」は改正されここで耐震基準が加わりました。

その後、1950年に「市街地建築物法」は廃止となり、同年に「建築基準法」が制定され、今でいう旧耐震基準ができました。

旧耐震基準

旧耐震基準は、1950年から施行され、1981年5月まで約30年にわたり運用された耐震基準です。その基準は、

  • 10年に一度発生すると考えられる中規模の地震動(震度5強程度)に対して、家屋が倒壊・崩壊しない

というものでした。

したがって、震度5強よりも大きくなる大規模の地震動(震度6強~7程度)は想定されていませんでした。当時は、大規模の地震動に対する耐震技術の開発も追いついていなかったと考えられます。

新耐震基準

新耐震基準は、1981年6月から施行されました。ここで規定された基準は、

  • 中規模の地震動(震度5強程度)で、家屋がほとんど損傷しない
  • 大規模の地震動(震度6強~7程度)で、家屋が倒壊・崩壊しない、ただし多少の損傷は許容

というものでした。ここの基準が、現在においても引き継がれています。

新耐震基準が定められた背景

上記の新耐震基準が規定された背景は、1978年(昭和53年)に発生した宮城県沖地震による建物の甚大な被害です。地震の規模・被害状況は、

  • マグニチュード:7.4
  • 震度:5(仙台市)
  • 人的被害:死者27名、負傷者10,962名
  • 建物被害:全壊1,377棟、半壊6,123棟、一部破損125,370棟

でした(宮城県内)。この被害を教訓として、新耐震基準が導入されました。

旧耐震基準と新耐震基準の確認方法

次に、建物の耐震基準を確認する方法を解説します。旧耐震基準の建物と新耐震基準の建物との見分け方は、確認申請承認日(建築確認日)でみることができます。

  • 旧耐震基準の建物:1981年(昭和56年)5月31日までに確認申請承認を受けたもの
  • 新耐震基準の建物:1981年(昭和56年)6月1日以降に確認申請承認を受けたもの

注意点としては、建物の竣工日(完成日)や表示登記日ではないという点です。

旧耐震基準新耐震基準の確認方法】

旧耐震基準の建物 新耐震基準の建物
確認申請承認日
(建築確認日)
1981年(昭和56年)5月31日まで 1981年(昭和56年)6月1日以降

例えば、1982年12月に竣工したマンションであっても、確認申請承認日が1981年5月31日以前の日付になっている場合は、そのマンションは、旧耐震基準の建物となります。

確認申請承認日と竣工日が離れているケースには、建築構造や建築工法が関係しています。高層マンションは、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造にてつくられることが多いです。

この場合の工期は、

鉄筋コンクリート造建物の工期=階数+3(カ月)

の計算式がおおむね当てはまります。

コンクリートを建物の各階ごとへ打設するたびに、強度を発生させるため養生期間を確保する必要性があります。そのため、建物の階数が多くなるとそれだけ工期は長くなります。

例えば、15階建ての高層マンションの場合、工期の目安は18カ月(1年半)となります。そのために、確認するポイントは、工事が完成した竣工日ではなく、確認申請承認を受けた日をみるようにしましょう。

旧耐震基準と新耐震基準の違い

旧耐震基準新耐震基準の違いは、

  • 耐震強度
  • 中古住宅購入時におけるフラット35の適用
  • 住宅ローン控除の適用

があります。それぞれ解説します。

耐震強度

先にも触れましたが、それぞれの基準で地震の規模(中規模地震動・大規模地震動)に対する耐震強度の考え方が異なります。

旧耐震基準新耐震基準耐震強度による違い】

地震の規模 旧耐震基準 新耐震基準
中規模の地震動(震度5強程度) 家屋が倒壊・崩壊しない 家屋がほとんど損傷しない(許容応力度計算)
大規模の地震動(震度6強~7程度) 規定なし(家屋が倒壊・崩壊する可能性大) 家屋が倒壊・崩壊しない(保有水平耐力計算)

耐震強度の考え方について、新耐震基準では、構造計算の方法として具体的に許容応力度計算保有水平耐力計算が必要と規定されました。

許容応力度計算

許容応力度計算は、建物の安全性を証明する構造計算です。建物部材(柱・など)の許容応力度に対して部材に実際に作用する応力度が上回るか下回るかを確認する作業です。建築物の柱や・床・基礎といった主要構造物といわれる躯体(くたい)が、損傷しない最大の応力計算をすることです。

中規模の地震動(震度5強程度)に対して、建物部材の許容応力度が同等以上必要とされ、建物躯体の許容応力度が上回り、損傷を受けない耐震基準が求められるようになりました。

許容応力度等計算が必要な建築物は以下の通りです(建築基準法第20条1項第三号イ、ロ)。

  • 木造:階数が3以上又は延べ面積が500m2、高さが13m、軒の高さがが9mを超える建築物
  • 木造以外:階数が2以上又は延べ面積が200m2を超える建築物
  • 主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)を石造、れんが造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造その他これらに類する構造とした建築物で高さが13m又は軒の高さが9mを超える建築物

保有水平耐力計算

保有水平耐力計算は、大地震時に発生する水平力に対して、建築物の柱やの曲げ降伏、せん断破壊を計算し、耐震性(水平方向の耐力)を確認します。建物の「保有する耐力」と、少なくとも「必要とする耐力」を比較し、「保有する耐力」が上回っていることを計算し確認します。

大規模の地震動(震度6強~7程度)に対して、建物の「保有する耐力」が、地震発生時の「必要とする耐力」を上回り、倒壊・崩壊しない耐震基準が法律上求められるようになりました。

保有水平耐力計算が必要な建築物は以下の通りです(建築基準法第20条1項第二号 イ、ロ)

  • 木造:高さが13m又は軒の高さが9mを超える建築物
  • 鉄骨造:地階を除く階数が4以上である建築物
  • 鉄筋コンクリート造:高さが20mを超える建築物
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造:高さが20mを超える建築物

この許容応力度計算と保有水平耐力計算の2点が、新耐震基準の大きなポイントとなりました。

中古住宅購入時におけるフラット35の適用

中古住宅を購入する際にフラット35を利用したい場合、新耐震基準である必要があります。したがって、住宅の確認申請承認日が1981年6月1日以降であることが条件となります。

しかし確認申請承認日が不明な住宅が、少なからずあります。その場合には、住宅の表示登記(竣工時期)が1983年4月1日以降のものが対象となります。

確認申請承認日が1981年5月31日以前の住宅(旧耐震基準)は、フラット35の対象にならないので注意が必要です。ただし、耐震基準適合証明書を取得した住宅に関しては、フラット35を利用できる可能性があります。

耐震基準適合証明書は、新耐震基準以前に確認申請承認を受けた建物が、現在の耐震基準に適合することを証明する書類です。取得するためには、一級建築士に対象建物の調査を依頼し、耐震基準適合建物であることを認定してもらうことが条件となります。

住宅ローン控除の適用

住宅ローン控除は、一定の条件を満たす住宅に対して、年末における住宅ローン残債の1%を所得税や住民税から10年間にわたり、控除してもらえる制度です。住宅ローン控除条件の中には、

  • 築20年以内の非耐火建築物(木造の戸建住宅など)
  • 築25年以内の耐火建築物(鉄筋コンクリート造のマンションなど)

という条件があります。

ただし、築25年超の耐火建築物であったとしても、耐震基準適合証明書を取得できれば、住宅ローン控除を利用することができます。

1981年6月以降の確認申請承認日で耐火建築物であれば、新耐震基準の建物として認定されやすくなり、耐震基準適合証明書を取得することができます。

新耐震基準の建物は本当に地震に強いのか?

1995年に阪神淡路大震災が発生し、2011年に東日本大震災が発生しました。さらに2016年に発生した熊本地震では、震度7の余震の1週間後に、震度7の本震が発生しました。

これらの3地震とも日本史上に残る大地震となりましたが、旧耐震基準の建物と新耐震基準の建物との間において、建物被害に差が生じたのか否かを検証します。

阪神淡路大震災

1995年1月17日未明に、兵庫県南東部を中心とした阪神淡路大震災が発生しました。地震の規模・被害状況としては、

  • マグニチュード:7.3
  • 震度:7
  • 人的被害:死者6,434名、行方不明者3名
  • 建物被害:全壊104,906棟、半壊144,274棟、全半焼:7,132棟など

を記録しました。

国土交通省は、
「阪神・淡路大震災において、死者数の大部分が建物等の倒壊が原因であり、1981年以前の耐震性が不十分な建物に多くの被害がみられた」
と、報告しています。

下図のグラフにおいても、

  • 1981年以前の建物は「大破・中小破」が約65%
  • 1982年以降の建物は「大破・中小破」が約25%

となりました。

1982年以降の建物(新耐震基準)は、1981年以前の建物(旧耐震基準)と比較して、2.5倍以上もの割合で、「大破・中小破」しなかった結果となりました。

この結果により、新耐震基準の有効性は実証されたともいわれています。

建築年別の被害状況(建築物)阪神淡路大震災による建物の建築年数による被害状況
引用:「阪神・淡路大震災による建築物等に係る被害」平成7年阪神淡路大震災建築震災調査委員会中間報告│国土交通省(PDF)

東日本大震災

2011年3月11日に、宮城県沖を震源とした東日本大震災が発生しました。地震の規模・被害状況としては、

  • マグニチュード:9.0
  • 震度:7
  • 人的被害:死者19,667名、行方不明者2,566名、負傷者6,231名
  • 建物被害:全壊121,783棟、半壊280,965棟、一部破損745,162棟など

を記録しました。

東日本大震災の地震による建物の被害状況は、

  • 旧耐震基準の建物は「大破・中小破」が約19%
  • 新耐震基準の建物は「大破・中小破」が約12%

となり、さほど大きな差は生じませんでした。

この原因は、阪神・淡路大震災が直下型地震であり、強烈な縦揺れを起こしたのに対し、東日本大震災長時間続く横揺れであったことにあります。

また、旧耐震基準の建物は、東日本大震災が発生した時には、既に30年以上経過しており、そのため建て替えや耐震補強された建物もあり、大破・中小破の割合が相対的に下がったとも考えられています。結果としては、旧耐震基準の建物と新耐震基準の建物との被害の差は、さほど生じませんでした。

熊本地震

2016年4月14日に、震度6以上の地震を7回記録(震度7以上の地震は2回)した熊本地震が発生しました。地震の規模・被害状況としては、

  • マグニチュード:7.3
  • 震度:7(2回観測)
  • 人的被害:死者:273名、負傷者2,809名
  • 建物被害:全壊8,667棟、半壊34,719棟、一部破損162,500棟など

を記録しました。

熊本地震による被害状況は、下表の通りです。

【熊本地震による被害状況】

1981年5月までに建てられた建物被害の割合(大半が旧耐震基準の建物)

大破以上 約46%
中・小破もしくは軽微な被害 約49%
無被害 約5%


1981年6月以降に建てられた建物被害の割合(大半が新耐震基準の建物)

大破以上 約15%
中・小破もしくは軽微な被害 約54%
無被害 約31%

上表を見ますと、新耐震基準の建物の大破以上の割合は15%となり、旧耐震基準の建物の大破以上の割合46%と比較して、3分の1です。

一方、新耐震基準の建物の無被害の割合は31%となり、旧耐震基準の建物の無被害の割合5%と比較して、6倍となっています。この結果を見ますと、新耐震基準の建物は地震に対して強いといえます。

また、木造建築物の被害状況は、

  • 旧耐震基準による木造建築物の倒壊率:28.2%
  • 新耐震基準による木造建築物の倒壊率:8.7%

と、大きな差が生じました。

新耐震基準の建物は地震に強いのか?

上記3つの大地震やその他の地震による建物の被害状況などを総合的に鑑みても、新耐震基準の建物は、地震に強いといえます。

逆にいえば、旧耐震基準耐震強度しか有しない建物は、少なくとも40年以上経過しており、法定耐用年数を超過する建物も多いと思われます。

老朽化による劣化・損傷も重なりますので、大規模な地震動(震度6強~7程度)に対して、旧耐震基準の建物は、倒壊・崩壊する可能性は非常に高くなります。

新耐震基準の改正

1981年6月から運用がスタートした新耐震基準は、これまでに1度大きく改正されています。

耐震基準の改正は、2000年6月に建築基準法の改正が行われ、より厳しい耐震基準となりました。

特に木造建築物に対する構造の規定が強化されました。ちなみにこの改正は、「2000年基準」や「新・新耐震基準」ともいわれています。

「2000年基準」の背景と強化ポイント

この基準が導入された背景は、1995年に発生した阪神淡路大震災です。建物被害の調査結果を分析すると、

  • 地耐力に応じた基礎構造になっていない建物に被害が大きい
  • 耐震壁のバランスが悪い建物に被害が大きい
  • 柱と土台などの結合部の構造が弱い建物に被害が大きい

などがわかってきました。

上記の分析結果を踏まえ、主に下記内容が強化されました。

  • 地盤調査における規定を充実
  • 地盤調査に基づく地耐力に応じた基礎構造の選択
  • 耐震壁をバランスよく配置
  • 柱と土台・柱と筋交いなどの結合部において、筋交い金物や接合金物などを使用する規定

これらを施すことにより、阪神淡路大震災と同クラスの地震が発生しても耐えることのできる建物となります。

まとめ

以上、旧耐震基準新耐震基準の概要や確認方法・違い・新耐震基準の改正点について解説しました。

大規模な地震動による甚大な被害が発生するたびに、耐震基準は見直しを余儀なくされています。新耐震基準導入から既に40年以上、2000年基準導入から既に20年以上経過しています。

今後においても、大幅な耐震基準の改正がなされることは、容易に想定できます。最新の耐震基準の概要だけでも把握しておくことは、生命に関わる問題ですので重要です。

ただし、耐震基準も重要ですが、その他の自然災害(高潮・洪水・土砂崩れ)なども総合的に考慮して、住宅を購入もしくは賃借されることをおすすめいたします。震度7クラスの地震が発生しても、耐えることができる住宅を探しましょう。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

平野直樹 一級建築士

有限会社エクセイト研究所 代表取締役 建設コンサルタント、政府系シンクタンクを経て、有限会社エクセイト研究所を設立、現在に至る。主な業務は、不動産コンサルタント・不動産ライター。自らもマンション3棟所有(自主管理) 資格:一級建築士、一級土木施工管理技士、宅地建物取引士

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