不動産投資でペット可物件の需要はある? メリット・デメリットを解説
不動産投資を始めようとしている方の中には、「ペット可物件の需要はどれくらいある?」「収益性は?」そんな疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ペットの飼育が可能な物件への投資ニーズは高まる傾向にあり、入居率を高め、空室リスクを軽減できるメリットがあります。
本記事では、ペット可物件のニーズや、メリット・デメリット、さらに成功のポイントなどを解説します。
不動産投資におけるペット可物件の需要
一般社団法人ペットフード協会の調査によると、ペットを飼育する意向がある人でペットを飼育できない人の3割が、その理由を「集合住宅(アパート・マンションなど一戸建てでないもの)に住んでいて、禁止されているから」として挙げています。
参照:令和6年(2024年)全国犬猫飼育実態調査|一般社団法人ペットフード協会
このことから、ペットを飼いたいという需要に対して、供給が追いついていないと想定されます。需要と供給のギャップがあることから、ペットを飼っている方や飼う意向のある方にとって、ペット可物件は貴重な選択肢です。不動産投資の対象としても、競合物件との差別化や空室リスクの軽減につながるといえるでしょう。
不動産投資におけるペット可物件のメリット
不動産投資におけるペット可物件のメリットは主に以下の5つです。
- 競合物件との差別化につながる
- 長期入居者を獲得でき経営が安定する
- 入居率が高く空室リスクを低減できる
- 比較的高い家賃設定ができる
- 初期収入を増やせる
順番に詳しく解説します。
1. 競合物件との差別化につながる
日本の賃貸市場では、駅からの距離や築年数、間取りなど類似した条件の物件が多数流通しており、入居者に選ばれるための差別化ポイントも重要になっていきます。その中で、ペット飼育が可能な物件は限られており、ペットと一緒に住めるだけで特定の入居者層に広くアピールできます。
たとえば、一般的には不利とされる「駅から少し遠い」「築年数が経過している」といった条件の物件であっても、「ペット可」という付加価値があれば、それらの弱点を補う魅力となります。ペットを飼育する人は物件探しに苦労しているため、多少のマイナス条件には目をつぶってでも入居を希望するケースが少なくありません。
2. 長期入居者を獲得でき経営が安定する
ペット可物件の入居者は、一度住み始めると長期間にわたって居住するケースもあります。理由として、ペット自身のストレスと、飼い主が直面する物件探しの困難さが挙げられます。
ペットにとって住環境の変化は心身に大きな負担をかけますし、条件に合うペット可物件を探し出すのは、飼い主にとっても労力と時間のかかる作業です。引っ越しのハードルの高さが、入居者の長期定着を促す動機付けとなっています。
3. 空室リスクを低減できる可能性
不動産投資のリスクの一つが空室リスクです。しかし、ペットと暮らせる部屋を探している入居者は常に市場におり、供給は限られています。入居者のニーズにマッチしたペット可物件に空室が出ると、一般の物件よりも多くの問い合わせが短期間に集まる可能性があります。
4. 比較的高い家賃設定ができる
入居者のニーズにマッチしたペット可物件は希少価値が高いため、周辺の同条件の一般物件よりも高い家賃を設定しても入居が決まることもあります。入居希望者は、「ペットと一緒に暮らせる」という付加価値に対して、相場よりも高い家賃を支払うことを許容する傾向にあります。
オーナーにとっては、この上乗せ分の家賃がペット飼育に伴う修繕リスクや特別な管理の手間をカバーし、利益を生み出すための源泉となります。
5. 初期収入を増やせる
ペット可物件の運営では、将来のリスクに備えるため、入居者との契約時に敷金や礼金を通常より1カ月~2カ月分程度高く設定するのが一般的です。これにより、契約当初の初期収入を増やせる可能性があります。
ペットによる壁や床へのひっかき傷、臭いの付着などは、通常の経年劣化による損耗とは異なり、退去時の原状回復費用が高額になるケースも少なくありません。そのため、オーナーは万が一の修繕費用に充当することを目的として、契約時に初期費用を多めに預かるという対策を講じることが可能です。
不動産投資におけるペット可物件のデメリット
不動産投資におけるペット可物件には、メリットだけでなくデメリットも存在します。
- ターゲット層が限定される
- 近隣トラブルが発生する可能性がある
- 維持管理コストがかかる
- 原状回復費用が増加するリスクがある
順番に解説します。
1. ターゲット層が限定される
ペット可物件は、ペットを飼育しない入居者、特に動物が苦手な方やアレルギーを持つ方からは敬遠される可能性があります。その結果、ターゲットとする入居者の母数が狭まる傾向にあります。
ペットを飼わない方の中には、鳴き声や足音といった騒音、動物特有の臭いなどを懸念して、ペット可物件を避ける方も少なくありません。そのため、入居者を幅広く募集するよりも、ターゲットを絞り込み、その層に響くアプローチを行うことが大切です。
可能な範囲で防音性を高めたり、宣伝写真でペットが実際に生活している様子をイメージできるような素材を用意したりするとよいでしょう。
2. 近隣トラブルが発生する可能性がある
ペット可物件では、以下の原因により入居者間や近隣住民とのクレームに発展する可能性があります。
- ペットの鳴き声や室内を走り回る足音
- 動物特有の臭い
- 共用部分でのマナー違反
集合住宅では生活音や臭いがほかの部屋に伝わりやすく、ペットに対する価値観の違いも相まって、問題が大きくなりやすいです。
こうしたトラブルは、物件全体の住環境を損ない、ほかの入居者が退去してしまう原因にもなりかねません。防ぐためには、詳細な飼育ルールを定め、重要事項説明時に入居に関するルールを伝えることが重要です。
3. 維持管理コストがかかる
ペット可物件は一般の賃貸物件と比較して、日々の運営にかかる維持管理コストが増加する傾向にあります。ペットがいることによる特有の汚れや損耗に対応するため、通常よりもきめ細やかな管理が求められるためです。
たとえば、ペットの毛や足についた土などで、エントランスや廊下が汚れやすくなります。設備の故障頻度が高くなりやすい点にも注意が必要です。たとえば、ペットを飼育している物件では毛がエアコンのフィルターに大量に付着し、目詰まりを起こしやすくなります。
ほかにも、以下のようなコストがかかる場合があります。
- 共用部の清掃費
- 排水溝の清掃費
- 消臭剤などの消耗品費
- フェンスの保守・点検費
- ペット専用ゴミ箱の維持管理費
これらの追加コストはあらかじめ収支計画に正確に織り込み、家賃や管理費に適切に反映させることが、長期的に安定した経営を実現するうえで不可欠です。
4. 原状回復費用が増加するリスクがある
ペットによる室内の損耗は避けることが難しく、壁や床への傷、一度染み付くと除去が難しい臭いにより、修繕費用が通常よりも高くなる傾向にあります。
たとえば、ペットの爪によるひっかき傷は、壁紙の表面だけでなく、その下地である石膏ボードにまで達することがあります。その場合、部分的な補修では済まず、広範囲を張替えなければなりません。
修繕内容によっては、入居者から預かった敷金だけではカバーしきれない可能性があります。このリスクには、契約時に「敷金を1カ月分上乗せする」「原状回復に関する特約を明記する」といった対策で備えるのが一般的です。
ペット可物件の不動産投資を成功させるポイント
ペット可物件の不動産投資を成功させるポイントとして以下の3つを紹介します。
- 原状回復条件を明確化する
- ペット飼育の規定を定め募集する
- ペット用の設備を導入する
順番に詳しく解説します。
1. 原状回復条件を明確化する
退去時に発生しがちな修繕費用に関するトラブルと、予期せぬオーナー負担を避けるため、賃貸借契約書にペットによる損耗の原状回復に関する条件を具体的かつ明確に定めることが大切です。
国土交通省が公表する「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、ペットが付けた傷や臭いは通常の経年劣化とはみなされず、原則として入居者の負担とされています。しかし、どの程度の損傷までを負担してもらうか、その費用はいくらが妥当か、といった点で紛争に発展しやすいです。
契約書で事前に詳細な合意を交わしておくことが、オーナー自身を守る法的な盾となります。契約締結の段階で、専門家の助言も得ながら法的に有効な契約書を準備しましょう。契約内容を入居者に丁寧に説明して、双方が納得したうえで合意してもらうプロセスが不可欠です。
2. ペット飼育の規定を定め募集する
すべての入居者が快適に暮らせる住環境を維持するためには、入居者間のトラブルを未然に防ぐ対策が欠かせません。飼育可能なペットの条件や飼育マナー(鳴き声対策や糞尿処理方法)、共用部分でのマナーなどを定めた規定を作成し、遵守できる入居者を募集することが成功の鍵です。
ルールが曖昧な状態では、騒音やマナー違反といった問題が発生した際に、オーナーや管理会社が注意や指導をしにくくなります。明確なルールは、入居者にとっては責任ある飼育を行うための指針となり、オーナーにとっては物件の資産価値と住環境を維持するための正当な管理の根拠となります。
3. ペット用の設備を導入する
ペット専用の設備を導入することは、物件の付加価値を大きく高めます。相場より高い家賃設定を正当化し、入居者の満足度向上と長期入居を促進するうえで効果的な戦略です。
ほかの物件にはない専用設備は、そのニーズに直接応えるものであり、物件選びの決め手になる可能性があります。入居希望者の関心を引きつけやすいペット用設備の一例には、防音・防臭設備が挙げられます。
すべての設備を一度に導入する必要はありません。物件のターゲット層や予算に合わせて、費用対効果の高い設備を戦略的に選択・投資することが、収益を最大化する鍵となります。
不動産投資におけるペット可物件の選び方
ペット可物件への投資を成功させるには、入居者目線での物件選びが不可欠です。具体的には、以下のような項目を確認し物件を選定しましょう。
- ペットとの暮らしに適したエリアか
- ペットが快適に過ごせる物件か
エリアは「駅から近い」「商業施設が充実」といった視点だけでなく、公園や動物病院への動線も確認しておくと安心です。入居者は日々の散歩を楽しめる公園や緑道、万が一の際に駆け込める動物病院の場所を、物件選びの条件として考える可能性があるためです。
また、物件も音を気にせず伸び伸びと暮らせるなら、魅力的に映ります。ストレスなく過ごせる広さが確保されているか、ペットが通り抜けられない柵が設けられているかなど、快適性や安全性も考慮して物件を選ぶことが重要です。
リスク管理をしたうえで、長期安定運営を目指す
ペット可物件への不動産投資は、高い需要を背景に安定収益が期待できる魅力的な市場です。しかし、原状回復費用の高騰や近隣トラブルといった特有のリスクも伴います。成功するには、これらのリスクを恐れるのではなく、事前に把握して具体的な対策を講じることが大切です。
賃貸借契約書で修繕のルールを明確に定め、トラブルを予防します。また、入居者に魅力的な設備を導入し、物件の付加価値を高めるのも効果的です。こうした準備を丁寧に行うことでリスクを管理し、長期的に安定した賃貸経営を実現させましょう。
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