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公開日: 2024.08.08

不動産登記法の改正で住所・氏名の変更登記が義務化! 変更点と、自分で手続きする方法も解説

不動産登記法の改正で住所・氏名の変更登記が義務化! 変更点と、自分で手続きする方法も解説

不動産登記法の改正により、不動産所有者の住所や氏名に変更があった場合の変更登記が義務化されることになりました。今後は期限内に登記申請をしなければ罰則を科せられるおそれがあるため、法改正による変更点を正しく理解しておく必要があります。この記事では、住所変更登記・氏名変更登記の義務化の内容と、自分で手続きする方法を解説します。

住所・氏名の変更登記とは

住所・氏名の変更登記とは、不動産所有者の登記簿上の住所や氏名の表記を変更する手続きのことです。

不動産登記簿の権利部(甲区)には、その不動産の所有者の住所・氏名が記載されています。しかし、所有者の住所や氏名は、引っ越しや結婚・離婚などによって変更されることがあります。その際に、登記簿上の住所・氏名を変更するために行う手続きが、住所・氏名の変更登記です。

これまで、住所・氏名の変更登記をするかどうかは任意でした。しかし、近年では、登記簿を見ても所有者の住所・氏名が分からない「所有者不明土地」の増加が問題視されています。

所有者と連絡がとれなければ、都市開発に必要な土地の利活用や、自然災害等からの復旧・復興に必要な工事などを進めることができません。

このような問題を解消するために不動産登記法が改正され、住所・氏名の変更登記が義務化されることになったのです。

住所・氏名の変更登記の義務化の内容

それでは、住所・氏名の変更登記を義務化する改正不動産登記法で、具体的にどのようなことが定められたのかをみていきましょう。

義務化されるのは2026年4月から

改正不動産登記法は2021年4月28日に公布されていますが、住所・氏名の変更登記を義務化する規定が施行されるのは2026年4月1日からとされています。

つまり、住所変更登記・氏名変更登記の申請は2026年4月1日から義務化されるということです。

登記申請の期限は変更日から2年以内

義務化の規定が施行された後は、住所や氏名に変更があった日から2年以内に変更登記の申請をする必要があります。

「住所や氏名に変更があった日」とは、住民票上の住所や戸籍上の氏名の記載が変更された日のことです。

役所に住民票や戸籍の変更届を提出したら、忘れないうちに住所や氏名の変更登記の申請もしておいた方がよいでしょう。

過去の変更も義務化の対象

改正法の施行前に住所や氏名を変更した場合も、改正法の施行後は義務化の対象となります。

その場合の変更登記の申請期限は、改正法の施行日(2026年4月1日)の2年後に当たる2028年4月1日です。

現在、既に住所や氏名を変更した方も、今後は義務化されますので、早めに変更登記の手続きをしておいた方がよいでしょう。

登記申請を怠った場合の罰則

正当な理由なく期限内に住所・氏名の変更登記の申請をしなかった場合は、5万円以下の過料に処せられます。

「正当な理由」の具体例は、今後、法務省からの通達などで明確化される予定です。登記名義人の重病や経済的困窮、DV被害を受けて避難を余儀なくされている場合などが想定されますが、他にも具体例が挙げられる可能性があります。

個人だけでなく法人も義務化の対象

住所・氏名の変更登記の義務化は、個人だけでなく法人対象とされています。

本記事ではここまで「住所・氏名」と表現してきましたが、改正不動産登記法では「氏名もしくは名称または住所」と表現されています。

したがって、不動産を所有している法人が名称や本店所在地を変更した場合にも、これまでに解説した義務化の規定が適用されます。

住所・氏名の変更登記の手続き

住所・氏名の変更登記の申請は比較的容易な手続きなので、自分で行ってみるのもよいでしょう。

申請方法は、法務局の窓口での申請・郵送での申請・オンラインでの申請の3種類があります。

法務局の窓口で申請

法務局の窓口に登記申請書と添付書類を持参すれば、住所・氏名の変更登記の申請ができます。

申請先

申請先は、所有不動産の所在地を管轄する法務局です。

必要書類

登記申請書は、法務局のホームページからダウンロードできます。プリントアウトする際は、必ずA4の用紙を使用してください。

住所変更登記の申請をする場合は、住民票または戸籍の附票(登記簿上の住所から現在の住所までの変遷が明らかになるもの)を添付する必要があります。

ただし、住民票のみで住所移転の経緯が確認できる場合は、登記申請書に住民票コードを記載することで、住民票の添付を省略することが可能です。

住民票コードとは、無作為の11桁の数字です。2002年に「住民票コードの通知書」が全世帯に送付されています。不明な場合は、お住まいの区役所戸籍課の窓口等で申請すればコード確認ができます。

氏名変更登記の申請をする場合は、次の書類を添付する必要があります。

  • 戸籍関係書類(戸籍謄抄本や除籍謄抄本で、登記簿上の氏名と現在の氏名、氏名を変更した日が記載されているもの)
  • 住民票(本籍地の記載があるもの)

なお、引っ越しや転籍をしてから長年が経過しているケースなどでは、必要書類が揃わないこともあります。その場合は「不在籍証明書」や「不在住証明書」を取得するなど複雑な手続きが必要となりますので、司法書士に相談した方がよいでしょう。

費用

住民票や戸籍の附票を取得する際は、1通300円程度の手数料がかかります。戸籍謄本は1通450円、除籍謄本や改正原戸籍謄本は1通750円の手数料がかかります。

登記を申請する際には、登録免許税を納めるために収入印紙を購入します。

住所・氏名の変更手続きにかかる登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。

一戸建ての場合は、土地1件と建物1件で登録免許税2,000円となることが多いでしょう。ただし、土地が数筆にまたがっているような場合などでは、その分だけ登録免許税がかかります。

マンションの場合は、土地が専有部分と敷地部分とで別々にカウントされるため、登録免許税は最低でも2,000円となります。専有部分や敷地部分が数筆にまたがっている場合は、その分だけ登録免許税がかかります。

登録免許税分の収入印紙を購入したら、A4の白紙に貼ります。

登記申請

登記申請書に必要事項を記入したら、収入印紙を貼った白紙と一緒にホチキスで留め、登記申請書と白紙との間に契印をします。

そして、添付書類と一緒に法務局の窓口に提出すれば、申請手続きは完了です。

申請から1週間程度が経過すると法務局での登記が完了し、登記完了証が交付されます。これを受領すれば、すべての手続きが終了します。

郵送で申請

郵送で申請する場合は、登記申請書(登録免許税分の収入印紙を貼った白紙をホチキスで留めて契印したもの)と添付書類を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、管轄の法務局宛に書留郵便で送付します。

封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載

登記完了証の返送を希望する場合は、返信用封筒も同封しましょう。返信用封筒にも書留郵便料分の郵便切手が必要なので、ご注意ください。

オンラインで申請

住所・氏名の変更登記は、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用してオンラインで申請することもできます。

ただし、オンラインのみで登記手続きを完結できるのは、住所変更登記を申請する場合で、住民票の記載内容のみで住所移転の経緯を確認できる場合だけです。この場合は、オンライン申請時に住民票コードを提供することによって添付書類が不要となるからです。

戸籍の附票や戸籍謄本などの記載内容は、現時点ではオンラインで証明することができません。

そのため、住所の変遷を証明するために戸籍の附票の添付が必要な場合や、氏名変更登記をする場合は、オンライン申請をした後、添付書類を管轄の法務局へ持参または郵送する必要があります。

職権による住所・氏名の変更登記も導入

改正不動産登記法では、所有者不明土地の発生を予防するために、登記官が職権で住所・氏名の変更登記をする仕組みを導入することも定められています。

登記官が他の公的機関から取得した情報に基づき、登記名義人の氏名や住所が変更されたと認められる場合には、登記官が自ら変更登記をすることができるというものです。

ただし、登記名義人が自然人(権利義務の主体である個人)の場合は、あらかじめ当人からの申出があった場合に限られます。

これは、登記名義人がDVやストーカーなどの被害を受けて避難している場合に、現在の住所を公表されることで危害が及ぶことを防止する必要があるなどの理由によります。当人の了解なく、登記官が無断で変更登記をすることはありませんので、ご安心ください。

登記名義人が法人の場合は、代表者などの了解を得ることなく、登記官が職権で変更登記を行います。

住所・氏名を変更したら早めに登記申請を

これまで、住所や氏名を変更しても、不動産の変更登記をしていない方も多いのではないでしょうか。

2026年4月1日からは住所・氏名の変更登記が義務化され、手続きを怠った場合は5万円以下の過料に処せられるおそれがあります。

不動産をお持ちの方で、引っ越しやご結婚、あるいは離婚などで住所・氏名を変更した方は、早めに変更登記の申請をしておきましょう。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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この記事を書いた人

川端克成 元弁護士・宅地建物取引士

旧司法試験を独学で突破し、2001年に弁護士登録。約15年間、街弁として活動。現在は法律と不動産の知識を活かして、フリーライターとして活動しています。

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