ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる? ポイントと注意点を解説
「住宅ローン控除を受けているけれども、ふるさと納税をしても税金はお得にになるだろうか」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できますが、今回は2つの控除を併用する場合の注意点や、どれくらいの節税効果が得られるのかについて解説していきます。
CONTENTS目次
ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる
ふるさと納税と住宅ローン減税は、ともに所得税と住民税から、控除される仕組みです。
併用する際に、所得税や住民税の税額が0円にならない限り、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用が可能となります。
まずはそれぞれの制度の概要を見ていきましょう。
住宅ローン控除
住宅ローン控除は、「住宅借入金等特別控除」という制度です。年末時点の借入残高(後述)の1%に相当する金額が、一定期間、所得税から控除(マイナス)されます。
例えば、住宅ローンの借入残高が年末時点で6,000万円であった場合、年間に受けられる上限の最大金額40万円が、所得税と住民税から控除されます。その人がもともと支払う所得税額が40万円に満たない場合、例えば所得税額が33万円なら、残りの7万円は住民税から控除されます(控除上限あり)。
なお、借入残高には上限が設定されています。長期優良住宅の取得なら5,000万円、そのほかの一般住宅の取得は4,000万円が借入残高の上限となっています。
控除期間
住宅ローン控除を受けられる期間は10年間ですが、2019年に消費税が10%に改正されたことに伴って、控除期間が13年に延長される特例が適用されるケースもあります(2019年10月から2020年12月までに消費税10%で購入、入居していることなどの要件あり)。
また新型コロナウイルスの影響によって新居に予定通りに引っ越せないなどの場合には、控除期間が延期される緩和措置が施されています。
11年目から13年目の控除額は、「年末時点の借入残高の1%」か「建物価格の2%÷3」のどちらか低い金額が適用されます。
ふるさと納税
ふるさと納税は、住んでいる場所以外の自治体に「寄付」をすると、確定申告をすることで寄付の合計額から2,000円を差し引いた金額が、所得税と住民税から控除される仕組みです。
90,000円分のふるさと納税をした場合、控除額は、2,000円を差し引いた88,000円になります。
ふるさと納税の控除を受けるためには、「確定申告」もしくは「ワンストップ特例制度」のいずれかを使います。確定申告をする場合には所得税と住民税から控除され、ワンストップ特例制度では住民税から控除されます。
併用時の注意点
住宅ローン控除とふるさと納税の併用は可能ですが、申告する方法によって住宅ローン控除の控除額に影響する可能性があります。
確定申告によって併用する場合、ざっくりいうと住宅ローン控除額が所得税額(課税総所得金額×税率)を超える場合に影響する可能性があります。
確定申告をする場合は注意が必要
確定申告をする場合、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用すると、ふるさと納税から先に控除されます。ふるさと納税をすることによって、住宅ローン控除の控除枠が減ってしまう状態(住宅ローン控除で控除できた部分をふるさと納税部分で控除)となります。
先の例で所得税33万円の枠が、想定よりも少なくなることになります。
所得税の税率を20%として、ふるさと納税を7万円した場合の控除を以下の式で計算すると、13,600円が所得税から控除されます。この金額分が、住宅ローン控除としては利用できなくなります。
住宅ローン控除が受けられる40万円のうち、所得税から控除されるのが31万6,400円になり、残りの8万3,600円が住民税から控除されます。
住民税から控除されるふるさと納税の控除額は5万4,400円です。
この例の場合、ふるさと納税を併用しても所得税、住民税ともに影響はない結果となりましたが、所得と住宅ローン控除とふるさと納税それぞれの金額が変わると、影響を受ける場合もあります。
なお住宅ローン控除は、初年度は必ず確定申告が必要になります。
ワンストップ特例制度の利用がおすすめ
住宅ローン控除が2年目以降で、ふるさと納税による控除を確定申告ではなく「ワンストップ特例制度」で行えば、上記の問題は発生しません。
ワンストップ特例制度は以下の条件を満たした場合、寄付先の自治体にワンストップ特例申請書を提出するだけで控除されます。
- 確定申告や住民税の申告が不要な給与所得者
- 1年間での寄付先が5自治体以内
住宅ローン控除の控除額は、最初に所得税から差し引かれ、所得税で控除しきれなかったらその残りの分は住民税から控除されます。しかし、住民税から控除される金額の上限は、課税総所得金額の7%(最大136,500円)です。
住宅ローン控除を受けても住民税額が0円とならない場合、ワンストップ特例を申請することで、ふるさと納税の控除分の全額を住民税から差し引いて税負担を軽減できます。
ただし住宅ローン控除を初めて受ける場合の他にも、医療費控除を受ける場合は、確定申告が必要となるため、ワンストップ特例による申請ができない点は注意しましょう。
減税額をシミュレーション
それでは改めて、住宅ローン控除とふるさと納税を併用した場合の税額をイメージできるよう、シミュレーションしてみます。条件は、以下の通りです。
- 会社員(独身男性)
- 年収:7,000,000円
- 社会保険料:1,000,000円
- 年末時点の住宅ローン借入高:6,000万円
- ふるさと納税額:80,000円
控除を受ける前の税額
まずはふるさと納税と住宅ローン控除を受ける前の所得税額と住民税額を計算します。
所得控除とは、基礎控除や社会保険料控除などがあります。それぞれの金額は、以下の通りです。
- 給与所得控除:1,800,000 円(収入金額×10%+1,100,000円)
※計算式は給与等の収入金額によって変わる - 基礎控除:480,000円
- 社会保険料控除:1,000,000円
所得税
最初に所得税の課税所得を計算します。
課税所得=年収-給与所得控除-所得控除
=700万円-1,800,000円-480,000円-1,000,000円
=3,720,000円
課税所得金額が、3,300,000円〜 6,949,000円までの場合、所得税額は以下の通りです。
所得税額=課税所得×20%-427,500円
=316,500円
よってモデルケースにおける所得税額は、316,500円となります。
住民税
住民税は、約10%です。所得割と均等割の合計金額から税額控除を差し引いて計算します。東京都の例で見てみます。
所得割額=( 総所得金額-所得控除 )×税率(10%)-税額控除
均等割額=都民税額(1,500円)+市区市町村民税額(3,500円)
控除を考慮しない住民税額は、以下の通りです。
=379,500円+5,000
=384,500円
したがって所得税と住民税の合計は、316,500円+384,500円=701,000円です。
ふるさと納税の寄附金控除を受けたあとの税額
ふるさと納税で納税(寄付)した金額は80,000円です。まず自己負担2,000円を除いた78,000円が控除対象となります。
確定申告による申告の場合、所得税から先に控除されます。所得税の税率20%をかけて、15,600円が所得税から控除されます。
残りの62,400円が住民税から控除となります。
住宅ローン控除を受けたあとの税額
次に、住宅ローン控除を受けて減額されたあとの所得税と住民税を計算します。
住宅ローン控除額は、年末時点の借入残高6,000万円の1%は60万円ですが、上限が設定されているので40万円です。
所得税は316,500円ですが、先にふるさと納税で15,600円分控除を受けているので、住宅ローンの控除額は、300,900円となります。所得税から引ききれなかった金額の99,100円が、住民税から差し引かれます。住宅ローン控除の住民税からの控除の上限は136,500円なので、全額が控除されることになりました。
モデルケースにおける所得税は316,500円で、住民税は384,5000円です。ふるさと納税の控除額と住宅ローン控除額40万円とで、所得税は0円になりました。その後、残りの控除額、ふるさと納税62,400円と住宅ローン控除99,100円が住民税から差し引かれて最終的な税額は223,000円となります。
ふるさと納税の上限への影響も
上記のシミュレーションでは触れられていませんが、ふるさと納税の限度額を住宅ローン控除を考慮せずに想定していると、2,000円の自己負担でできると考えていたふるさと納税の寄附金の上限額が変わる可能性があります。ふるさと納税がフル活用できなかった、ということも起こります。
住宅ローン控除について所得税で控除しきれなかった額は、住民税で控除します。その後、ふるさと納税分の控除額を住民税で控除します。その際、住民税以上にふるさと納税分があると、控除しきれなくなる結果となります。
例えば東京都中央区のホームページには、住宅ローン控除などとの併用も考慮のうえで、ふるさと納税の限度額が試算できます。
ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する際には、申告の方法が確定申告だと、所得税から控除されると想定されていた住宅ローン控除の金額から変わります。またふるさと納税の上限枠が減る可能性があることを覚えておき、併用する際には、事前にシミュレーションすることをおすすめします。
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