この記事を書いた人 中村昌弘
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まずは、そもそもなぜ家賃滞納が起こるのか?という点について知っておきましょう。家賃滞納をしてしまうよくある理由は以下の通りです。
もちろん、上記以外にも家賃滞納が起こる理由はありますが、やはり多い理由としては何かの事情で「収入減(もしくはゼロ)」になるケースです。この点を踏まえて、次章より大家目線で家賃を滞納されたときの対処法を解説していきます。
入居者から家賃を滞納されたときに大家さんが行う手続きは以下の通りです。
まずは「交渉」をします。管理会社に家賃の回収代行を依頼しているなら管理会社が行ってくれますが、たとえば家賃は直接大家さんの口座へ振り込む…などは自分で交渉しなければいけません。
家賃の支払いが数日遅れている程度であれば、一旦電話などで確認をして「払い忘れ」であればすぐに支払ってもらえるケースもあるでしょう。 また、既に何度か支払いを滞納しているケースは、退去を迫る可能性を「注意喚起」することもできます。
次項で「訴訟」について解説しますが、訴訟しても入居者が滞納家賃を支払えないことも多く、大家さんの負担が大きくなるだけ…というパターンも多いです。そのため、訴訟を起こさずに交渉で解決できるのがベストな方法です。
交渉をしても家賃を支払ってくれない場合には、訴訟に移行せざるを得ません。訴訟の手続きには大きく「支払督促・少額訴訟」「明渡請求訴訟」があり、まずは前者の「支払督促・少額訴訟」から解説していきます。
支払督促とは、裁判所へ申し立てることで裁判所から入居者へ「家賃の支払い」の督促通知を送付することです。督促の流れは以下の通りです。
仮執行宣言付支払督促は、最終的に強制執行(財産の没収など)するための書類になるため、通常の「督促」よりも入居者にかけるプレッシャーは大きいです。
一方、少額訴訟とは60万円以下の金銭支払いを請求するときの訴訟です。少額訴訟は、「原則1回」という短期間で完了する訴訟手続きになり、通常の訴訟よりも安価という特徴があります。
少額訴訟の流れは以下の通りです。
ただし、滞納者の所在が不明な場合は少額訴訟自体ができません。また、相手側が弁護士に依頼して通常訴訟へ移行することもあります。滞納者が行方不明の場合の対処法については後述します。
次に「明渡請求訴訟」について解説します。明渡請求訴訟は通常の民事訴訟で、滞納家賃を入居者に支払ってもらった上で、さらに物件から退去させたいときに利用する訴訟です。
要は、悪質な滞納者であり今後も家賃滞納の恐れがある…などの入居者の場合の対処法です。ただし、明渡請求訴訟は一般的な訴訟手続きになるため、訴える側も法的な知識が必要です。
そのため、通常は弁護士に依頼する形式を取るので、費用も手間もかかるという点は認識しておいた方がよいでしょう。
前項で、入居者が家賃を滞納したときに大家さんが何をすべきか?が分かったと思います。次に、各手続きをする際に大家さんが注意すべき以下について解説していきます。
上述のように、滞納者が行方不明の場合には少額訴訟なども行えません。そのため、以下の対処法を知っておきましょう。
入居者が行方不明の場合には、まず連帯保証人がいるのであれば連帯保証人に連絡をします。連帯保証人が配偶者ではなく親御さんなどであれば、そもそも入居者が家賃を滞納していることを知らないケースが多いです。
そのため、家賃を滞納している旨と入居者に連絡が取れない旨を伝えて、家賃滞納分をどうするか?について話し合います。
公示送達とは、「送付すべき書類をいつでも交付する旨」を訴訟所の提示版に一定期間提示することで、「送付して確認した」という効果を発揮させる方法です。
訴訟などで滞納者に送付すべき書類があっても、滞納者が行方不明であれば訴訟自体ができません。そのため、公示送達という手段を使うことで「書類を送付して先方も確認した」という状態にして、訴訟手続きに進む…というわけです。
いくら家賃を滞納しているとはいえ、以下のような督促行為を行ってしまうと法律に違反するリスクがあり、仮に訴訟へ移行したときは不利になることもあるので避けましょう。
また、滞納家賃は時効によって消滅してしまう点も注意しましょう。家賃は民法169条の「定期給付債権」に該当するため、5年の消滅時効が適用されます。「5年」という期間がカウントされるのは家賃を支払うべき日の翌日からです。
この時効は、大家さんが支払督促や訴訟を行うことで中断することもできますし、そもそも5年間も滞納者を放置するケースは極めて稀でしょう。ただし、家賃の滞納が発生しているのであれば、「滞納家賃には時効がある」という事実を認識しておくことは重要です。
前項までで、家賃を滞納された「後」の対処法を解説してきました。次に、そもそも家賃を滞納されないための対処法である以下を解説します。
上述したように、家賃を滞納する理由で最も多いのは、何かの事情によって収入が減ったり、一時的に収入がゼロになったりすることです。そのため、滞納リスクを低くするためには、入居者が「きちんと返済できる人」か判断すればよいというわけです。
「きちんと返済できる人」かを見極める方法としては、「返済比率」を明確にするという方法があります。返済比率とは「年間返済額÷年収」のことで、年収に占める家賃支払い額を数値化したものです。
たとえば、年収500万円の方が家賃月々10万円(年間120万円)の物件に住めば返済比率は24%になります。
この返済比率を定めていない場合には、「返済比率30%を超える場合はNG」などと定めておきます。あるいは、定めているものの返済比率を高めに設定している場合は返済比率を厳しくすることで滞納リスクはヘッジできるでしょう。
ただし、返済比率を厳しくするということは、それだけ入居者できる人数が減ります。そのため、空室リスクが大きくなる点には注意しましょう。
管理会社に家賃回収の代行を依頼しているケースも多いと思うので、依頼する管理会社が家賃回収のノウハウを持っているか?も重要です。そのため、管理戸数が多く実績・経験が豊富な管理会社に委託するのが無難です。
実績・経験が豊富な管理会社であれば、今まで家賃を回収した経験もあるため、以下のような対策が社内で蓄積されてる場合も多いでしょう。
入居者と賃貸借契約を結ぶときは、連帯保証人を立てるか家賃保証会社に保証してもらうかの二択のケースが多いです。そして、保証会社を立てておけば、家賃を滞納した場合も保証してもらえますが、以下の点は知っておきましょう。
まず、保証会社は家賃を回収できないと自社の損失になるため、取り立てが厳しいケースが多いです。そのため、入居者とトラブルに発展する可能性もゼロでない点は認識しておきましょう。
また、家賃保証といっても「家賃を滞納された期間の全額」が保証されるかは、保証会社やプランによるので、保証会社に依頼する前に内容は確認しておく必要があります。
前項までは大家さん目線でしたが、ここからは入居者目線で家賃滞納に関する対処法を解説します。家賃滞納する前に入居者がやっておくべきことは以下の点です。
まずは、振り込み日や引き落とし日の前に、大家さんに支払いが遅れる旨を連絡します。そうすることで、無断で家賃を滞納するよりは大家さんの心証が良くなり、大家さんとの関係が悪化しにくいです。
また、分割で支払えないか?支払日を変更できないか?などの事前相談が可能な場合もあります。事前相談することで滞納を回避できるのであれば、大家さんも相談に乗ってくれるかもしれません。
そして、そもそも自分の支払える範囲の物件に住むということも、家賃を滞納しないための対策といえるでしょう。一般的には、月収の1/3以下の家賃が適切といわれています。
次に、入居者が抱く家賃滞納に関する疑問である以下を解説します。
家賃を滞納したときは、民法第419条の規定(金銭債務の特則)によって大家さんは、滞納した家賃とは別に滞納者へ遅延損害金を請求できます。
ただし、その上限は消費者契約法第9条第2号によって、年14.6%の利率が最大であると決まっているので、それ以上の利率を請求されたときは違法であると認識しておきましょう。
自己破産すると、税金などの一部の債務を除いて、基本的に「借金」といわれる金銭は法的にはなくなります。そして、その中には滞納家賃も含まれるので、法的には自己破産すると滞納家賃も免責となります。
ただし「家賃不払い」には変わりないので、その理由で賃貸借契約を解除されることがある点は認識しておきましょう。また、そもそも自己破産するとクレジットカードを作れない・ローンを組めないなどのリスクもあるため、その点を認識した上で自己破産するか判断しなければなりません。
家賃滞納を繰り返すと、別の物件で賃貸借契約を結べない可能性はあります。というのも、保証会社を付けて賃貸借契約を結び、家賃を滞納した場合には信用履歴に情報が載ることがあるからです。
信用履歴というのは、CIC、JICC、全国銀行個人信用情報センターなどが管理していて、金融機関や保証会社は入居審査やローン審査のときに情報を照会します。
そのため、次の物件でも保証会社を付けるとなると、保証会社が信用情報を照会して家賃滞納が発覚することで、賃貸借契約を結べない可能性はあります。
このように、家賃を滞納されている大家さんには、交渉・督促・訴訟などの対処法があります。ただし、いずれも労力がかかるので、まずは家賃を滞納されない対策が重要です。また、入居者側もそもそも滞納しないような物件に住むなど、家賃滞納をしないための対策は頭に入れておく必要があります。
※本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。
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