RC造、S造、SRC造、木造とは? 構造別のメリット・デメリットや選び方
ご自身が所有している建物の構造を気にしたことはあるでしょうか? 家具や食器にはこだわるけど、建物の構造はそれほど気にしてはいないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
この記事では、S造、RC造、SRC造、木造の特徴と、どの構造がどのような住宅に向いているかを説明していきます。ぜひこの機会に建物の構造について勉強して、不動産選びの参考にしましょう。
建物の構造
建物の構造は、大きく分けると、S造(鉄骨造)、RC造(鉄筋コンクリート造)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)、木造の4種類があります。それぞれ「えす(ぞう)」「あーるしー(ぞう)」「えすあーるしー(ぞう)」「もくぞう」とよびます。
簡単にそれぞれの特徴を以下に説明します。
- S造:軽くて柔らかい。大空間に向いている
- RC造:重くて硬い。耐火性、耐久性、遮音性に優れている
- SRC造:SとRC両方の特徴を持つ。建設コストは高い
- 木造:小さい建物に向いている。小規模であればS造、RC造と比べて建設コストは安い
RC造(鉄筋コンクリート造)
RC造(鉄筋コンクリート造)とは、コンクリートを鉄筋で補強した部材を骨組みとした構造です。コンクリートは硬い一方で変形しにくいため、粘り強い鉄筋で補強することで優れた構造材となります。
鉄筋は火災に弱く、サビで腐食しやすいという欠点がありますが、耐久性に優れたコンクリートで保護することで、耐火性・耐久性に優れた構造とすることができます。
また、コンクリートは重量が大きいため、大きな空間には向いていませんが、遮音性や断熱性に優れ、またコンクリートは硬い材料で床の振動も発生しづらいことから、マンションなどに採用されることが多いです。
コンクリートは建設現場で打設(打ち固めること)して作るため、どうしてもS造と比べると品質は一定ではありません。また、建設期間は長くかかります。
従来は中規模程度の建物までに対して主に採用されていましたが、最近では高強度の材料を使用することで高層の建物に採用されたり、工場で製作されたプレキャストコンクリートを使用することで、現場での工事期間を短縮するなど活用の場が広がってきています。
S造(鉄骨造)
S造(鉄骨造)とは、鉄を柱や梁などの骨組みとした構造です。鉄は軽くて強く、粘り強いという特徴を持つため、高層ビルや体育館、室内の柱を減らしたい事務所ビルなどの「大きな空間が必要な建物」で採用されることが多いです。
粘り強いという特徴は、地震などの力が加わった際に抵抗して耐えるのではなく、ゴムのように変形して力を吸収することを意味しています。そのため壊れはしないけれども、地震の際に大きく揺れたり、共振によって高層ビルが風で揺れたりすることがあります。
工場で製作された部材を現場で組み立てるため、品質が安定しているという特徴もあります。S造は鋼材の厚みの違いで「重量鉄骨」と「軽量鉄骨」に分けられ、厚みの薄い鉄骨を使用した軽量鉄骨造は、工場で部材を大量生産することができるので、建設も比較的簡単で安価。こちらは小規模な店舗、アパートや戸建住宅で採用されることもあります。
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)
SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)とは、一般的に鉄筋コンクリート造の部材の中に鉄骨を内蔵した骨組みを使用する構造のことを指します。硬く剛強な鉄筋コンクリート造と、柔らかく粘り強い鉄骨造というお互いの利点を生かした構造です。
S造とRC造、それぞれの特徴を併せ持ち、大空間を実現したり、耐震性に優れた建物とすることができるため、超高層ビルなどの大規模な建物で採用されることが多いです。RC造と同様に遮音性や断熱性にも優れるため、マンションでも採用されます。
ただし、建設に手間がかかり建設コストが高いことと、高強度の鉄筋コンクリート造の普及により、以前より活用の場は減ってきています。
木造
木造とはスギ、ヒノキ、ヒバなどの木材を建物の骨組みとした構造のことで、日本では最も採用されている構造です。
材料は安価で建設も比較的簡単なため、戸建住宅や小規模アパートなどで採用されることが多いですが、最近では技術の進歩により中規模ビルなどで採用されることもあります。
住宅では骨組みの形式により大きく2つの工法に分類でき、「在来軸組工法」と「2×4(ツーバイフォー)工法」があります。
在来軸組工法は、伝統的な工法で重量に耐える柱梁と、地震や台風に耐える耐力壁や筋交いを組み合わせた工法です。日本の戸建住宅の多くは在来軸組工法を採用しています。
一方、2×4工法はアメリカから輸入された工法で、角材の枠に板を打ち付けて床や壁を作っていく工法です。この角材の寸法が2インチ×4インチのため2×4工法とよばれます。在来軸組工法と比較して工事が簡単というメリットがありますが、建物構造が面で構成されているため、自由な間取りを設計しにくいなどのデメリットがあります。
RC造、S造、SRC造、木造のメリット・デメリット
RC造のメリット
RC造のメリットは、遮音性、断熱性、耐久性に優れるという点です。床や壁は厚いコンクリートでできているため、隣の部屋や上下階の部屋からの騒音や振動を遮断してくれます。
外部からの熱も室内に伝わりづらく、屋根壁一体の高気密であることから空調の省エネルギー性能にも優れています。コンクリートは腐食に強い材料であるため、耐久性にも優れ、長期間使用することができます。耐火性にも優れ、特別な仕上げを行わなくても耐久性、耐火性に優れた建物とすることができます。
RC造のデメリット
高気密であるがゆえに、通気性が悪く結露やカビなどが発生しやすいことが挙げられます。また、重量が大きいという材料の特性上、大空間は作りづらいため室内に壁や柱などが多く必要となります。広く、開放的な空間にはあまり適していません。
S造のメリット
S造の最大のメリットは、軽くて強いという特徴を生かして自由な間取り空間を構成することができる点です。柱などの部材自体を細くすることが可能なため、RC造では実現できなかったような広々とした空間や、開放的な大きな窓を採用することも可能です。
RC造には劣りますが、屋根や外壁に断熱性の高い材料を使用すれば、空調の省エネ対策ができます。また、軽量鉄骨造とすれば建設コストを抑えることもできます。
S造のデメリット
デメリットとしては、鉄は軽い材料であるため振動が伝わりやすいという点が挙げられます。さらに、間仕切り壁の性能にもよりますが、RC造と比較すると遮音性にも劣ります。
マンションなどでは隣の部屋の方の物音が気になるかもしれません。また、鉄は熱に弱いため、RC造と比較すると耐火性にも劣ります。仕上げ材に耐火性に優れたものを使用すれば耐火性を高めることも可能ですが、その分建設コストは高くなります。
鉄骨自体はサビなどで腐食することがあるため、RC造と比較すると耐久性には劣ります。こちらも錆止め塗料や外壁に耐久性に優れた材料を使用すれば耐久性を高めることも可能ですが、建設コストは高くなります。
SRC造のメリット
SRC造のメリットは、RC造のメリットに加えて鉄骨のメリットを生かせるため、RC造では実現できなかったような柱のない広々とした空間や、超高層ビルを実現できるなどのメリットがあります。
またRCとSを組み合わせることで、硬いのに粘り強いという非常に耐震性に優れた構造を実現することも可能となります。
SRC造のデメリット
建設コストが高くなるということが挙げられます。RC造の部材の中に鉄骨を収めるため、建設には非常に手間と時間がかかります。そのほかに、高気密ゆえの通気性の悪さはRC造と同じです。
木造のメリット
木造のメリットは、戸建住宅の規模であれば、安価な材料と建設のたやすさを生かして、コストを抑えることができるという点です。さらに、木材は空気中の湿気を吸放湿してくれるため、快適な湿度を保ってくれます。
最近では、S造と同様に、外壁材に断熱性、気密性の高い材料を使用することで省エネルギー性にも優れた木造建物も作られています。
木造のデメリット
鉄と同様に軽い材料であるため、RC造と比較すると振動や遮音性に劣るという点です。また、木材は非常に燃えやすいため、鉄骨などに比べれば耐火性には劣ります。
さらに、木材はシロアリやカビなどによる腐食があるため、耐用年数はRC造やS造と比較すると短く、定期的なメンテナンスが必要です。
どの構造がよいのか?
それぞれの構造の特徴、メリット、デメリットを踏まえて、どのような方にどの物件構造がおすすめか説明していきます。
まず、「家で過ごす時間が長く、家でリラックスして静かに過ごしたい」という方にはRC造がおすすめです。遮音性に優れ、振動も伝わりづらく、隣人に気兼ねなく過ごすことができます。また、大音量で音楽や映画を楽しみたい、小さなお子さんがいて周りへの影響が気になるという方にもおすすめです。
次に、「地震が心配だ」または、「何十年経過しても安心、安全な建物がいい」という方にはSRC造がおすすめです。どんな構造の建物でもしっかりと設計、建設されて適切なメンテナンスが行われていれば問題はありませんが、SRC造は特に耐震性、耐久性、耐火性に優れた構造ですので、心配性な方や、より安全な不動産物件を求める方におすすめです。
最後に、「戸建住宅がいい」「小規模アパートでコストを抑えたい」という方には木造や、軽量鉄骨を使用したS造をおすすめします。小さな規模の物件でしたらRC造と比較してコストを抑えることができますし、木の質感を生かした温かみのある空間はほかの材料では実現できません。戸建住宅や小規模アパートがいいという方にはおすすめです。
特徴を知ることがまずは大切です
この記事では建物の構造の特徴やメリット、デメリットについて解説し、最後にどのような方にどのような構造がおすすめか説明しました。
ここでの説明はあくまで一般的なものであり、実際の物件ごとに特徴は異なります。しかし、それぞれの構造の特徴を知ることで、ご自身の希望により適した物件が見つけることができると思います。不動産物件選びの参考にしてください。
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