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作成日: 2020.05.20

事故物件となった部屋に、次の入居者が決まるまで

事故物件となった部屋に、次の入居者が決まるまで

保有するアパートの入居者が突然死し、賃貸している部屋が事故物件となったエピソードを前回取り上げました。
今回は、その続きです。果たして事故物件となった部屋に次の入居者は決まるでしょうか。

事故物件となった部屋、その後

親から相続した土地にアパートを建て、サラリーマンと兼業しながら始まった不動産投資。そのアパートの一室で入居者の病死が発生しました。突然死です。発見が早かったもののその部屋は「事故物件」となりました。

管理会社と協議し、次の入居者の募集方針を決めました。方針に沿ってまったく順調、というわけではなかったですが、なんとか新たな入居者に入っていただくことができました。

突然死の1カ月後に退去完了

入居者が亡くなって1ヶ月くらい経った後、アパートの管理会社から「退去の完了」と「室内の清掃・修繕の費用」について相談したいとのの連絡を受けました。

入居者突然死の直後、管理会社との話し合いで「部屋のクリーニングと内装クロスの張り替えを行ってピカピカにしてから募集をかける」ことで合意しましたが、それがいよいよ始まります。

しかし退去の完了に1カ月かかるものなのだろうかと思いつつ、打ち合わせ当日を迎えました。
 
まずは退去について。

当初の予定より時間がかかった理由は、亡くなった入居者の身内をあたり、部屋の中の私物を撤去してもらう段取りに時間がかかったから、と説明を受けました。

これについては退去日までの賃料を日割りで負担してもらうため、直接的なダメージはありませんでした。
 
次に清掃・修繕にかかる費用についてです。

清掃および修繕費用

入居者はこの部屋に8年間入居していたのですが、バス・トイレが相当汚くなっていました。

不動産投資によってアパート賃貸を夢見る個人投資家におかれましては、「貸している部屋のバス・トイレが真っ黒に汚されること」、そして「その清掃費用について入居者に負担してもらえる金額は想像したよりも少ないこと」がある、という点について、ちょっと覚えておいた方がよいかもしれません。

世の中には、掃除をサボってかなり汚くなった水回りであっても平気な人はいるのです。

そのほかにも、部屋の汚れ具合や傷み具合は8年間入居していたレベルをやや上回るとのこと。加えて、トイレや廊下に血痕が付着していると聞きました。

「血痕の付着」

それまで聞いていなかったことなので私は驚き、現場を見せてほしいとお願いしました。

しかし、管理会社の担当者いわく

管理会社管理会社

結構な量の血痕が付着しているので、直に見ることは絶対お勧めしません。

記録用に写真を撮ってありますが、これも見ることは極力お勧めしません。

とのこと。
 
えええーっ、一体どれだけの血痕が残っているのか……。

正直、追求したかったですが、担当者の真顔な表情を前にして、それ以上の言葉は出ませんでした。

WATANKOWATANKO

こりゃ、やっぱり完璧に事故物件ですよ……。トホホのホ。

さらに……、

清掃・修繕の見積もりを見て驚きです。

総額50万円。

この部屋のおよそ9ヶ月分の賃料です。主なものは、ビニールクロス張替えに13万円、クッションフロア張替えが8万円、浴室塗装工事に20万円、等々がかかるということです。

賃貸借契約契約者先への請求

管理会社の担当からは、総額のうち6割を賃貸契約先(入居者が勤めていた会社)に請求すると説明がありました。オーナーの自己負担は差し引き4割にも及びます。
 
その明細を見ながら、もっと相手への請求額を増やせないのか、担当者と話し合いました。

しかし担当者によると、これでも今回は事情が事情だけにいつもよりは相手に請求する割合が多いとのことです。

すでに東京都が定めた退去時精算のガイドラインを超えている部分があり、賃貸契約先がガイドラインを盾に支払いに難色を示してくることも考えられると説明されました。

それならば最低でもこの見積もりレベルの金額を確実に勝ち取るために、最初の提示額はネゴ代を入れてもっと高い金額を提示することにしました。

賃借人は契約上では賃貸人と対等な立場にあります。しかしだからといって、自分の所有物ではないものを好きなだけ汚したり壊したりしても構わないというわけではありません。

賃借人は、他人の部屋を借りているわけです。それゆえに自身で保有する住居とは異なり、さまざまな制約があることをよく理解する必要があります。

今回は突然死のケースですが、経年劣化を超えて部屋を傷めていたことに変わりはありません。個人としては心の中で鎮魂歌を唱えることはあっても、オーナーの立場からビジネスマンとしては、相手に対して相応の経済的な負担を冷徹に求めていくつもりでした。

さて、賃貸借契約先に対して管理会社が交渉を行ったところ、先方は管理会社からの提示内容をすんなりと認め、あっさり決着しました。

クロス、床、浴槽と、綺麗にしっかりと仕上げてもらい、ピカピカの状態に復活しました。

賃料を下げて募集開始

清掃・修繕が完了すれば、次は入居の募集となります。

が、この部屋は事故物件となり、入居を検討する者に対してそのことを告知する必要があります。

他の物件に比べて敬遠されることは確実です。なので、入居を決めてもらうためには賃料を減らすなどのメリットを打ち出す必要があります。
 
この物件の空室状態が長引くことを回避するため、賃料は近隣相場から約10%削減することとしました。これが管理会社と事件発生直後に練った募集方針です。

近隣相場より10%マイナスとなると、かなり割安感が打ち出せそうです。

募集は予想を上回り通り苦戦

しかし、賃料カットの作戦でも、すんなりとは決まりませんでした。近隣相場から10%カットにて募集開始をかけて、2ヶ月が過ぎました。
 
時折、管理会社に問い合わせてみると、募集を開始してから何度か問い合わせがあり、中には部屋を案内したケースもあったが、なかなか契約にまでは至らずとのこと。
 
通常の部屋であれば、最長でも1~3月の引っ越しシーズンが来るまで気長に待てば、誰か入居してくれるだろうと楽観的に思えるところもあります。しかし、今回はなにせ事故物件ですので、これから入居者が決まるまでどれくらい待たねばならないか……。

ひょっとしたら何年間も入居が決まらない事態になるかもしれません。このあたりは全く読めません。
 
そんな中、管理会社から連絡が入りました。

入居を検討している方がいて、物件の内容と賃料にはとても魅力を感じるものの、初期費用を抑えたいという要望があり1カ月のフリーレントを希望しているとのこと(フリーレントは入居を決めさせたいがゆえに管理会社から提案したふしもありそうですが…)。

賃料の減額だけでなく、さらにフリーレントまで要求されるとは……。辛いです。
 
フリーレントの見返りに最短入居期間をどのくらいに設定するかと聞くと1年間のこと。それでは入居者が1年後に退去したした場合、賃料はフリーレント1カ月分を12等分するので8.3%引きとなります。

ただでさえ賃料自体を10%カットしているのですから、そこへきてフリーレントの負担を加えると1年では2割近いカットになります。
 
そこで管理会社に「最短入居期間の相場」はどれくらいかと聞くと、自社・他社含めた事例ではやはり1年程度とのこと。この辺りは素人である個人と管理会社との間の情報ギャップがあり、管理会社の説明内容について自分自身で裏付けをとるのはなかなか難しいのが苦しいところです。
 
そこで「フリーレントはやむ無しとしても、せめて最短入居期間は2年にしてほしい」と逆提案しました。
 
管理会社経由で上記を伝えると、入居検討者は「しばらく検討する」との返答でした。

それを聞いて私は半ばあきらめました。入居する気があれば即答するであろうところ、保留ということは他の物件が優位である証とみています。

そして数日後、案の定お断りの連絡をうけ、契約には至りませんでした。

フリーレントと賃料減額

初期費を抑えられるとして魅力を感じる人が多いフリーレントですが、もしフリーレントが適用されたとしても、頻繁に住み替えては、それだけ引っ越し費用がかかることになり、経済的な負担はかえって増してしまいます。

なるべく賃料が安いところを見つけてそこにできるだけ長く住むことが、入居期間中のトータルコストの引き下げにつながります。
 
私が今回の事故物件にフリーレントではなく、賃料の減額を実施して募集したのは、一度入居してもらった方にはできるだけ長く住んでもらいたいという思いがあったからです。
 
なにせいわくつきの部屋ですから、入居者が頻繁に変わる可能性が相対的に高く、その度に入居の空き期間が発生することや、賃料の減額幅を増やすなど契約条件の更なる悪化を招く事態を避けたかったからです。
 
フリーレントに比べて賃料の減額は入居期間中ずっと効果があるので、入居者にとっては長期間入居する誘因となることを期待したからです。
 
入居の検討者には、フリーレントよりも賃料の減額の方が魅力的なことが伝わるとよいのですが…。金額にもよるとは思いますが。
 
そんな私の目論見なぞほとんどはずれ、この事故物件の募集は長引くかもしれません。
 
なお入居者にとって魅力的なことは、裏を返せばオーナーにとって不幸なことです。賃料を一旦下げれば以降は上げにくく、また他に所有する物件の賃料の引き下げを誘発しかねません。

その意味から、オーナーにとっては賃料相場を荒らさずに実質的にディスカウントできる方法として、フリーレントの方が好まれるようだということは、管理会社から作戦を立てる時には聞いていました。

どちらの作戦に出るのがいいか、難しいことがわかりました。

ついに決着

その後も1人、入居検討者が現れたので物件を案内したもののこれも契約に至らず・・・。

溜息をつく日々が続きます。

そんなある日、管理業者から入居者が決まったという知らせが入りました。

管理会社と従来から取引のある法人顧客のひとつが、私のアパートがあるエリアに転勤する社員向けの物件を探していたとのこと。賃貸契約相手は入居者当人ではなく当人が勤務するその法人です。すぐにでも借りたい模様です。
 
先方は直ちに入居を希望し、しかも法人契約なので個人に比べて与信も安心です。
 
ちなみに、管理会社からこの法人顧客に対して、この物件はいわゆる事故物件であると告知したところ「別に気にしない」との反応だったそうです。むしろ、綺麗にリフォームされた室内をみて気に入ってくれた模様です。

WATANKOWATANKO

ブラボー!貴方のような紳士(法人ですが)をお待ち申し上げておりました!

これで私のアパート12部屋は、再び満室御礼となりました!

法人ならば、個人よりも賃料にそれほどうるさくはないかもしれず、賃料を減額にしなくてもよかったのかもしれないという見方もあるかもしれません。
 
しかしながら、今回は事故物件にもかかわらず入居が決まったことを重視しました。今回の賃貸契約者に長く入居してもらえれば、その後は事故物件であることの告知義務が解消される可能性が高くなります。この部屋の賃料は近隣相場より明らかに安いので、それが長期入居の動機付けになってくれると信じたいです。

入居者の突然死によって始まった一連の騒動も、無事めでたく決着を迎えることになりました。

めでたし、めでたし。

「告知事項あり」はいつまで続く?

ちなみに事故物件となってから一体いつまで告知事項ありの状態を継続しなければならないのか?

一度新しい入居者の実績ができると、次の募集の時には告知事項なしでも済むのか、管理会社に聞きました。
 
管理会社業者からの回答は、

管理会社管理会社

必ずしも、一度入居者が入れば2度目以降に告知事項が不要となるとは限らない。

事故物件になってから2、3年といった比較的短期間で退去が発生した場合には、次の募集でもやはり事前に告知は行っていきたい。

という内容でした。
 
それでは何年間を経過すると告知が不要になるのかと聞くと、明確な回答はないと言います。要は管理会社としては、事前に伝えなくて後からに入居者に対して事故物件であることが明らかになると、管理会社が責めをうけるので、隠すのは避けたいとのことです。

WATANKOWATANKO

すると何かい、何人目の募集であっても常に事故物件であると告知する必要があるのかい。

と問うと

管理会社管理会社

さすがに10年を超えるような長期間が経過するようになればもう不要と言えるのではないかと思いますが・・・。

とまあ、なんとも歯切れの悪いはっきりとした内容を伴わない返事でありました。
 
法律に定めがないとはいえ、私が取引している管理会社は大手の割には方針もなく、ただただ責任を回避する姿勢に終始しており、全く頼りないです。

今回決まった入居者が退去になったとき、「告知事項あり」と募集広告に掲載するのかどうか…。なるべく長く住んでもらいたい、と願うばかりです。 

次回予告

以前の記事で不動産投資と組み合わせる証券投資として、インデックス投資を紹介しました。このインデックス投資は長期にわたりファンドを保持することが成功の秘訣なのですが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済の減退、そして株式相場の下落に負けることなく、長期投資を続けるコツを取り上げてみたいと思います。
 

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

WATANKO

首都圏のエネルギー関連企業にて経営企画、経理および子会社管理の業務に従事しつつ、半ば家業ともいうべき不動産投資を行うサラリーマン兼業不動産投資家、さらには国際分散投資を実践するインデックス投資家です。 資産運用でスーパーカーを手に入れよう!

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