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作成日: 2018.11.26

マンション売却時の注意点について。計算方法と確定申告のポイント

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)
マンション売却時の注意点について。計算方法と確定申告のポイント

マンションを売却する際には、様々な税金の知識が必要です。その意味や必要性、計算方法について詳しく説明します。また、売却時によくある疑問について解説しますので、ぜひご覧ください。

マンション売却にも種類がある

ひとえにマンション売却といっても税金上は実は居住用マンションと投資用マンションで取り扱いは全く異なります。大きな違いとして

  • 減価償却方法の計算の違い
  • 譲渡益が発生した場合の特例制度の有無
  • 譲渡損が発生した場合の損益通算及び損失の繰越控除

が具体的に挙げられます。

マンション売却時の減価償却とは

減価償却とは、購入した資産や商品を一括費用とするのではなく、利用可能な年月に分けて計上する制度のことです。マンションの場合にも、耐用年数などが法律で定められています。

マンションを保有し賃貸に出している場合、不動産所得に対する所得税を算出する時や売買時に減価償却は深く関連してくるのです。

どういう制度なのか、詳しい解説は、「不動産投資の減価償却費!対象は建物だけ?不動産投資と税金のお話、計算もできるようになろう」を参照してください。

マンション売却で減価償却計算が必要な理由

建物・車・機械などの有形資産の多くは、年数や使用頻度によって価値が減少していき、いつか価値自体がなくなります。その価値の減少額を具体的な数値として認識するのが減価償却手続きにより計算される減価償却費です。ではこの減価償却はマンション売却の際どこに影響するでしょうか。それはマンション売却時の譲渡所得計算にかかる「取得費」に影響してきます。

マンション売却による譲渡所得の計算とは

マンションを売却した場合には譲渡所得の計算が必要となります。では譲渡所得は何に着目して課税するのでしょうか。それはマンションのキャピタルゲイン(資産価値)に着目して課税します。このマンションが投資用の場合には稼働中は不動産所得として申告していたかと思いますが、この不動産所得はマンションの利用価値という点に着目しているので譲渡所得と不動産所得とでは全く視点が異なります。また譲渡所得は突発的に発生する所得であることから給与所得や不動産所得のように毎期経常的に発生する所得を前提とした総合課税の方法によらず、他の所得と分離して課税する申告分離課税の方法により課税することも大きな違いです。

譲渡所得=ストック課税(資産価値)→突発的な所得→申告分離課税
不動産所得=フロー課税(利用価値)→経常的な所得→総合課税

マンションを売却した時は確定申告が必要

マンションを売却した時は利益が出た時には、税金を納めなければなりません。逆に損失が発生した場合、条件を満たすことで払い戻しを受けられる可能性もあります。

その手続きを行うためにも、マンションを売却する際には「確定申告」をしなければなりません。

課税譲渡所得の計算方法

課税譲渡所得は

譲渡所得=譲渡収入価格-取得費-譲渡費用

という計算式で求めることができます。

取得費は建物の減価償却後の価格

課税譲渡所得を算出する時にポイントとなるのは取得費の計算です。取得費は

取得費=マンション購入額ー売却時までの減価償却費

で計算されます。つまり単純な購入金額ではなく、購入する際の購入額から減価償却費を引いた金額が取得費となり、結果としてその時点でのマンションの利用価値とイコールになります。従ってマンション売却において減価償却費は取得計算のために必要ということになります。

減価償却費は

減価償却費=建物購入代金×償却率×経過年数

という計算式で求めることができます。

例えば購入金額2,000万円(建物価格400万円・土地価格1,600万円)、耐用年数47年(償却率0.022)、新築から築15年の鉄筋コンクリート造の投資用マンションを売却する場合の減価償却費は400×0.022×15=で132万円となります。

この金額をマンションの購入金額から引いた1,868万円がマンションの取得費です。

参考:「減価償却費」の計算について|国税庁 

居住用マンション売却時の減価償却費の計算の仕方

減価償却の計算式には上で少し触れました。このマンションが投資用の場合であればすでに不動産所得を計算する際に減価償却費の計算をしているかと思いますが、ご自身がお住まいのマンションを売却する場合には売却時に初めて減価償却計算をすることになります。ここからは、特に居住用マンション売却を前提として、投資用マンションとの減価償却計算方法の違いや法改正により計算方法が変わったこと、建物価格がわからない場合の対処や、新築と中古で計算方法に違いはあるのかなどについて解説します。

マンションの減価償却計算は居住用と投資用とで異なる

投資用マンションの減価償却計算は上記や以前の記事でご説明済みですが、実は居住用マンションの場合には相違点が一点あります。それは耐用年数です。居住用マンションの場合には、投資用マンションの耐用年数の1.5倍の年数に対応する定額法の償却率で求めた1年当たりの減価償却費相当額に、その建物を取得してから売るまでの経過年数を乗じて計算します。上記の投資用マンションがもし居住用だった場合には

例えば購入金額2,000万円(建物価格400万円・土地価格1,600万円)、耐用年数47年(償却率0.022)、新築、築15年の鉄筋コンクリート造の居住用マンションを売却する場合の減価償却費は、まず耐用年数を47年×1.5=70年(0.015)で計算することになり、400×0.015×15=で90万円となります。居住用の方が長い年数で償却するのは、投資用と違い基本的に大事に扱う前提があるためその分価値の目減り分が少ないことが理由です。

マンションの減価償却は定額法が一般的

建物の減価償却は、以前は定額法と定率法の2つから選ぶことができました。しかし2007年4月1日より定額法のみとなったので、一般的には定額法で計算することになります。

国税庁の減価償却資産の 償却率表 で償却率を調べる際には、定額法の欄を見ましょう。

建物価格の調べ方と求め方

売買契約書に建物と土地が一括の価格として書かれている場合は建物価格を調べることが必要です。

その時マンションの価格の消費税から求める方法と、建物の標準的な建築価格から求める方法の2つがあるので、それぞれ解説していきます。

購入時の消費税額から算出する方法

消費税は建物のみに課税されるので、購入時の消費税から求めることができます。

具体的には

建物の価格=その建物の消費税額×(1+買った年の消費税率)/買った年の消費税率

というような計算法です。

例えば、2015年に3,000万円(消費税額120万円)で購入したマンションの建物価格は

120万円×1.08/0.08=1,620万円

になります。

参考:平成 29 年分 土地や建物の譲渡所得のあらまし(PDF)

新築と中古マンションで算出方法に違い

建物の標準的な建築価格から求める場合は新築と中古で計算方法が変わってきます。

  • 新築の場合「売却したマンションの建築年の建築単価×該当マンションの床面積」
  • 中古の場合「売却したマンションの建築年の建築単価×該当マンションの床面積-マンションの建築時から購入時までの償却費」

以上が計算方法です。建築単価は国土交通省が発表した「 建築価格表 」を使うことによって求めることができます。

マンション売却時によくある疑問について

マンション売却時にマンションの購入額がわからない時はどうすればいいのか、という質問にお答えしたいと思います。

売買契約書を失くしマンション購入額が不明

マンションの購入額がわからない時は、概算取得費を使います。概算取得費の金額は譲渡価格の5%として計算することが必要です。

この場合、課税譲渡所得は「課税譲渡所得=譲渡価格-概算取得費-譲渡費用」という計算式で求めます。

概算取得費を用いる場合は、減価償却は必要ありません。ただ、概算取得費を使い課税譲渡取得を求めた場合は必ず譲渡所得がプラスになってしまうので所得税が発生します。

譲渡所得の税率や譲渡所得上の譲渡益・譲渡損の取り扱い

ここまででマンション売却の際の譲渡所得の計算方法の基礎についてお話しさせていただきました。実はこの譲渡所得について、さらに譲渡益・譲渡損の取り扱いや税率、税制優遇などの論点が続きますがこの続きは別の記事「 マンションの売却益にかかる税金は?譲渡所得税と特例について解説 」をご覧ください。

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不動産投資の損益分岐点とは? 仕組みから計算方法まで理解しよう

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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