管理費や積立金は単なる固定費じゃない。不動産投資でマンション管理が大切なわけ
主にマンション管理をネタに、ブログを書いている『はるぶー』と申します。始めまして。今回主に不動産投資の方が読まれるRENOSYマガジンで「マンション管理」をテーマとして書かせていただくことになりました。 不動産投資の立場から見ると、管理費や、積立金の管理組合への支払いは単に投資利回りを下げる税金のような、やむを得ない税金のような固定費だと受けとられがちです。 しかし実際には、自分で住むマンションではなく、オーナーとして貸し出しているマンションだとしても、その管理に関心を持つことはとても大切なことだと思います。 区分賃貸のオーナーとしてのマンション管理への関心のありようについて、書いていければなと思います。
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区分賃貸オーナーが納得しにくいこと
私は元々、相続した区分所有のマンションを、賃貸で貸し出すオーナーでした。購入したわけではないので不動産投資とは言えないですが、オーナーとしての経験は、大家としての方が、その後購入した自己居住のマンションより先になります。
ある日、管理組合から総会の通知がやってきました。大きな修繕工事をするのに組合の持っているお金がまるで足りていないから、一時金を集めて実施しますという組合の提案でした。
その徴収金額だけで、家賃収入の8ヵ月分以上が飛んでしまうとなると、冷静ではいられません。
工事の中には「機械式駐車場の更新」の費用が計上されています。長年にわたって一度も駐車場を契約したことはないのに、なぜ駐車場を使わない私まで更新代金を同額で負担をするの?と昔の私は納得できず、総会に反対意見を述べにでかけました。
公平にいかないのは、理事会の長期的な運営に問題があったのではないかとの思いから、マンションの管理組合運営に関心を持つようになりました。
私の今住むマンションには、金食い虫と呼ばれる機械式の駐車場は1台もないのですが、偶然ではないわけです。
一方で、私は自分の住むマンションでは、4期目(7年前)に積立金を2倍以上値上げすることを主導しました。オーナーが2倍以上になる値上げを知らされたのは、総会の3ヵ月前です。
ランニングコストが平均で月に1万円上がるのを、そのまま家賃に反映するのは困難ですから、賃貸オーナーにしてみると「投資利回りが突然下がった」ことになります。
売りに出そうにも、すぐに総会で可決されてしまうと「積立金改定予定」が記載事項になり、そっと売り抜けることは困難です。
これにはなにか割り切れない思いがあると、わざわざやってきた不動産投資のオーナーさんに説明会で苦情を言われました。
賃貸オーナーから見ると、長期的に保持して売却するまでの、マンション価値の変動の差益・差損分とその間の家賃の合計が、その間に支払った借金の利息をどれだけ上回ったかが投資結果ですから、その損得を保有期間中に激変させる可能性のある管理組合の動向には留意する必要があります。
そしてたとえ自分が理事にならなくても、毎年の総会の議案の内容や、組合の決算報告を正しく読みとれるなら、私が最初のマンションで被ったような損害のリスクは、避けることもできるのではないかと考えるわけです。
マンションの資産価値とは
私が今住んでいるマンションは、ファミリー永住型のマンションで、1LDKなどの投資目的に適した間取りはほとんどありません。それでも全戸の7%が賃貸回しされています。
投資目的の区分オーナーが新築で狙うマンションは、価格が維持されやすいものが特に選ばれます。湾岸や武蔵小杉のタワーなどでは、ときに賃貸に回される非居住オーナー比率が1/3に達する物件もあります。
こうなると理事会としては「外部オーナーの声にも応える」運営が必須となるでしょう。
永住目的で購入してそのマンションにずっと住んでいる人は、意外に自分のマンションが今売ったらいくらかは知らなかったりします。
ずっと暮らしていて毎日見ているので、マンションが劣化してきていたり、汚れてきていたりするのは気が付きにくくどうしても少し美化に関して鈍感になります。
ずっと住んでいる方からは、理事会ではマナー違反などに厳しく対処しないと「資産価値が下がる」という発言をされるのはよく聞くのですが、それでいくらマンションの値段が下がったんだろう? と私は少し疑問に思うのです。
一方で、賃貸オーナーの方は、「借りるために初めてそのマンションを訪問する人」を相手にしていて、自分も普段はマンションに住んではいません。
中古で買おう・借りようとする人がマンションを見に来るのは、「はたして経過年数相応にへたってきているか」の確認のためですから、すぐ目につくところが古びているのには、非常に敏感です。
下の写真は、私のマンションで外構部の擁壁部分を一部だけテスト的に高圧洗浄をしたもの。この時、『もともとは白いマンションだったはずなのに、もう外構部が汚いから特別に清掃してくれ!』という声が上がったのは賃貸に出している部屋のオーナーの方からでした。
これだけ汚れていてもずっと住んでいるオーナーはあんまり気にしなかったというか、あんまり気がついていなかったわけです。わずかなお金をかけて高圧洗浄をかけるだけで、見た目は圧倒的に改善されます。
「資産価値」という言葉はあくまで、そのマンションが売れる値段・貸せる値段という数値化されたものに意味があるのであって、これに対して最も敏感なのは投資用に部屋を保有している人ではないかな?と思うわけです。きちんと声をあげて、それを管理組合理事会の施策に反映してもらうようにすべきでしょう。
マンションのお値段としての資産価値は立地や売主や築年数にももちろん大きく影響されますが、後から変えることのできるのは管理だけです。
管理状況が悪い物件は長い目で見ると修繕実施などが困難になるなどで、価値を保持し続けることは困難です。ですから投資用には購入を避けるべきですし、もう買ってしまっていてオーナーなのであれば、管理状況が改善するようなアクションが必要です。
これは自分が理事になれば最も効率的に進めることができますが、遠方に住んでいるなど直接的な関与が困難な場合でも、総会に参加して正しい方向で理事会に対して声をあげていくことでも関与が可能です。
『管理を買う』のは管理組合?管理会社?
『マンションは管理を買え』という言葉をよく聞きます。マンションにおける管理の重要性を表す言葉なわけですが、では購入の際に注目すべきなのは、管理会社なのでしょうか?管理組合なのでしょうか?
実際には、日本のほとんどのマンションが管理の主体そのものを業者等にお任せする管理者管理(第三者管理)の方式は採用していません。
オーナーの中から選ばれた理事が、管理組合を作って、理事会で方針を決めて、総会で承認を得て進めていく理事会方式のマンションがほとんどです。
この場合、管理会社というのはあくまで、理事会が進める管理の一部を委託する会社にすぎないことになりますから、「買う」べきかどうかで注目すべき管理とは、管理組合の良し悪しということになります。
普段マンションの外に住んでいる(非居住の)賃貸オーナーの方は、ほとんどのケースでそのマンションに関してやりとりするのが管理会社のほうになると思います。また一定の料金で、部屋を借りてくれている人とのやりとりなどを含むお世話を一括してやってくれる賃貸管理専門の会社とのおつきあいがもっぱら、という方も多いかもしれません。
ただこの場合でも管理会社ではなく、管理組合が運営の主体であることは是非覚えておいていただきたいことです。
通常の管理規約をもったマンションであれば、規約を変更するなど、今の状態から何かを変えていくことは理事会が主体的に動いてくれなければできません。
非居住の人は、理事会への出席も困難だからという理由で、輪番での理事への就任義務も回ってこないことから、管理組合への帰属意識が弱い場合が多いのです。
特に投資用ワンルームマンションやリゾートマンションのようにほとんど誰もオーナーが住んでいない場合には、理事会の制度は形骸化しやすく、事実上管理会社に丸投げになっている場合も多い。
楽といえば楽ですが、全て管理会社の言い値で実施されがちで、管理・修繕などのコストは高止まりしていることが多いものです。
実際にスタイルアクト社の調査では、ワンルームマンションの面積あたりの平均的な管理費はファミリー用の2-3倍に達しています。誰も理事になりたいという人がいない組合の場合には、名乗り出ると非常に高率で理事会の役員になることができますから改革に乗り出しやすいかもしれません。
理事会の議事録や、毎年の通常総会の議案書を見れば、理事会がどのような施策をうちだしているのか、あるいは組合の今の財政状況がどうなのかがわかります。
なかなか購入前に財務諸表のでている議案書まで見せてもらうことは困難なのですが、逆にその開示を含めて情報公開に熱心な管理組合であれば、運営状況に自信をもっていると思ってよいでしょう。
はるぶーの紹介
このシリーズはまだ何回か続く予定です。
区分賃貸オーナーの立場からみての
- 修繕積立金の値上げの問題と、
- 資産価値保全を目的とした理事会活動の応援の仕方
について、この後書いていければなと考えています。
私は、他では、マンションコミュニティという口コミ掲示板サイトの上の『スムログ』というマンションブログで、主に管理組合活動に関わる話題をブログに書いています。
よかったら、こちらもご覧ください。
https://www.sumu-log.com/archives/author/haruboo/
また普段は、マンションオタクとして、Twitterで、割とディープ目のマンションネタをはるぶー名でつぶやいています。もしよかったら、フォローしてください。
https://twitter.com/haruboo0
(つづく)
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