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作成日: 2018.07.26

マンション経営を成功させる「空室率」の考え方と対策

マンション経営を成功させる「空室率」の考え方と対策

不動産投資を始める時に不安なことの一つが「空室率」でしょう。どんなに良い立地で、きれいなマンションであっても、空室があればその分、収益は下がってしまいます。1棟全体を保有している場合や、区分所有でも複数の部屋を持っているなら、1室や2室空室になってもほかで補えるかもしれませんが、区分を1室保有しているだけなら、空室が出ると収入はゼロになってしまいます。

現状、「空室」はどのくらいあるのか?

まず現状の空室率がどの程度なのか確認しておきましょう。不動産評価サービスなどを提供しているタスがまとめた空室インデックス(空室率TVI)によると、2018年3月の東京の空室率は13.48%です。16年4月の同調査では11.55%でしたから、空室率が高まっていることが分かります。都市ごとの空室率(2018年3月期)は以下の通りです。

  • 東京 13.48%
  • 神奈川 16.20%
  • 埼玉 17.08%
  • 千葉 16.32%
  • 静岡 24.61%
  • 愛知 16.01%
  • 京都 13.82%
  • 大阪 8.66%
  • 兵庫 13.22%
  • 福岡 10.87%

出所: 株式会社タス「賃貸住宅市場レポート 首都圏版 関西圏・中京圏・福岡県版 2018年5月」(PDF)

ただし大手不動産企業がまとめた空室率のデータを見ると、タスの発表と大きくかけ離れています。これは分析のもととなったデータや、計算方法が異なることが原因です。

一般的な空室率の計算では、空室数からそのエリアの満室稼働物件も含めた全体の物件数を割って算出されます。タスの空室率の計算方法は少し特殊で、満室稼働している物件は母数に含まれません。「空室の部屋数」を「入居者を募集している物件の総戸数」で割って算出します。

タスの空室率TVIの計算方法は対象が「空室を含む物件」のみで、そのエリアでの空室があり、入居募集中物件の空室率が分かる反面、満室稼働している物件が含まれないため、空室率が高くなる傾向があります。

他にも賃料ベースの空室率や、戸数ベースの空室率など様々な計算方法がありますが、「絶対にこれが正しい」という定義はありません。あくまでも一つの指標としてとらえるのが適切です。

そもそもなぜ空室率があがるのか?空室率の原因

空室が増えるのは、日本は既に人口が減少しているのに、物件は増え続けていることがその一因と考えられます。

人口減少によって住宅のニーズも減っている

日本の人口はどれくらい減っているのでしょうか。総務省統計局の調査では、2018年1月1日現在で約1億2652万人。前年同月に比べ23万人減少しています。2013年の同調査では人口は約1億2741万人ですから、5年間で89万人減少したことになります。年々人口が減り続けていることが分かります。

政府の発表では32年後の2050年には人口が1億人を切るとの予想がなされています。今後も日本の人口は少なくなっていくと見られます。

地方、エリア毎に住居のニーズの高低はありますが、全体でみれば人が減れば住む家の必要性は低下します。人口減少は空室率低下のおおきな要因といえるでしょう。

相続税対策でマンションやアパートが増えている

こうした中でマンションやアパートは増えています。その中には相続税対策で建てられたものも少なくありません。

なぜ相続税対策を不動産で講じるのかというと、財産は現金で相続してしまうと受け取った金額にそのまま課税されますが、不動産で相続すると、「固定資産税評価額」で課税されるという特徴があるからです。

不動産の固定資産税は、土地は路線価、建物は再建築価格方式に基づいて算出されるため、実際の売買金額(実勢価格)より固定資産税が安くなるケースがほとんどなのです。

さらに、土地に賃貸用不動産が建っている場合は評価額が下がるため、相続税が安くなります。個人による相続税対策のための新築アパートやマンションの建設が増えたことによって、住宅の総数そのものが多くなっていることが考えられるでしょう。

実際、政府が発表した「新築住宅着工戸数の推移」を見ると、2014(平成26)年から新築住宅の建設が増えていることが分かります。2015(平成27)年1月1日に相続税および贈与税の税制が改正され、基礎控除額が減少したことが影響していると見られます。

15年1月1日の前と後とでは相続税の計算式が以下のように変わっています。

【2015(平成27)年1月1日より前の基礎控除額】
相続税基礎控除額=5,000万円+1,000万×法定相続人
【2015(平成27)年1月1日以降の基礎控除額】
相続税基礎控除額=3,000万円+600万×法定相続人

例えば、全相続財産が2億円で法的相続人が2人のケースを想定してみます。この場合、改正前と改正後では相続税基礎控除額は以下のようになります。

【改正前の場合】
5,000万円+1,000万×2人=基礎控除7,000万円
【改正後の場合】
3,000万円+600万×2人=基礎控除4,200万円

このケースでは、改正前と後とでは基礎控除額に2,800万円もの差がでています。60%も縮小された計算になります。

さらに相続税率も2015(平成27)年1月1日以降引き上げられ、2億円超部分が40%から45%に、6億円超部分が50%から55%になりました。

このように、相続税基礎控除額の縮小・相続税率の引き上げにより、以前なら相続税がかからなかった人も、相続税が発生するケースが増えたため、新築物件の建設の需要が高くなったと考えられるでしょう。

今後空室率は上がっていく?不動産投資の未来は暗いのか?

日本全体では人口が減っていますが、地方やエリアによっては人口が増えているところもあります。たとえば総務省統計局の都道府県別の人口推移(平成29年10月1日調査)をみると東京都・埼玉・愛知・千葉・沖縄・神奈川・福岡では人口が増加傾向にあることが分かります。

政府の調査「住宅・土地統計調査」によると、日本の持ち家数は3,216万5,800戸で住宅全体に占める割合(持ち家住宅率)は61.7%でした。1993(平成5)年に行われた同調査では59.8%で、それ以降持ち家率は上昇しています(とはいえ1983年の持ち家率は62.4%だったため、現状はその当時より低めともいえます)。

持ち家率が高いということは、借家に入居する人が少ないということです。こう考えると、空室率が高くなる可能性がありそうです。

年齢別に持ち家率をみると、34歳までは持ち家率が低く、借家に住んでいる世帯が多いようです。また都道府県別に比較すると、持ち家率が最も高い富山県で79.5%、最も低いのは46.2%の東京です。このように年齢や地域によっても大きく異なります。

地価の高い東京は持ち家率が低く、人口も増えています。このことからマンションやアパートなどの借家の需要も高いと考えられます。

すべての都道府県で均一的に人口減少が進んでいるわけではありません。人口減少が進む都市もあれば、人口か増えていく都市もあることが予想されます。

政府では人口減少の対応策として、外国人労働者の流入拡大を目指しています。2025年ごろを目処に50万人超の受け入れを進めています。今後も労働力の底上げのために外国人労働者の受け入れは増える可能性があります。

日本全体ではこれから人口減少は続いても、一部の都市や外国人労働者の増加次第では、今後の空室率は下がることも十分考えられます。

これらを総合すると、30代前半までの若い世帯を狙った間取り、かつ持ち家率が低い都道府県の物件に関しては、空室は生まれにくそうだと考えられます。

ただし東京都内ならどこでも空室が生まれない、というわけではありませんし、人気のエリアならどんな物件でも借り手が見つかる、というわけでもないことは言うまでもありません。

空室率は上がったり下がったりします。各種のデータをみても、冒頭で紹介したように算出方法が異なれば出てくる数値も異なりますから、あくまでもひとつの指標として、参考程度に見ておけばよいでしょう。

物件の空室率を下げるためのポイント

いくらエリアがよくても、物件そのものに魅力がなければ借り手はつきません。空室が出にくい、ニーズがあり収益が出せる物件をどう選べばよいのでしょうか。

空室率が低い物件の特徴は、「駅や生活に便利な施設が近くにある」「設備が整っていて室内もきれい」「管理が行き届いている」などがあります。

たとえば駅まで近いこと、駅周辺にスーパーや医療機関などの施設がそろっていること。最寄り駅から主要駅までのアクセスがいいこと。オートロック、風呂とトイレが別、洗濯機置き場が室内にあること。これらの条件がそろった物件はニーズが高く、多少、築年数が古くても人気があるため、家賃相場が高い傾向があります。

昨今ではリノベーション物件の人気が高いことから、築年数が古くても室内や設備がきれいかどうかも確認しておくと良いでしょう。古めの物件に手を入れて借り手を探す場合は、そもそも理想のリノベーションが実際にできるのか、費用がいくらかかるのか、採算がとれるかも計算して検討する必要があります。

駅近の便利な物件でも、管理が悪いと人気は高まりません。たとえば共益部分が汚い、住民のマナーが悪いとどんなに良い物件でも入居者が入りません。

こうした条件のいい物件は、どうしても家賃が高くなりがちです。駅から近く、設備が最新の物件であっても、物件があるエリアの家賃相場よりも高くなってしまうと、入居者はなかなか見つかりませんから、相場に見合った家賃設定にすることもポイントでしょう。

購入する際には、毎月の家賃設定がいくらになるのか、しっかりシミュレーションを行い、物件エリアの家賃相場と照らし合わせる必要があります。

こうした中でも収益を生んでいる物件は多く存在する

繰り返しになりますが、空室が出るとその分、家賃収入は得られません。かといって借り手をみつけようと家賃を下げ過ぎると、今度はローン返済や管理費などのコストが重くのしかかり、利益が出なくなってしまいます。空室率を下げると一口にいっても、その施策やすべきことはたくさんあり、容易ではありません。

人口減少、物件の増加などは好条件とはいえません。しかしこうした中でも確実に収益を生んでいる物件はあり、利益を得ている不動産投資家は少なからず存在します。空室率の低い物件を見つけたり、または所有する物件の空室率を下げたりして、利益を出し続けるには、信頼できる相談相手を見つけたり、自身でも情報収集や調査、学習を続けたりすることが欠かせません。  

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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