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公開日: 2020.03.19 更新日: 2021.05.21

入居者に部屋を汚されてしまったら、オーナーはどうする?

入居者に部屋を汚されてしまったら、オーナーはどうする?

不動産投資を長年手がけていると、いろいろな出来事に遭遇します。今回紹介する話はアパートの部屋をとても汚く使って退去していった入居者の話です。

発覚した汚部屋

保有するアパートの管理会社からの電話はいつものとおり突然にかかってきます。そしてそれは大抵良くないお知らせです。

アパートを10年以上経営しているとこのような知らせにはもう慣れっこであり「管理会社がまたオーナーにトラブルという名のパスを丸投げしてきたか」と皮肉に思いつつ、電話にでました。管理会社からの連絡内容は「1部屋退去が発生したのだが、入居者が部屋をかなり汚く使っていたようなので修繕費がかさむ」とのこと。どれくらい汚く使っていたのかと聞くと、「汚部屋」とか「ゴミ屋敷」のレベルらしいです。

そこで電話のあった翌日、管理会社の担当と一緒に件の部屋をチェックすることにしました。出向いてみると、入居者は既に退去済みであり、玄関に入ると、早速そこには食べ物か何かの腐敗物から出たと思われる汁が床にしみ込んでいたり、何かベトベトしたものがこびりついた跡があります。

さらに室内にすすむと壁のクロスやクッション床にはカビや得体の知れないシミがたくさん残っていました。通路も居室もキッチンもトイレも浴室も全てです。

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このアパートの各部屋には白いクッション床を選んでおり、とても明るい印象であったのですが、そこかしこが見事に汚いグラデーションに染められてしまっていました。

そして床一面に散らばる毛髪。それはまるで閉店間際の散髪屋の床のようです。

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壁やクロスの汚れやたくさんの毛髪だけではありません。落ち着いて嗅覚を研ぎ澄ましますとほのかな酸味を含んだ香りが漂っています。

なんの香り、いや臭い、いや瘴気だろうかと懸命に想像しようとしましたが、「入居者がまだ在室しておりゴミが沢山あった頃はもっとはるかにすごい匂いでした」という管理会社の説明の前に、気持ちが悪くなって想像するのを止めました。

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汚部屋からの退去まで

同行した管理会社の担当から聞いた話は次のとおりです。

管理会社管理会社

入居者は今年の夏に玄関ドアが閉まらないほど室内にゴミを溜めまくり、同じアパートの他の住民から管理会社にクレームが届いていました。

担当が行ってみると、部屋中がゴミだらけで、玄関ドアだけでなく室内のドアもどれもが開けっ放しで、閉められない状態になるほどゴミの山でした。

本人と連絡をとって片付けるように促しましたが一向に進まず、そこで保証人であり当人の母親に連絡をとると、母親は東北の実家からわざわざやってきて片付けていく始末でした。

そこまで話を聞いた私は、管理会社に対して、

WATANKOWATANKO

そのような迷惑な話があったなら、直ちにオーナーにも連絡すべきです。

とクレームをつけたことは言うまでもありません。

このように部屋を「汚部屋」で「ゴミ屋敷」に変えてしまった入居者でしたが、先月、管理会社に退去する旨を突然連絡してきました。賃貸契約に定める契約更新の事前連絡期限である1ヶ月前ギリギリになっての連絡です。

ところがその後、入居者は退去作業が間に合わず、退去にあたっての立会い確認日になっても、まだ部屋にはゴミがあり、退去できない状況で居残っていました。

その後、数日たってからようやく退去していきましたが、一体どれだけの量のゴミ、いや私物を片付けていったのでしょうか。

退去費用の精算

こうして入居者は退去したものの、「立つ鳥、跡を濁さず」どころか部屋を大いに汚しまくって「汚部屋」にしていきました。その入居者とは、原状回復費用の精算についての話し合いをしました。

今回の現状回復費用の内訳は、主に壁のクロスとクッション床の貼替えであり、これだけで費用総額の7割を占めました。残りの3割が室内クリーニング、エアコン洗浄、水周り部品交換、電球交換、残置物処分などです。

これら原状回復費用の総額に対して、管理会社が入居者と協議の結果、入居者の負担となった割合は約1/4に留まりました。それでも預かっている敷金だけでは足りず、追加の支払いをお願いしました。

ここで、原状回復費用について、全額はおろか過半すらも入居者には負担できないのかと驚かれる方もいるかと思います。

賃貸物件の退去にあたって東京都住宅政策本部が定めている「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」によると、原状回復についてのルール(いわゆる東京ルール)が示されており、管理会社としてはこれに沿って執り進めるほかないという事情がありました。

ガイドラインでは、賃借人が費用をかけて元の状態に戻す「原状回復」とは賃借人が借りた当時の状態に戻すものではないということを明確にし、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定めています。

これがガイドラインの設定の基本となる考え方です。「原状回復」とは分かりやすく言えば借りた時点の状態に戻すことではなく、借りていた期間に通常、経年劣化した後の状態から「さらに超えて悪化した分だけ」を戻すこと指しています。 

私のアパートは当時築9年の物件であり、この入居者は3年目から賃貸して6年間入居していました。新築時点に対してクロスやクッション床はすでに6年の減価償却を経過しており、会計・税務上の価値がほとんどありません。理屈の上ではオーナーは減価償却費を賃料の一部として入居者から回収済みというわけです。

入居者が退去する時点で価値ゼロが妥当とされる資産に対して、復旧費用を請求するわけにはいかないのですが、それではあまりにオーナーの負担が大きいため、管理会社としては通常は復旧費用のせめて10%は退去時に交渉して入居者に負担してもらう方針とのことです。

今回の入居者にも同様に交渉して認めてもらいました。その費用も含めた金額が、上述のとおり総額に対して約1/4となったわけであります。

管理会社としては一応やるべき交渉はやったわけであり、ガイドライン遵守を背景とすると、原状復帰費用の回収はオーナーにとってもこの辺りが限界という印象でした。

入居者はいわくつきの人だった

さて一体、この部屋の入居者はどんな人かと聞くと、若い女性とのこと。その名前を聞いて、どこか聞き覚えのある名前だと思ったら……。

思い出しました。

この若い女性は以前、賃貸契約の契約更新料をなかなか支払ってくれなかった学校の先生でありました(そのときの記事はこちらを参照)

学校の先生であった入居者は、契約更新の時期が来ても更新料の支払いを滞らせ続けていました。

このようなケースの場合、実際には法的に色々と保護されている入居者に対して、オーナー側は有効な打ち手がとても限られていました。

入居者に思うこと

更新料の支払いを滞らせていたこの先生ですが……。

当人は、このような汚部屋にずっと住んでいて、どんな気持ちであったことでしょう。

学校の業務は多忙を極め、心身ともに荒んでいたのでしょうか。それともプライベートで悩みでもあって、身の回りのことが手につかなかったのでしょうか。

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身体を清潔に保つための風呂が、それ自体がとても汚かったのです。さらに、トイレもひどく汚れており、公園の公衆トイレの方がずっと綺麗という状態でした。若い女性がよくもこんな衛生状態に我慢ができたものだ、というほどでした。

それとも単にだらしなく、部屋を片付けられないずぼらな性格であったのか……。

わざわざ遠くから部屋の片付けにやってきた母親は、ひょっとしたら娘のそんな性格を察して、周囲にこれ以上迷惑をかけるわけにはいかないと飛んできたのかもしれません。

この学校の先生は、次に引っ越した先の部屋もこうして汚していくのでしょうか。

しかしオーナーからみれば冗談ではありません。できることなら賃貸業界の慣習として、入居希望を受け付けた管理会社は、当人が前に入居していた物件のオーナーなり管理会社に問い合わせて、素行を確認するシステムが取り入れられてもよいと思います。

そしてまた、汚部屋を再生産させないためには、当人に部屋のクリーニング代を支払ってもらうのではなく、仕事のないであろう週末の48時間を使って、雑巾がけやシミ取りなどの掃除を徹底的にやってもらい、自分が汚してきたものをよく理解して、性根を入れ替えてほしいものだ、とも思います。

でも前向きに考えれば、これで厄介な入居者とはオサラバできたといえます。しばらくはまた安寧な日を送ることができそうです。

次回予告

アパートを経営していると契約更新料の未払いや部屋の汚損だけでなく、さらに驚きの事態に遭遇することもあります。たとえば入居者が突然死してしまったら、オーナーであるあなたは一体どうしますか。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

WATANKO

首都圏のエネルギー関連企業にて経営企画、経理および子会社管理の業務に従事しつつ、半ば家業ともいうべき不動産投資を行うサラリーマン兼業不動産投資家、さらには国際分散投資を実践するインデックス投資家です。 資産運用でスーパーカーを手に入れよう!

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