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更新日: 2023.07.27

不動産投資の経費どこまで落とせる? 計上できる経費とNGまとめ

監修:
税理士法人 スバル合同会計
不動産投資の経費どこまで落とせる? 計上できる経費とNGまとめ

不動産投資において「どこまで経費にできるかわからない」といった悩みをお持ちの方もいるのではないでしょうか。不動産投資ではどのような項目を経費として申告できるのでしょうか。経費にできるかどうかの考え方と、具体的な項目を整理していきます。

不動産投資の経費でどこまで落とせるか

どこまでを経費にできるかは、それを判断するための基準が存在します。不動産投資ではどのように判断すればよいのか見ていきましょう。

【関連リンク】
車両や光熱費は不動産投資の経費になる? 国税不服審判所の否認事例を紹介

家賃収入を得るために必要なものが経費となる

不動産投資で経費として計上できるのは、家賃収入を得るために支払った、不動産投資事業に関連する費用のみです。逆にいうと、家賃収入のための費用であれば、経費に計上できます。

例えば、プライベートの旅行にかかった費用は単なる個人の支出です。しかし、旅費が物件の下見や契約のためにかかったものであれば、全額とまではいかなくとも、往復のための旅費と滞在日数のうち実際に物件の下見や契約等に要した日数については経費として落とすことができるでしょう。経費にできるかどうかは、お金を使った内容より「事業のための出費かどうか」を基準に判断するとわかりやすいでしょう。

オフィスと自宅が兼用の建物で過ごす個人事業主の場合など、事業とプライベートの境目についての考え方は後述します。

不動産投資で経費を計上する効果

個人事業主の経営を考える際に、しばしば話題となる経費ですが、そもそも何のために計上するものなのかご存知でしょうか。

不動産投資で得た所得に対しては所得税が課税されます。課税対象となるのは、収入そのものではなく、収入から経費を引いた残りの金額(所得)に対してです。

そのため事業にかかった費用を全く経費計上しないのと、くまなく経費に計上するのでは、所得金額が変わります。納める税金に関わってくるため、経費の計上は注目されるポイントとなるのです。

不動産投資の経費が節税と絡めて議論されるのは、このような税金の計算方法が存在するためです。

【関連リンク】
節税になるって本当!? 不動産投資が節税対策と言われる仕組みと注意点

仕事とプライベート両方で使うものは家事按分が可能

支払った費用の中には、事業用とプライベート用の両方の側面を持つ項目もあるでしょう。これを家事関連費といいます。例えば、住居とオフィスを兼ねてほぼ24時間過ごしている家の家賃や電気代などについてです。こういった場合、「経費として申告できるかわからない」という方もいるかもしれません。事業にもプライベートにも該当する支出の計上では按分を行います。

按分とは、ひとつの費用に対して事業用とプライベート用の割合を決め、事業用の分だけ経費に計上する方法です。車のガソリン代を計上する場合であれば、例えば4割を事業で使用した分と定め、ガソリン代の4割だけを経費にするイメージです。

費用を按分する際は、使用した時間や頻度など、合理的な理由から適切な割合を考えます。万が一税務調査が入ってもきちんと説明できるようにしておきましょう。

家事費は全額算入不可、家事関連費は業務に使用する割合を按分して算入、事業経費は全額経費算入できます。判例を含め詳しくは「不動産に関わる所得税の理解を深めよう! 家事費・家事関連費・事業経費」を参考にしてください。

【関連リンク】
不動産投資で税務調査が来る!?事前に知っておきたい対策と傾向

不動産投資で計上できる経費の例

では、具体的に不動産投資で経費にできる代表的な項目を見ていきましょう。

不動産投資で経費にできるもの
  1. 事業用の不動産投資ローンの利息
  2. 建物の管理費
  3. 管理委託料
  4. 入居者募集にかかる費用
  5. 建物および部屋の修繕費
  6. 旅費や交通費
  7. 司法書士や税理士の報酬
  8. 自動車にかかる費用
  9. 建物の減価償却費
  10. 建物にかかる保険料
  11. 不動産投資にかかる税金
  12. 通信費
  13. 交際費

1. 事業用の不動産投資ローンの利息

不動産の取得にローンを利用した場合、返済金額のうち利息は経費にできます。

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確定申告で不動産投資ローンの金利(借入金利子)は経費にできる?

2. 建物の管理費

居住スペースの設備の保守管理や共用設備の清掃などにかかった費用は、その分を経費にできます。

3. 管理委託料

マンションやアパートの賃貸管理を管理会社に頼んでいるのであれば、管理委託料も経費のひとつです。

【関連リンク】
【ワンルームマンション投資】賃貸管理会社の選び方

4. 入居者募集にかかる費用

賃貸経営で入居者を募集するときにかかる費用は経費として計上できます。不動産会社に支払う手数料や不動産広告の掲載料などが代表的です。

5. 建物および部屋の修繕費

建物の修繕にかかる費用、修繕積立金も経費になります。また壁紙を張り替えたりといった部屋の修繕費も経費となります。

なお、最新型の給湯器への変更や非常用階段の取り付けなど、建物の資産価値を高める支出の場合、修繕費ではなく資本的支出と判断されれば耐用年数を計算した上で減価償却が必要です。この場合は修繕費として一括での処理はできません。修繕費として経費にできるのは「原状回復のための支出」「かかった費用が60万円未満」などの基準があります。詳しくは国税庁のページをご覧ください。

参考:No.1379 修繕費とならないものの判定|国税庁

6. 旅費や交通費

不動産投資に関連して、遠方にある物件の下見や調査、価格交渉のために交通費や宿泊費を支払った場合も経費に計上可能です。このとき発生した新幹線代・ガソリン代・宿泊費などは経費にできます。

【関連リンク】
不動産投資で交通費を経費計上するポイントと注意点

7. 司法書士や税理士の報酬

不動産の名義変更や確定申告の代行を専門家に依頼し報酬を支払った場合、この費用も経費として計上できます。

8. 自動車にかかる費用

不動産投資事業で車を使うのであれば、購入や維持管理の費用を経費にできます。車本体の購入費やガソリン代、自動車保険料などが代表的です。

9. 建物の減価償却費

建物の減価償却費も経費に計上できます。減価償却とは、建物の取得費用を耐用年数で割り、その金額を毎年経費に計上することです。実際の出費がない場合でも経費に計上できます。減価償却費が多く結果所得が少なくなるという文脈で「節税」という言葉で語られることもあります。

なお、建物の耐用年数は構造によって以下のように異なります。計算する際は留意しておきましょう。

【構造別物件の法定耐用年数】
 新築、住宅用

  • 木造の建物:22年
  • 鉄骨造の建物:構造材料により19年、27年、34年
  • RC造の建物:47年
【関連リンク】
不動産投資をするなら必ず理解したい、減価償却費とは?【基礎編】

10. 建物にかかる保険料

火災保険や地震保険など、建物にかかる保険料も経費にできる費用のひとつです。

11. 不動産投資にかかる税金

不動産投資に関連するさまざまな税金も経費にできます。

【不動産投資で支払う税金(一部)】

ただし、事業と直接関係のない個人の住民税などは経費に計上できません。

12. 通信費

事業で使用しているインターネット代やスマホ代が発生していれば、そちらも経費に計上できます。プライベートと回線が共通している場合、使用時間などで割合を定め按分します。

【関連リンク】
不動産投資の経費で処理できる通信費。経理処理の方法と注意点

13. 交際費

交際費とされるのは、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類するもの、と意義が定められており、事業の関係者との会食や接待にかかった費用は交際費として計上できます。不動産投資の場合、土地の取引相手や不動産会社の担当者との会食や慶弔費などが該当します。

不動産投資の経費にならないもの

経費にできる金額は非常に幅広く、一見するとどんな内容でも計上できると錯覚する場合があるかもしれません。しかし、費用の目的や発生理由によっては経費として認められないこともあります。具体例を見てみましょう。

不動産投資で経費にできないもの
  1. スーツや時計などのファッションアイテム
  2. 自分への福利厚生費
  3. プライベートでの飲食費

1. スーツや時計などのファッションアイテム

仕事用のスーツや腕時計などは経費として認められないという見解が一般的です。不動産投資では取引相手とスーツを着て会うことは普通なので、経費として認められてもよさそうなものです。しかし、プライベートでも使用できることから、服やカバン、装飾品などは経費にできないと判断されています。

2. 自分への福利厚生費

従業員がいない個人事業主は、福利厚生費の計上は認められていません。というのも、基本的に福利厚生費は従業員のための支出だからです。自分用の旅行費用や個人的なフィットネスジムの会費などは単なる個人消費と判断されるため、事業の経費にはできません。

3. プライベートでの飲食費

個人事業主の経費として誤解されやすいのが飲食費です。「個人事業主=外食費は経費にできる」と勘違いされることもありますが、経費にできるのはあくまで事業に関連した食事の場合のみ。事業相手との会食や打ち合わせは経費になりますが、プライベートでの食事代は認められません。

不動産所得が20万円を超える場合は確定申告が必要

ところで、「そもそも不動産投資に確定申告は必要なの?」と疑問をお持ちの方へ、確定申告の考え方をご紹介します。

給与以外で「家賃収入」などの不動産所得が20万円を超える場合、サラリーマンでも確定申告が必要です。

では、20万円以下の場合、本当に確定申告をしなくてもよいのでしょうか。ここでは、不動産所得の種類と、確定申告の必要性について詳しく解説します。

【関連リンク】
不動産投資に確定申告は必要?経費計上できる項目から注意点を解説

不動産所得とは

不動産所得は、給与所得や事業所得以外の所得のことです。不動産所得には以下の3つが定義づけられています。

  • 土地や建物の貸付け
  • 地上権の設定および貸付け
  • 船舶、航空機の貸付け

不動産所得でわかりやすいのが、所有している土地や建物を貸し出すことで家賃収入を得る「大家業」です。ほかにも、自分の所有している土地に立てた看板から得る「使用料」や、所有の土地を月極駐車場として貸し出す「駐車場収入」などが挙げられます。

不動産所得の計算式は以下の通りです。

不動産所得=不動産収入-必要経費

例えば、家賃5万円のワンルームマンションを貸し出して、年間60万円の不動産収入があったとします。固定資産税や、入退去による修繕費などの必要経費が30万円かかった場合、年間の不動産所得が30万円となり、確定申告が必要です。

給与所得
勤務先から受ける給料、賃金、賞与など(源泉徴収される前の金額)から 給与所得控除額 を引いたものです。
事業所得
農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生じる所得です。

20万円を超えていなくても確定申告をした方がいいケースも

不動産所得が20万円以下の場合や、不動産所得が赤字になった場合は確定申告の必要はありません。しかしサラリーマンの方は、給与所得と損益通算することで所得税を節税することが可能です。

例えば、給与所得が500万円で、不動産所得は初年度に経費が多くかかり200万円の赤字だったとします。損益通算を利用すれば給与所得から不動産所得の赤字分を引くことができるので、本来であれば500万円に課税されるところ、300万円に対して所得税が課税されます。

これから不動産投資を始める方は、20万円を超えていなくても必要に応じて確定申告を検討しましょう。

損益通算
総所得金額や退職所得金額、山林所得金額などの計算の際に、他の所得金額から控除することです。不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得のみが該当します。
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不動産所得のマイナスで、諦めていた制度が使えるかも!? チェックしたい制度一覧
不動産投資で赤字、そんなときの損益通算には制限があります

確定申告の進め方とは

確定申告の流れは以下の通りです。

確定申告の流れ
  1. 青色申告を行う場合は青色申告承認申請書を提出しておく
  2. 提出書類を準備する
  3. 青色申告決算書または収支内訳書を作成する
  4. 確定申告書を作成する
  5. 申告書を提出する

確定申告の流れをしっかり把握することで、確定申告をスムーズに完了させることが可能です。

参照:申告手続の流れ|国税庁

1. 青色申告を行う場合は青色申告承認申請書を提出しておく

申告の種類には青色申告白色申告の2つがあります。

白色申告は、売上や収入、経費などを入れ込むだけで作成できる「簡易帳簿」です。しかしメリットはそれ以外になく、青色申告の方が多くのメリットがあります。

青色申告を行う場合は、事前の申請が必要です。申告したい年の3月15日までに「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなくてはならないため、確定申告のタイミングで青色申告を希望しても間に合いません。申請していない場合は、翌年の確定申告に備えて提出しておきましょう。

参照:所得税の確定申告|国税庁
参照:No.2070 青色申告制度|国税庁
参照:No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度|国税庁

【関連リンク】
税理士が解説! 不動産投資をするなら、区分1件から青色申告を選択すべき理由
【2023年確定申告に向けて】2022年早々、青色申告の事前届出をしてきた

青色申告の方が税務メリットが多い

白色申告に比べて、青色申告の方が税務メリットが豊富です。青色申告にすることで得られるメリットはいくつかあります。

  • 区分1件から10万円の特別控除が受けられる
  • 事業的規模の場合、最大65万円の特別控除が受けられる
  • 赤字を3年間繰り越せる
  • 30万円未満の備品等の資産を一括で償却できる
    など

65万円の特別控除を受けるには不動産の保有件数がある程度(アパートは10室以上、貸家は5棟以上)必要になりますが、10万円の特別控除であれば区分マンション1件(室)という規模でも認められ、所得税の節税につながります。

赤字になる年でも翌年以降の黒字と相殺できるため、給与所得額を結果的に減らすこと(節税)につながります。さらに、30万円未満の仕事用のパソコンなどの経費を一括で経費にすることが可能です。

2. 提出書類を準備する

取引帳簿の作成や、青色申告承認申請書の提出が完了したら、確定申告に必要な書類を集めます。確定申告書のほかに必要な書類は以下の通りです。

直前で慌てないように、しっかり準備しておきましょう。

  • 家賃収入などの収支報告書
  • 家賃が入る口座の通帳
  • 入居との賃貸借契約書の写し
  • 請求書や領収書の写し
  • 投資不動産の固定資産税評価証明書(固定資産税額がわかるもの)

3. 青色申告決算書または収支内訳書を作成する

青色申告を行う場合は、青色申告決算書を作成します。事業的規模の場合は、家賃収入や経費などをもとに損益計算書・貸借対照表を記入します。会計ソフトを利用している方は、連動して作成できることが多いので確認しましょう。

自分で作成できないこともありませんが、専門的で細かい知識が必要なので税理士に依頼している方も多いです。

損益計算書
企業のある一定期間における収益と費用の状態を表すために、複式簿記で記録されたデータのことです
貸借対照表
決算時における資産と負債の内容を確認するもので、決算時の財政状態を表したものです

白色申告を行う場合は、収支内訳書を作成します。

4. 確定申告書を作成する

必要書類が準備できたら次はいよいよ確定申告書の作成です。これまで申告書にはAとBの2種類がありましたが、2023年提出分から申告書Aは廃止され、申告書Bのみに一本化されました。申告書は税務署や役所で入手するか、国税庁のページからダウンロードしましょう。

5. 申告書を提出する

最後に申告書を提出して完了です。税務署や確定申告会場に直接持参することも可能ですが、郵送やネット(e-Tax)を使って申告する方も増加しています。

好きな場所で好きな時間に申告ができるのが魅力です。提出期限は、例年、翌年の2月16日〜3月15日までとなっています。期限に間に合わなかった場合、無申告加算税や延滞税のペナルティが課されるので気をつけましょう。

無申告加算税
期限までに確定申告を行っていない場合に課せられる税金です。
延滞税
期限までに税金を納付しない場合に期限の翌日から納付するまでの日数分、遅延損害金に相当する税金のことです。

不動産投資の経費=事業に必要な支出

発生した費用が経費にできるかどうか判断に迷うことがあるかもしれません。計上できるかどうかは「事業に必要な支出だったかどうか」を基準に考えてみてください。それでも判断できない場合は、税金の申告前に税理士に相談してみることをおすすめします。

【関連リンク】
【確定申告】不動産投資における「雑費」計上時の注意点を解説

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RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

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