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作成日: 2018.11.30

不動産に関わる所得税の理解を深めよう!家事費・家事関連費・事業経費

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)
不動産に関わる所得税の理解を深めよう!家事費・家事関連費・事業経費

不動産投資をしている人が必ずしなければいけない確定申告。不動産投資で利益が出た場合は、税金を納める必要があります。経費を考える上で覚えておきたいキーワード「家事費・家事関連費・事業経費」について解説します。

所得税、計算するのはけっこう複雑

法人ではなく個人が、不動産投資によって生じた利益に対して納める税金が所得税です。より具体的には不動産所得に関わる所得税です。

所得税は、おおきく「総合課税」と「分離課税等」にわかれます。不動産に関わる所得税は総合課税として、給与所得や利子所得、配当所得などの利益をひとかたまりとして扱ううちの一つです。ひとかたまりに合算した利益(所得)に対して税金を納めます。税率は5%から45%まで7段階に分かれて決まっています。高所得になればなるほど税率は上がります。

分離課税は、土地建物等の短期譲渡所得、上場株式等の配当所得など、個別に税率が定められており、各税率をかけます。その後、合算します。分離課税の方が計算に時間がかかります。

不動産所得の計算

総合課税でも、総合課税対象となる項目それぞれを個別に所得計算をします。その後それらをひとかたまりとして扱います。不動産投資に対する税金も総合課税とはなりますが、まず最初に不動産所得単体として所得の計算をする必要があります。

不動産所得単体での所得の割り出し方は以下の式になります。

不動産所得 = 不動産投資にかかわる総収入金額 - 必要経費

不動産所得の必要経費

所得税を納めるのは個人です。個人は、会社勤めなど「働く」ことを通して利益(所得)を獲得する側面(所得獲得主体、稼ぐ主体)と、車を購入したりレストランで食事をしたり洋服を買ったりといった「消費する」側面(消費主体、使う主体)の、2つの側面があります。

不動産投資もその2つの側面から成り立つ日々の生活上で行うことになり、不動産投資に関わる経費も、所得を獲得する個人としてかかったのか、消費する個人としてかかったのか、使い道は何か?という観点で考えるとわかりやすくなります。

経費の分類:事業経費、家事費、家事関連費

それでは、個人の私たちがお金を使うときの、使い道を考えてみましょう。

休日に映画をみにいくために電車に乗り、映画の後にカフェでランチを食べる。このような、個人の生活のための費用は、「家事費」となります。不動産投資という事業とは全く関連なく、個人の生活のための費用となるため、不動産投資の経費にはなりません。

次に、自宅の一室を仕事部屋として用意し、来客にも対応できるようにしている場合はどうでしょうか?個人の生活のための家賃の一部を、事業のための費用にしています。

このような、稼ぎを生み出す主体とお金を消費する主体どちらにも絡んでくる経費を「家事関連費」といいます。

例えば20万の家賃を払っている場合、床面積や部屋の数で考えます。家事関連費として20万円のうち、Xm 2 またはX部屋を経費とします。

家事関連費の算出の仕方が明確に法律で定められているわけではなく、判例を参考にしながら考えていくことになります。

個人事業主が事務所用として部屋を借りている場合など、純然たる必要経費としてお金を使う場合は、事業のための経費となります。

「家事費」「家事関連費」という単語は税金用語として、覚えておきましょう。

家事関連費が必要経費になるための要件

家事関連費が必要経費になるための要件は、大きくわけて2つ、厳密には3つあります。

  1. 事業の遂行上必要である
  2. 事業と関連性がある
  3. 必要である部分を、明らかに区分することができる

厳密には3つと書いた理由は、たとえ1、2が要件としてあっても、金額として明らかに区分けできなければ成り立ちません。

1については、主たる部分が、業務遂行上必要であるかどうかで判断します。数字的な区分ではなく、総合的に勘案します。

2については、業務遂行上必要かどうかの形式的な判断で、支払ったうち50%を超えるか、50%未満でも、明らかに明確に「事業に関係がある」と証明することができれば、必要経費と判断できます。

判例

最後に、不動産投資にかかる経費についてではありませんが、過去の裁判例をみてみましょう。

【判例1】
訪問、出張の際の食事代はどうか?

決済書名:会議費
内容:製造事業主が取引先を訪問する途中で昼食をとった場合の食事代

判定:×

理由:業務遂行中でも食事をとる行為そのものは家事費

【判例2】
訪問、出張の際の食事代はどうか?

決済書名:会議費
内容:取引先を交えて打ち合わせを兼ねた事業主の飲食代

判定:○

理由:業務遂行上明らかである場合は特に過大でなければ可能

まとめ

不動産投資をおこなう上で、業務遂行上必要であり、事業と関連性もあり、必要である部分を明確に区分することが可能で数字として表すことができれば、家事関連費として必要経費と判断できるでしょう。心配な場合には税理士に相談しましょう。

※本記事の情報は、信頼できると判断した情報・データに基づいておりますが、正確性、完全性、最新性を保証するものではありません。法改正等により記事執筆時点とは異なる状況になっている場合があります。また本記事では、記事のテーマに関する一般的な内容を記載しており、より個別的な、不動産投資・ローン・税制等の制度が読者に適用されるかについては、読者において各記事の分野の専門家にお問い合わせください。(株)GA technologiesにおいては、何ら責任を負うものではありません。

この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)
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