住まい・暮らし
2018/03/05

東京赤坂で70年、暮らしの歴史を残すリノベで「TOKYO LITTLE HOUSE」オープン

東京・赤坂の飲食店が並ぶ通りに、木造2階建ての一軒家があります。戦後から70年、3世代に渡る暮らしの痕跡が刻まれた空間を残したいと、家主の息子夫婦たちが内装材の撤去から塗装まで行い、「昔の面影を残した宿泊施設」と「東京の歴史文化を展示するギャラリー&カフェ」が誕生すると聞いて、見学してきました。


どんなリノベーションだったのですか?

「リノベーションをとことん楽しんでいる方がいる」と知ったのは、Facebookで流れてきた投稿をみたのがきっかけ。

おうちを生まれ変わらせたのは、編集事務所を運営するご夫婦、深澤さんと杉浦さん、そしてスタッフのホールデンさん。

左からホールデンさん、杉浦さん・深澤さんのご夫婦

生まれ変わったのは「TOKYO LITTLE HOUSE」という名の家。1階がカフェ&ギャラリー、2階は一組限定の宿泊施設で、2018年2月9日にオープンしました。

ご夫婦で企画、そしてDIYの作業は杉浦さんとホールデンさんで進めたこのプロジェクト。自分たちで壁・天井・床の取り壊し、断熱、防音、左官、塗装を行い、「家づくりってここまで関われるのか!」と楽しさと充実感がひしひしと伝わってくる空間です。

オープン直前、仕上げの最終段階だった1階と、プレオープンしていた2階を見学させていただきました。

通りからはまだ何がオープンするか、わからない状態

お話を伺ったのは杉浦さん。

歴史ある玄関扉に、スマホや交通系ICカードで施錠もできる最新のデジタルキー! 
ちょっと急な階段を登ります。Renosyリノベの設計士と一緒に見学しました

70年間、ずっと住居空間だった2階

1階は、ブティック・花屋・飲食店などさまざまな店舗に貸していたそうですが、2階はずっと住居だった場所。そこがこの度ホテルに。

タイムスリップしたような空間!
とっても落ち着けそうなベッドルーム!(※)

なぜここをホテルにしようと思ったのか。それは和室の「窓とその景色」が理由のひとつにありました。

「華奢な木製のガラス窓を開いて見える景色がとても面白いんです。戦後間もない頃の佇まいがそのまま残る空間から、現代の東京を代表する歓楽街の喧噪を見ていると、なんだか不思議な気持ちになってきます。ここは、ずっと人が暮らしてきた場所。だからそれを暮らすように旅する拠点にして、たくさんの人にこの感覚を味わってもらえたら、とこの業態を選びました」

2018年と1948年を接続する窓

この家のリノベーションは、「もともとこの家にあったものをできるだけ残して、今の東京とは違う異質な空間をつくりたい」という想いで貫き通されています。

気づいたら自分たちでリノベすることになった

リノベ企画は、最初から「DIYをやろう!」というテンションで始まったわけではないようです。様々な方に相談を重ねたところ、古い建物ゆえ「建て壊した方がよいのでは」と言う方も多かったとのこと。そのなかでDIYに理解のある内装デザイナーさんと大工さんに出会い、愛着のある空間に対して、自分たちでもできる限りのことをしよう、と思うに至ったそうです。

基本デザインは内装デザイナーさんに作ってもらい、しかし常に現場にいた自分たちが「どうしたいか」を突き詰めていった結果、図面で決まっていた解体箇所も、壊しながらああでもないこうでもないと、工程ごとにじっくり手がけることに。大工さんやデザイナーさんに相談しながら、ご夫婦の情熱がたっぷり注がれることになりました。

慎重に壁を壊していき、何が残せるか、残したいか、やりながら現場で判断。(TOKYO LITTLE HOUSE Facebookページより)

ご夫婦で意見が合わないと、相手を説得するプランを徹夜で作ってプレゼンしあったり、一つの壁を抜く(壊す)のに1日がかりで話し合ったりして、「喧々諤々でやった」そうです。

土壁のなかから竹小舞(たけこまい)が表れたとき、あまりの美しさに途中で抜くのをやめて、『このままにしよう』と現場で決めた

「壁を抜くのを途中で止めているのは、この壁の来歴を示したかったからです。剥き出しになっている竹組みは、土壁の下地に使われる竹木舞(たけこまい)と呼ばれるもので、もともとはその両側に錬った土と藁スサが10センチほどの厚みまで塗り込められていました。今回のリノベーションではその上に漆喰を塗っています」

取り壊す必要のあった壁も、抜いた壁から土と藁スサを取っておいて別の場所で使ったり、とにかく「赤坂の家にもともとあった材料」を可能な限り使っています。

写真奥の本棚下の扉は雨戸の再利用。こたつの板は、床の間にあった棚板を2枚合わせて再利用。右奥の文机や鏡台もずっと家にあったもの
左の土壁は一度取り壊して、ふたたび再現。柱の貼り紙も当時のまま(※)
すっかりくつろぐRenosy設計士、間宮

新しくした畳について「古い佇まいの残る部屋に畳だけが新しすぎて、ちょっと違和感もあるくらいなんです」とコメントされましたが、いえいえ静かでとても居心地のいい空間です。

当時の面影が残る電気配線(ガイシ引き配線は装飾として残すのみで実際には利用していない)

新たな材料も吟味して調達

自分たちの思い描くイメージの空間を作り上げるため、もともとこの場所にあった木材や家具にプラスして、古材やタイル、左官材料などを購入。

キッチンのタイルはtoolboxで購入

キッチン奥にはシャワールーム。部屋は白とブルーで統一されており、バスタオルも濃淡のブルーでお揃いです。

味わい深い漆喰の壁(※)
天井の板は杉の荒材にステインを塗布。断熱対策もバッチリ施したので、あったかいし天井高も確保(※)

工事中の1階にもおじゃましました。

緑の壁は、2階の畳部屋の雨戸。捨てられていたレトロな椅子との出会いもあったそう(※)
ブルーの色が印象的なトイレの壁。ベッドルームと同じく漆喰に青の色粉を混ぜたもの(※)
お釜がトイレのシンクに!かわいい(※)
DIYに関心がある人なら知っているという「ポーターズペイント」。杉浦さんが手にしている大きな刷毛を使ってこの壁も塗装したそう(※)

2階の壁は全て左官(コテを使って壁を塗ること)で、漆喰と土で仕上げています。そして1階は、建物の外から内部までをシームレスに空間をつなげるため、同じモルタル材を使って左官。展示を行う壁は、今後の塗り直しも考えて塗装を選んでいるそうです。

「左官はとても楽しいです。ただコテに慣れるまでに時間がかかるので、ちょっとだけ塗る場合には向かないかも。それよりも気軽にできるのは塗装ですね」と杉浦さん。

家の外から中へと続く天井、そして外壁から続くモルタルの壁

半年間、通常の仕事をしながら進行したこのプロジェクト。改めてリノベーションってどうですか?と杉浦さんに聞いてみました。

「自分自身で手を動かしたので、図面通りでいいのかためらったり、途中でプランを変更したりと、悩むことの連続でした。でもその分だけ愛着も湧くし、訪れてくれた方にも納得のいく説明ができると思います」

大工さん、内装デザイナーさんなどプロの助けを借りて、想いを詰め込んでとことん進行したプロジェクトは、Renosy間宮が「自分たちでやられたのが凄すぎます」と言ったように、どこを切り取っても面白いお話が伺えました。

誰もが真似できることではないだろうけれど、そこに住む人が一部でも積極的に関わると、より愛着のわく家ができるリノベーション、やっぱり楽しそうです。

お気に入りの床材を選ぶ、壁を選ぶ、塗装も可能だったら自分たちで塗ってみる。プロのアドバイスを受けつつ、一緒に作っていく。「お任せでない家づくり」がリノベーションの醍醐味ではないでしょうか。

オープン後に再び訪問。真鍮の「TOKYO LITTLE HOUSE」看板もついていました!(※)
第二次大戦直後の東京の様子を伝える日本・アメリカの双方の資料や、当時の写真を展示する企画展「東京零年」も開催されていました(※2)

月日の流れをじっくり味わえ、コーヒーもおいしいこのスペース。ぜひ出かけてみてください。

取材協力:
TOKYO LITTLE HOUSE

撮影:今井淳史、清水まゆみ(※)
写真提供:TOKYO LITTLE HOUSE(メイン画像、※2)

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