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作成日: 2018.11.05

マンション売却にかかる税金とは?譲渡所得税と特例について解説

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)
マンション売却にかかる税金とは?譲渡所得税と特例について解説

マンションを売却すると、売却で得られた所得に対して税金がかかります。税金を納める時に、税額を決める計算方法などの知識が必要になるでしょう。そこで、マンション売却益に課される税金と、税の負担が軽減される特例について詳しく解説していきます。

ポイントは、大きく3つあります。

  1. 同じマンション売却でも居住用と投資用で分けて考える
  2. 居住用には各種特例がある
  3. 各種特例には併用できるものとできないものがある

マンションの売却益とは

マンション売却で得た利益は、どのような扱いになり、税金はかかるのでしょうか? 個人が不動産の売買、競売、収用、交換などの「譲渡」により所得を得た場合の税金について、まず基本的なことをみていきましょう。

不動産の売却損益は申告分離課税制度が適用される

不動産売却によって出た利益が「譲渡所得」です。これには所得税と住民税がかかります。

不動産の売却に係る税金は譲渡所得の中でも給与や配当など、他の所得と「分離」して計算されます。これを「申告分離課税」と言います。所得税はその人が得た所得を総合して計算するのが原則(「総合課税」)ですが、この譲渡所得は不動産そのもののキャピタルゲインに着目して課税するので他の所得と「分離」して課税することとしています。ちなみに譲渡所得は、実際の不動産売買金額から、不動産会社への媒介手数料など売却するためにかかった費用(譲渡費用)と売却する不動産の取得費とを合算した額を控除した金額のことです。

譲渡所得=総収入金額ー(資産の取得費+譲渡費用)

また、取得費に関しては、所有期間分の減価償却をすることが必要です。建物は、その建物の購入代金がそのまま取得費になるわけではなく、期間を経るごとに価値が減少すると考えます。この減った分の減価償却費を、購入当時の建物の購入代金からマイナスする必要があります(減価償却費の計算方法については、 「不動産投資と節税に関わる減価償却とは。計算方法と注意点」をご覧ください)。なお、居住用不動産と投資用不動産では同じ物件でも居住用不動産の方が減価償却期間が長いことにも要注意です(自己利用なので価値の目減り方が遅いことが理由)。

資産の取得費=もともと取得に用した費用ー減価償却費の合計額

居住用不動産の減価償却期間=投資用不動産の減価償却期間×1.5

税率について

不動産を売却するケースでは、所有期間が重要となります。不動産譲渡所得にかかる所得税および住民税の税率は、その不動産の所有期間によって異なります。5年を境に短期譲渡所得と長期譲渡所得に区分され、それぞれ異なる税率で課税されます。なお、5年判定では購入日から実際の売却日ではなく売却した日の属する年の1/1時点で5年超であることが必要なので要注意です。

短期譲渡所得について

譲渡する年の1月1日時点で所有期間が5年以下であれば短期譲渡所得とみなされます。

かかる税率は、所得税30%、住民税9%、合計税率は39%と高率です。

なお所有期間の考え方ですが、相続の場合はどのように考えたらいいでしょうか。マンション(土地・建物)を相続した場合で、その相続した土地および建物を売却する場合、所有期間の考え方は、相続人が相続して不動産の所有者になった日からではありません。被相続人(なくなった人)がその不動産を所有した日から保有期間を数えます。相続してから売却するまでの期間については制限はありません。

長期譲渡所得について

譲渡する年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば長期譲渡所得とされます。

かかる税率は、所得税15%、住民税5%、合計税率は20%です。

住居用財産を譲渡した場合なら減税措置がある

売却する不動産が住むことを目的とした物件であれば、各種の減税措置が用意されています。

減税措置を受けるためには、個人が住んでいる家であること、家屋とともに譲渡される敷地であること、などの条件があります。さらに、10年以上所有した建物と土地に対してはさらに細かい減税措置があります。減税措置については後ほど詳しくみていきます。

譲渡所得にかかる税金の支払い

税率および減税措置がわかったところで、どのような税の計算をするのか、そして確定申告についてみていきましょう。

譲渡所得に関する税金の計算方法

譲渡所得の税額は以下の式で計算できます。計算の結果がマイナスになる場合には課税されません。

例えば、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年未満の土地や建物を売ったときの税額の計算は、以下のようになります。

課税短期譲渡所得金額 = 譲渡価額 -(減価償却費をマイナスした取得費+譲渡のためにかかった費用)- 特別控除

所得税額 = 課税短期譲渡所得金額×30%

住民税額=課税短期譲渡所得金額×9%

一方、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売ったときの税額の計算は、以下のようになります。

課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(減価償却費をマイナスした取得費 + 譲渡のためにかかった費用)- 特別控除

所得税額=課税長期譲渡所得金額×15%

住民税額=課税長期譲渡所得金額×5%

また、2037年までは基準所得税額に対してこの他に復興特別所得税の0.315%(15%×2.1%)がかかります。

譲渡所得税は確定申告で

譲渡所得税は、「確定申告」が必要です。確定申告する場合には、申告書のほかにもさまざまなの書類を添付する必要があります。

  • 譲渡所得の内訳書
  • 取得時の資料
  • 譲渡時の書類
  • 譲渡した土地・建物の全部事項証明書
  • 戸籍の附票

譲渡所得の内訳書は、売却後に税務署から送られてくるので、なくさないようにしましょう。

確定申告は、税務署に直接申告をしに行くか、多忙な人は国税庁のホームページからオンラインで確定申告ができる「e-tax」というサービスもあるので覚えておきましょう。なおインターネットで確定申告をするためには、事前に必要な機材を揃えるなどの準備が必要です。

譲渡所得に関する特例

居住用不動産に係る不動産譲渡所得の税金の計算に関していくつかの特例があります。どのようなものかを見ていきましょう。

3,000万円の特別控除

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という制度があります。売却翌年の2月15日~3月15日の間に確定申告をして「譲渡所得の内訳書」を添付しましょう。

「1人につき最大で3,000万円」なので、例えば夫婦で共有する物件の売却で7,000万円の譲渡所得があったとします。すると各人3,000万円の控除で、合計6,000万円もの控除が可能です。

軽減税率の特例

居住用不動産の所有期間が10年以上の場合に限り「3,000万円の特別控除の特例」と併用して、軽減税率の特例が適用されます。

6,000万以下の部分に対しての税率が10%(住民税は4%)になります(6,000万を超える部分に対しては15%、住民税は5%のままです)。

下記は、課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下のケースです。

譲渡所得税・住民税=課税長期譲渡所得×14%(税率)

そして、課税長期譲渡所得金額が6,000万円以上のケースでは以下の計算になります。

譲渡所得税・住民税=6,000万円×14%+(課税長期譲渡所得-6,000万円)×20%(税率)

なおこれらの特例は、配偶者および子どもや父母・祖父母など孫直系血族等に譲渡する場合には使えません。

特定居住用財産の買い換えの特例

10年以上住んでいるか所有期間が10年を超えて保有していた居住用不動産を売却して、その譲渡の前年から翌年までの「3年間」の間に買い替えをする場合、買い換える家の床面積が50m 2 以上で敷地は500m 2 以下であることなど、一定の要件を満たす場合、「買い換え特例制度」が適用されます。ただし、買い換える物件の方が売却した価格より高い場合のみの特例です。

譲渡益については本来譲渡所得税が課されますが、買い換え特例を利用すると売却時点での売却はなかったことになり、売却益の額に関わらず税金がかかりません。

ただし買い換える物件の方が売却した価格より高い場合のみの特例です。

例えば3,500万円でマンションを売却し、5,000万円で別のマンションを買った場合は、課税されません。しかし5,000万円でマンションを売却し、3,500万円で別のマンションを買った場合は、1,500万円について課税されます。

この特例を使う場合は、先に説明した3,000万円の特別控除および10%の税率となる特例は使えなくなります。

そしてこの特例も、配偶者および子どもや父母・祖父母など孫直系血族等に譲渡する場合には使えません。

譲渡損失の損益通算及び繰越控除

通常、不動産を譲渡した場合に発生した譲渡損失は給与等の総合課税の所得等と損益通算することはできず、残存した損失の翌年以降への繰越はできません。ただし居住用不動産の譲渡損失に関しては総合課税の所得等との損益通算が可能であり、かつ残存した損失の翌年以降3年間の繰越も可能です。

住宅ローン控除を適用している場合の注意点

不動産を買い替えるときに売却不動産に係る特例と購入不動産に係る特例は併用できない点も要注意です。

売却不動産に係る居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と10年超保有してる場合の軽減税率は併用できますが、購入不動産に係る住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)との併用はできませんので、どちらの特例を使った方が有利か事前にシミュレーションが必要になります。

まとめ

マンションの売却益には、税金がかかります。売却のタイミングによっては税率も変わります。マンションの売却益は大きな金額になることも多いため、かかる税金も多額になる可能性があります。適用できる特例は利用しましょう。そして忘れずに確定申告をしましょう。

取材協力:佐野比呂之税理士事務所 代表税理士 佐野比呂之

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この記事を書いた人

RENOSYマガジン編集部

「不動産やお金の疑問をわかりやすく解決するメディア」を掲げ、本当にためになる情報の提供を目指すRENOSYマガジン編集部。税理士やファイナンシャルプランナーの人たちと共に、中立・客観的な視点で「不動産とお金」を解説、読んでいる人が自分の意思で選択できるように日々活動している。

取材協力:
佐野比呂之 (佐野比呂之税理士事務所)

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